気持ちいいスキャットマン・クローザーズ
この CD のリリースは bunboni さんに教えていただきました。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2019-08-21
ジャスミン盤アンソロジーの『ロックンロール・ウィズ・スキャット・マン』(2019)、いやあ、爽快で気持ちよくカッコイイですよねえ、スキャットマン・クローザーズ。ジャズ/ブルーズ/ジャイヴでかっ飛ばすこのシンギングがたまりません。スキャットマンのヴォーカルには、どこか夢中になりきっていない醒めたクールネスもあって、そんなところもジャイヴな味といえましょう。ちょっとキャブ・キャロウェイにも通じるところででしょうか。
でもハチャメチャなナンセンス・シラブルを速射砲のように繰り出すスキャットマンの歌で、ぼくのほうはすっかり夢中。ガーシュウィンの「アイ・ガット・リズム」とかファッツ・ウォーラーの「手紙でも書こうか」とか、このヴォーカルのスウィンギーさといったらたまりませんね。軽快で爽快で胸をすく思いです。
ぼく個人の感想と断っておきますが、ロックンロール・ヴォーカルに通じるものだって感じました。それは「ビ・バップ・ア・ルーラ」「ハウンド・ドッグ」といったロック・スタンダードを歌っているからというわけでは必ずしもなく、もっとこう、このスキャットマンの持つスピード感とテンションの高さ、リズムのハネといったものがロック・ミュージックに通じる部分もあるなと思うわけなんです。
「イグザクトリー・ライク・ユー」「アイ・ガット・リズム」などのこのパワフルさやハチャメチャ、キテレツな破裂ぶり、「マイ・ブルー・ヘヴン」「手紙でも書こうか」などの痛快にハネるスウィング/ドライヴ感、「(アイ・ウォント・トゥ)ロックンロール」「キープ・ザ・コーフィー・ハット」などのこのタメの深い(R&B ふうな)ノリなど、それらはたんにジャズ・ヴォーカル、ジャイヴ・シンギングという枠におさまりきるものではありません。
思えば、ジャズとロックは、ジャンプ・ミュージックをあいだにおき、ひとつづきなんです。スキャットマンのすこし前、1940年代に一世を風靡したルイ・ジョーダンは、基本ジャズのひとですけど、ジャンピング・ジャイヴともいうべき独特の芸風で、約10年後のチャック・ベリーの先駆となりました。ジャズ/ブルーズ/ジャイヴのルイ・ジョーダンは、そのままロックンローラーにつながっているんですね。
今回ちゃんとしたリイシューがなったスキャットマン・クローザーズは、ジャイヴ/ジャンプ・シンガーでありながら、というかそうであるからこそ、ジャズとロックの中間あたりで、あるいは双方をまたにかけて、歌芸を爆発させたヴォーカリストだったんじゃないか、というのがぼくの見方です。
参考プレイリスト。
https://open.spotify.com/playlist/3ALeKbDAMHeESPhYeQYewH?si=YRi9SxzFQRuffgPv8cfr4w
(written 2019.9.13)
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