ミシシッピのディープ・ブルーズ 〜 R.L. バーンサイド
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昨日ノース・ミシシッピ・オールスターズの新作のことを書きました。そのなかに R.L. バーンサイドの「ピーチズ」があったわけですけど、そうしたら俄然聴きなおしたくなって聴いたんですね、RL の『トゥー・バッド・ジム』(1994)を。そうしたら、そのブルーズ表現にあらためて感銘を受けちゃいました。いやあ、なんてすごいディープさなんでしょうか。
今回特に感心したのは RL ひとりでの弾き語りナンバーで、『トゥー・バッド・ジム』のなかには三曲あります。3「ショート・ヘアード・ウーマン」、7「ミス・グローリー・B.」、9「デス・ベル・ブルーズ」。これら以外もほぼドラマーひとりが伴奏につくだけというシンプルなアルバムですけど、本質的にブルーズの歌いかた、ギター奏法が弾き語りナンバーでは異なっていますね。その意味では、ドラマー伴奏が付くとはいえ2曲目の「ウェン・マイ・ファースト・ワイフ・レフト・ミー」も弾き語りみたいなもんです。
こういった RL だけでの弾き語りブルーズではギターの味も特徴的で、エグ味があって、まるでとぐろを巻くようにどす黒いですよね。でも本人はあんがい軽〜く弾いています。こういったブルーズ演奏は生活の一部なんで、ミシシッピの深南部ではですね、だからなんてことないふだんの姿ですけど、それがぼくらにはこれ以上ない極上の味わいに聴こえるわけです。
ヴォーカルのほうも、うめくような漂うような、叫ばず、こっちも普段着のまま軽くすっと歌っているだけなんですけど、この上なくディープですよね。日常生活のなかにこういったブルーズを歌う姿がどこにでもある、そんなヒル・カントリーの黒人たちの伝統のなかに RL もいて、ただそれを淡々と表現しているだけなのが、こっちにはたまらないディープさになるんです。
アメリカ黒人ブルーズ・メンのなかにギター弾き語りを披露するひとは、それこそ無数にいますけど、こんな深南部のディープでコクのあるブルーズを聴かせるとなると限られてきますよね。RL は間違いないホンモノのひとりでした。肩の力の完全に抜けた日常のフィールでこんなにも深い表現ができるんですから、ブルーズがからだの深奥にしみこんでいるということですよね。
RL は、1994年の『トゥー・バッド・ジム』のあとはバンドで演奏することばかりになって、しかもロッカーなどとの共演も多くあり、今日話題にしているようなひとりでのギター弾き語りブルーズをやることはなくなりました。いまふりかえると、ちょっともったいなかったなという気もします。複数回の来日といった人気獲得とひきかえに手放したものがあったかもしれないですね。
(written 2019.10.12)
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