アナベラ・アヤでウェザー・リポートを思い出した
https://open.spotify.com/album/297vP5Fa2Zox6ZNb5zWOuG?si=VOQxGUntQIyeLtJsB1PLpQ
(オリジナル・アルバムは8曲目まで)
以前アンゴラのアナベラ・アヤのことを書きましたが、そのときウェザー・リポートに似ているなとつけくわえておきました。これは間違いない実感なんです。特にアナベラのアルバム1曲目で歌が出るまでのイントロ部分なんか、まるでウェザーそのもの。そのほかあのアルバムは、ある意味、ウェザー(ジョー・ザヴィヌル・アレンジ)の音楽を21世紀的なクレオール・ジャズに還元したようなものだったようにも感じます。おもしろいですね、そもそもウェザーが中南米やアフリカなどの(クレオール)音楽に大きく影響されてできあがったアメリカン・ミュージックでしたのに。
そんなわけで、ちょっと気分だったのでウェザー・リポートを一枚聴きかえしてみたわけなんですね。選んだのが1980年の『ナイト・パッセージ』。ぼくの直感ではこのアルバムがいちばんアナベラ・アヤ的な感じがしたからです。特にオープナーのアルバム・タイトル曲でそう感じます。曲「ナイト・パッセージ」は個人のソロはあまりなく、ほぼ全編アンサンブルで進むというものですね。
そのアンサンブル、特にジョーの弾くポリフォニック・シンセサイザーとウェイン・ショーターの吹くテナー・サックスとの合奏が、実におもしろいというか楽しいというか、気持ちいいです、ぼくには。2曲目以後は個人のソロもたくさん出てくるんですけど、アンサンブル部分では、やはりこのウェザー・リポート独自の乾いた、情緒性のない、それでいてコンクリートなメロディ・ラインを合奏で実現しています。
そんなところ、つまりアンサンブルとソロとの比率、バランス、全体はバンドの合奏で進むけれどもソロをそのなかの一歯車としてうまくはめ合わせるアレンジ技術、マナーとか、モダン・ジャズはソロ中心の音楽だったのをうまくアンサンブルとの比重をとったこと、言い換えればソロを重視しすぎない方向へ進んだこととか、書かれたメロディでもソロでもリリカルさ、別な言いかたで歌心を排したことやなどなど、21世紀的なジャズのありようをウェザー・リポートは予言していたかもしれないです。
アンゴラのアナベラ・アヤはきわめて現代的なというか、2010年代末に出現した新世代のジャズ・シンガー、ミュージシャンに違いありませんが、そのアルバムを聴いてぼくが真っ先に連想したのが1980年のウェザー・リポートのアルバム『ナイト・パッセージ』であったというのは、なんとも示唆的じゃないでしょうか。ウェザーなんて、いまどきだれからも相手にされなくなっているような気がしますが、いま一度聴きかえし、その21世紀的現代性を再評価してもいいんじゃないでしょうか。
(written 2019.10.31)
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