コペンハーゲン発のアフロ・ジャズ、クティマンゴーズがカッコいい
https://open.spotify.com/album/2Af3s3gQ70cTALCmRFwSkr?si=OT9TISrTQT2FSSoKbPTzdw
bunboni さんにご教示いただきました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
クティマンゴーズはデンマークはコペンハーゲンのアフロ・ジャズ・バンド。ホーン三管(トロンボーン、2サックス)をふくむ六人編成です。その最新作『アフロトロピズム』(2019)がもう超カッコイイんですよね。大傑作と言えるのではないでしょうか。アフロビートをとりいれたアフロ・ジャズ・バンドはあまたあれど、ここまでの作品はなかなかなかったでしょう。
ジャズ・バンドでありながら個人の楽器ソロはほとんどなく、もっぱらアンサンブルで突き進むクティマンゴーズの特色は、ぼくに感じられるところ、さわやかさですね。特にホーン・アンサンブルの響きにそれを聴きとっているんですけど、これって北欧的ってことになるんでしょうか。トロンボーン+2サックスという編成で、ちょっとヒンヤリした涼感のあるサウンドを奏でているなと思います。
そんなさわやかさは、実はクティマンゴーズの演奏するアフリカン・ビートにも感じられ、どこか熱くなりすぎない、入り込みすぎず客観視するバンドのクールな自我を感じます。しかしかなり込み入った激しいビートを演奏していることはたしかですよ。でも、アフリカン・ビートをそのまま持ってきたというんじゃなく、全員が欧州白人であるという一種のフィルターみたいなものをいったん通過しているような気がします。
そんなビートと(ホーン・)サウンドのさわやかさがぼくにとってはクティマンゴーズ最大の魅力ですね。それと同時にかなりのスリルを感じるのもたしかなことで、たとえば3曲目「コール・オヴ・ザ・ブルブル・バード」なんかたまらないですよね。この曲の中盤でホーン・アンサンブルがいったん止まってリズム・セクションというか打楽器だけになるパートがありますが、そこへ入る瞬間のこのゾックゾクするフィーリングがやみつきになります。ホーンズがふたたび出たら、やっぱり同様にスリリング。
1曲目の「ストレッチ・トゥワーズ・ザ・サン」なんかでの細かいビートの重なり合いと積み上げで産み出す独自のグルーヴも心地いいし、細かいビートの重なり合いというのはリズム・セクションだけでなく、ホーン・アンサンブルもそうなっているなと思うんですね。ゆったり大きくうねる箇所はすくなくて、細切れのフレーズの連続・反復をリズムもホーン・セクションも演奏しています。
かと思うと4曲目「キープ・ユー・セイフ」なんかでは大きくノル感じでホーンズは演奏していますから、多彩ですよね。ところでこの曲はリズムよりもホーン・アンサンブルを聴かせるワン・ナンバーということなんでしょうか。アルバム中特にこの曲でホーン演奏の北欧性みたいなことを強く感じます。こういった曲は、ありきたりのアフロ・ジャズ・バンドでは聴かれませんね。
そういった独自のホーン・アンサンブルは、実はアルバム全体で活用されていて、このクティマンゴーズというバンドのオリジナリティになっているんですね。5曲目以後もアフリカンなビートを存分に活用しながら、その上にうまくホーンズを重ねています。しかもそれらが一つになって溶け合っていて、決してバラバラではないんですね。
6曲目「マニー・イズ・ザ・カース」もすごくカッコいいし、アルバム中いちばん長い八分以上あるラスト7曲目「サンド・トゥ・ソイル」なんか、細分化されたビートをすこしづつ重ねていきながらそこにトロンボーンが乗ってくる瞬間の快感とか、ドラマーがバンと来てアンサンブルがなだれ込む刹那も超気持ちいいし、またリズムだけになったりしながらサックス・ソロが来て、ふたたびアンサンブルになったりなど、展開が多彩で聴きものですね。しかもやっぱりどこかさわやかでクール。
(written 2019.10.28)
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