ソニー・クラーク『マイ・コンセプション』の思い出
https://open.spotify.com/album/4kyXSmqZ7WVTjodTRR4wgZ?si=c0F2Rq1nTHygj0poNDkE7g
(オリジナル・アルバムは6曲目まで)
1979年にブルー・ノートの日本法人から日本限定で突如発売されたソニー・クラークのアルバム『マイ・コンセプション』。これはたいへんに思い出深いアルバムなんですよね。ピアノ・トリオ作品『ブルース・イン・ザ・ナイト』(これも79年発売)とならび、はじめて買ったソニー・クラークでしたから。『マイ・コンセプション』のほうは二管コンボ編成です。79年は、ぼくがジャズを聴きはじめた年。
同じ日本でだけ、同じソニー・クラークの同じく未発表集で、やはり同様に1979年に発売されたということで、『マイ・コンセプション』と『ブルース・イン・ザ・ナイト』のジャケット・デザインのコンセプトは同じです。グランド・ピアノをモチーフにしたもので、たぶん同じデザイナーの手になるものでしょうが、確認する手だてをいまぼくは持っていません。
CD だと、同じジャケットで同じ曲目で、となると、二枚ともやはり日本盤でしかリイシューされていないです。でも主にジャケットに目をつぶればアメリカ盤でも CD(やネット配信)があるんですね。待ちきれなかったぼくはそれを買っちゃったんで、その別のデザインのを眺めているわけです。買いなおそうかなあ〜。いや、たぶん買わないな。
『マイ・コンセプション』の収録六曲はすべてソニー・クラークのオリジナル・コンポジションで、しかもコンボ編成でとなると初お目見えとなるものばかりでした(1959年の録音)。それらが、も〜うチャーミングで、1979年にジャズ・ファンになったぼくは、それらを聴いて、ソニー・クラークってなんと魅力的な作曲家なのかと、強く印象に刻んだんですね。いまに続く「ソニー・クラークは作編曲家」というぼくの見解は、最初からしっかりあったわけです。
『マイ・コンセプション』収録の六曲はどれもとても魅力的なメロディを持っていますよね。それらのうち五曲までは1960年のタイム盤アルバム『ソニー・クラーク・トリオ』に収録されているものだ、ということをずいぶんあとになって知りました(曲名が違いますが「ロイヤル・フラッシュ」と「ニカ」は同じ曲)。
しかしぼくがソニー・クラークを知ったころにはタイム盤のトリオ・アルバム LP は松山では入手できず。松山でといわず、当時一般的にこのレコードは買いにくかったんじゃないしょうか。なにを隠そうぼくがタイム盤の『ソニー・クラーク・トリオ』を聴いたのは CD リイシューされてから。それまでは手段がありませんでした(ジャズ喫茶でリクエストすればよかったかもですけど)。
でもぼくはそのタイム盤に収録されている魅力的なソニー・クラーク・オリジナルの大半を『マイ・コンセプション』で聴いていたんですから、最初にタイム盤のトリオ CD を聴いても、あぁあらためていい曲だなと思っただけで、曲そのものがチャーミングでビックリしたみたいなことはなかったわけです。もちろんどれもすぐれたいい曲で、ピアノ・トリオでやるソニー・クラークならブルー・ノート盤より断然タイム盤ですね。
そんな曲のよさは、実は二管コンボ編成でやった『マイ・コンセプション』でのほうがわかりやすいなと思うのは、そっちに先になじんでいたぼくの欲目でしょうか。いや、そんなことはないでしょう、ピアノでトツトツと弾くよりも二管でば〜っと吹いてもらったほうが、ソニー・クラークのオリジナル楽曲の持つなんともいえない魅力が伝わりやすいように思います。
どの曲もそうなんですが、ぼくが大学生のころに最初に聴いて以来いまでも変わらず感銘を受けるのが、オリジナル・アルバムではクローザーだった「マイ・コンセプション」です。ゆっくりしたバラード調なんですけど、ハンク・モブリーにテーマ演奏を任せたのが大正解じゃないでしょうか。この渋い、決して派手な自己主張じゃないけれど確信に満ちたコンポーザーの表情を、モブリーが実に滋味深く表現してくれていますよね。ピアノ・パートを経て終盤はドナルド・バードのトランペットでカデンツァまでやりますが、そこも聴きごたえじゅうぶんです。
(written 2019.9.27)
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