ナマの身体性を取り戻したジャズ・ヴォーカル 〜 アナベラ・アヤ
https://open.spotify.com/album/6H21dAstKzesF670fTus5E?si=U5OAnY1wSoWcX_FBNaXG_Q
Astral さんのブログで読んだのが知ったきっかけです。
https://astral-clave.blog.so-net.ne.jp/2019-09-04
アンゴラのアナベラ・アヤ。『Kuameleli』(2018)がデビュー作のようですが、ジャケットを一瞥しただけでなにかこう、予感めいたものが働きますよね。とってもいいジャケットだけに。そう、アルバム『Kuameleli』は中身も傑作です。クレオール・ジャズみたいな作品と思うんですけど、そこにとどまらないスケールの大きな音楽かもしれません。
アナベラのこのアルバムを聴いての最大の印象は、なんてナマナマしいセクシーな声で貫かれているのかと、このナマの身体性こそがこの音楽の最大の魅力だなということです。声にいのちが宿っている、それはいつでもどんなものでもヴォーカル・ミュージックのチャームなんですが、ジャズのフィールドでは濾過されて表出されることが多かったんじゃないかと思うんですね。
だから声の持つナマの身体性、色気をそのままストレートに活かしたアナベラのばあいは、ジャズ・ヴォーカル作品としてはやや異色というか、新しいなと思うわけです。そもそもヴォーカルに限らず、身体性がナマナマしく活かされているというのは、この作品のばあいアナベラの声だけではありません、バンドのリズムにも生命が宿っていますよね。
こんな質感のジャズ作品には、はじめて出会ったような気がします。生唾ゴクリと飲み込むようなリズムとヴォーカルのセクシーさで、思わずのけぞってしまいそうになるほどの迫力に満ちているじゃないですか。ウェザー・リポートみたいなアンサンブルを聴かせるオープニングのアルバム・タイトル曲からはじけていますよね。
リズムやサウンドが多彩なのも、このアルバムの特色です。一曲ごとにリズムは変わり、またどの曲もポリリズミックで色彩感・躍動感豊かです。一曲のなかでもリズム・パターンがパッと変化したりします。打楽器群も活用されていますよね。サウンド面ではアコーディオンの多用も目につきます。ちょっとした素朴な泥くささをこの超高度に洗練された音楽に付与する役目を担っているかもしれません。
3曲目はアクースティック・ギターと生打楽器の響きを活かした、少人数によるオーガニック・テイストなサウンド・メイク。しなやかに綴るアナベラが見事です。そうかと思うと続く4曲目はビッグ・バンド・ホーンズが使われていて、アナベラは軽くしかし強靭に乗りこなしていますよね。これはアフロ・ジャズ・ホーンズといえばいいのかな、でもちょっぴりサルサっぽいですね。また、9曲目はエレベ一本だけの伴奏です。
どんなサウンド、どんなリズムを使ってあっても、アナベラの強くしなやかでセクシー&艶やかな声が全編を貫いているので、それこそが、ナマの身体性を取り戻したジャズ・ヴォーカルこそが、このアルバムの中心にしっかりあるのがわかるから、アルバムの強固な統一性が保たれているんですね。
(written 2019.9.24)
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