コロゴの魅惑 〜 スティヴォー・アタンビレ
https://open.spotify.com/album/4HGbWu2NPvcCU2SOH4R8a5?si=jckdZ46GRlWMIe0rVBkPIQ
bunboni さんに教えていただきました。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2019-08-23
スティヴォー・アタンビレ(ガーナ)のアルバム『ティーチ・ミー』(2017)でいちばんグッと来るのは、17曲目の「マイナス・ミー」ですね。いやあ、こ〜れが、も〜う!超カッコイイのなんのって!しゃべりから出て、次いでホーン陣の咆哮があり、次の瞬間スティヴォーが弾きはじめるコロゴのカッコよさ、スピード感がたまりません。リズム・セクションも入り猛烈にグルーヴしていきますよねえ。いやあ、カッコイイなあ〜!
しかしこんな、なんというかややポップなというかファンクな感じもする「マイナス・ミー」は、このアルバムのなかでは例外ですね。だからこそ異様に輝いているとも言えるわけですけど、アルバム全体ではもっと渋く、スティヴォーのコロゴ弾き語りを中心に据え、派手なバンド編成サウンドはあまりありません。しかし地味な音楽かというとそうでもないっていう、不思議な感触のアルバムですね。
だいたいコロゴ(楽器名でもあり音楽名でもある)って、シンプルな反復フレーズを延々とくりかえすばかりで、それ自体はモロッコのグナーワに共通するようなものなのに、グナーワみたいな神秘的呪術性みたいなものが、このスティヴォーのアルバムだとほぼ感じられないのは、ポップ・ミュージック仕立てになっているからなんでしょうか?
それにしては、17曲目を除くだいたいどの曲もコロゴで同じフレーズをずっと反復しながら歌っていたり、ゲストがラップを聴かせたり、楽器が加わっていたりするだけなんですけどねえ。曲によってそのパターンは変化するものの、一曲のなかではコロゴのパターンはずっと同じです。じゃあ飽きちゃってつまんないかというと、ぜんぜんそんなことない、楽しめるっていう、だからやっぱり不思議な音楽です。
これはあれですかねえ、同一パターン反復の快感というものがあると、ぼくは以前からくりかえしていますが、スティヴォーのコロゴのばあいもそれが言えるということなんでしょうか。延々と反復されるコロゴの同一パターンと、その上に乗るスティヴォーの野生的なヴォーカルを聴いているだけで、なんだか気持ちいいっていう、そんなアルバムです。コロゴのこのころころっていう独特の音色も快感に拍車をかけているかもしれません。
しかしプロデューサーのワンラヴ・ザ・クボローはそこかしこに工夫はこらしていて、エレクトロニクスを控えめながら随所で効果的に使ったり、重低音ベースを活かしたり、各種打楽器をうまくからめたりして、スティヴォーの持ち味にうまく多彩性を加味しているとは言えるのかも。ゲスト・ヴォーカル(ラッパー?)も活躍しています。
それでもスティヴォーのこの『ティーチ・ミー』のキモはあくまで本人のコロゴ弾き語り。その根幹をしっかり維持し前面に出しているプロデュースなので、コロゴ・ミュージックの(スティヴォーの)野性味を失っていません。種々の工夫はあくまで控えめ、聴感上、アルバム全体がコロゴ弾き語りだけでできているじゃないか、それなのに飽きないのはなぜだ?!と思わせるマジックがありますね。いや、ホント、不思議なアルバムです。
(written 2019.9.22)
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