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2019/11/09

岩佐美咲『美咲めぐり 〜 第2章 〜』を聴く

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こちら愛媛県大洲市という超ど田舎にも、発売日翌日の11月7日に岩佐美咲(わさみん)のニュー・アルバム『美咲めぐり 〜第2章〜』が届きました。もうなんども聴いていますので、ちょっとした感想を記しておきたいと思います。通常盤と初回限定盤の二種ありますが、上に写真を出したのは初回限定盤。そっちには通常盤の全曲を収録してなおかつ独自にオリジナル曲の近年ライヴ・ヴァージョン三曲があります。

 

『美咲めぐり 〜第2章〜』の目玉は、一般的には「魂のルフラン」と「千本桜」ということになるのかもしれませんが、個人的には「雨」と「秋桜」ですね。それからライヴ・ヴァージョンの「初酒」「もしも私が空に住んでいたら」、特に「もし空」です。これらは本当に絶賛すべきできばえに違いありません。すばらしいのひとこと。

 

「雨」(森高千里)と「秋桜」(山口百恵)はちょっと似たような傾向の曲です。歌詞内容はかなり違いますが、曲調が似ていますよね。しっとりと落ち着いた大人のおだやかな情緒を表現したもので、それを歌い込むわさみんのヴォーカルは以前よりもぐんとセクシーさを増しています。ここまでとは正直言って予想していましたが、それでもやはり驚きの完成度ですよね。

 

セクシーさ、言い換えれば色艶を声のトーンそのものに持てるようになったということで、わさみん個人の人間的成長もさることながら、ソロ歌手として10年近いキャリアを持ちいろんなタイプの楽曲をどんどん(ほぼ毎日)歌い込み続けてきているという経験が、ヴォーカルにこれだけの大人の色艶をもたらしているのではないかと推測します。

 

声が丸くなっておだやかさを増し、しかも落ち着いてきていますよね。「雨」はつらい失恋を歌った曲ですが、このまま濡れておきたい、雨が気持ちを流してくれるからという、そんな歌詞を表現するわさみんの歌声に聴きとれるのは、決して切なさや哀しさではありません。この恋を流して、さぁ前を向いて歩んでいきたいという肯定感こそがそこにあると思うんですね。

 

「秋桜」は、はっきり言って山口百恵の名唱がありますから、わさみんでもそれを凌駕できているかどうかわからないのですけど、それでもわさみんなりのしっとり情緒をうまく出せているなと思います。楽曲そのもののよさ、アレンジ、主役歌手の表現力など諸要素をトータルで考えれば、この「秋桜」が、今回の新作アルバムで個人的にはベスト・トラックです。エンディング部の演奏というか音量変化がちょっと妙ですけど(最初 CD の再生不良かと思った) 、それでも、いやあ、すんばらしい。

 

いやいや、ちょっと待ってくださいよ。初回限定盤の末尾にボーナス・トラックとして収録されている近年ライヴ・ヴァージョンのオリジナル曲三つのうち、「初酒」「もし空」の二曲は、もっといい出来の歌唱を聴かせているかもしれませんねえ。なんどもなんどもそれこそ無数に歌い込んできている持ち歌だけにそのことによって、またわさみんのここ二年ほどの大幅な急成長によって、曲そのものが違って聴こえるほど大充実しているのではないでしょうか。

 

「初酒」にしろ「もし空」にしろ、わさみんは(シングル CD とは違う)ライヴならではの独自フレイジングを聴かせてくれているんですが、それ以上に声そのものの色がぐっと丸くて太くなっています。張りと伸びと幅が出てきているというか、余裕と艶を増しています。特にアルバム・ラストの「もし空」ですね。これはわさみんオリジナル曲のいままで発売されたヴァージョンのなかでも絶頂を記録したものと言ってさしつかえないと思います。

 

「もし空」はわさみんファンのみなさんが声をそろえるように名曲だとぼくも思うんですが、この新作アルバム・ヴァージョンはすごみに満ちていますよね。迫力があるというか壮絶さすら感じます。こんな「もし空」はいままで聴いたことがありません。2018年2月の恵比寿でのコンサートで収録したものだからぼくも現場で聴いたはずですが、ここまでの見事なものだったとは失念していました。特に終盤部での歌唱の節まわしと発声なんか、なめらかさにおいて絶品ですよねえ。

 

全体的に見てわさみんのニュー・アルバム『美咲めぐり 〜第2章〜』は、楽曲のすばらしさ、堅実なアレンジ、そして主役歌手のヴォーカル・トーンと表現力の大幅な充実によって、三年前の「第1章」を大きく超える傑作に仕上がったものと言えましょう。いまの日本で、演歌、歌謡曲、J-POP、アニソン、ヴォーカロイド曲など、ここまで多彩な楽曲の数々を自分の土俵にひきつけて、均一かつ着実にこなせる歌唱能力を持った歌手がほかにいるのなら、ぜひ教えていただきたいものです。

 

(written 2019.10.8)

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