大好きな『ソニーズ・クリブ』
https://open.spotify.com/album/469Y1IVCrttWSp2qQYzioA?si=lsIl30ouSwquRW0QSRyd7Q
(オリジナル・アルバムは5曲目まで)
初期ソニー・クラークでいちばん好きなアルバムが『ソニーズ・クリブ』(1957年録音58年発売)。この作品のばあい、アルバム・タイトル曲を収録した B 面は個人的にイマイチで、スタンダードばかり三曲で構成された A 面こそがずっと好きで聴いてきました。いちピアニストとしてより作編曲家としての才能が抜きに出ていたと思っているソニー・クラークですが、このアルバムにかぎってはスタンダード曲サイドのほうがいいですね。
まずオープニング1曲目の「ウィズ・ア・ソング・イン・マイ・ハート」。この急速調にアレンジしたのが大成功ですよね。A 面三曲はいずれもスタンダード・ナンバーなため、ソニー・クラークがどんなアレンジを施すかによって勝負が決まると思うんですけど、三曲ともいい仕事です。なかでもこの「ウィズ・ア・ソング・イン・マイ・ハート」のテンポ設定はいいですね。
トップ・バッターで出て爽快にかっ飛ばすドナルド・バードのトランペット演奏も見事。さらにもっと見事だなと思うのは、そのドナルドに対位法的にからむジョン・コルトレインとカーティス・フラーのオブリガートです。彼ら二名、テナー・サックスとトロンボーンのフレーズは、あらかじめソニー・クラークが書いて用意していたのか、それとも二名のアド・リブだったのか、そのへんは判然としませんが、きれいに決まりすぎているので、アレンジされていたとみてもいいですね。
もちろんそういったからみはテーマ演奏部のあいだだけで、各人のソロに入ればなくなります。ソロまわしとその内容については今日は省略しましょう。まあビ・バップとかハード・バップとかフリー・ジャズとかって、結局ソロを聴くしかない音楽だなと思うんで、音楽作品としての全体的把握みたいなことは薄くなっちゃいますよね。あ、でもぼく、カーティス・フラーのこのちょっとくぐもったような音色は大好きなんで、彼のトロンボーンが出てきただけでいい気分です。
とにかく、ふだんはバラード調でやることも多いこの「ウィズ・ア・ソング・イン・マイ・ハート」という曲を、こんなアップ・テンポにアレンジしてソロを取らせただけでも大正解。アルバム幕開けにまことにふさわしい雰囲気で、アレンジャー、ソニー・クラークの面目躍如だと言えましょう。最終テーマ終了時の三管でのまわしもいいアイデアです。爽快に幕締めとなっていい気分。
2曲目の「スピーク・ロウ」は A メロ部分でラテン・リズムを使ってあるのが特色ですね。以前、ソニー・クラークのふだんのなかにもいっぱいラテンがあるぞという記事を書きましたが、実際多いんですよね。「スピーク・ロウ」はそんな感じにアレンジされることが多い曲であるとはいえ、メインストリーム・ジャズなどアメリカ合衆国音楽のなかにも中南米要素は抜きがたくあるということです。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2019/04/post-4a2c.html
3曲目の「カム・レイン・オア・カム・シャイン」。カーティス・フラーがあの音色でテーマを演奏するのがなんともいえず大好きなムード。ぼくはホ〜ントこのトロンボーニストのことが、特に音色が、たまらなく好きなんですね。ここではテンポがとまりそうになるほどのゆっくりした調子でやっていますが、こういったテンポ設定はたぶんボスのソニー・クラークの指示ですね。ソニーのピアノ・ソロも親しみやすくてグッドです。この曲はワン・ホーン・カルテットでやったほうがよかったかも。
(written 2019.9.26)
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