ジョー・ヘンダスン『ページ・ワン』
https://open.spotify.com/album/7mQGTuvmdp56DNz0AmMwWi?si=nmb_KNZhQv-3mYoHcYM_QQ
ぼくのなかで勝手に名脇役のイメージができあがっているジョー・ヘンダスンの初リーダー・ソロ・アルバムが『ページ・ワン』(1963)。このなかにはラテン・ナンバーが二曲ありますね。どっちもジャズ・ボッサみたいなもので、1曲目「ブルー・ボッサ」と4曲目「リコーダ・ミー」。ジャズ・ボッサみたいなのはモダン・ジャズのなかにとても多いので、ことさらラテンふうと言い立てることはないのかもしれませんが、この二曲のおかげで『ページ・ワン』というアルバムの印象がぼくのなかでよくなっているのはたしかです。
「ブルー・ボッサ」は、でもトランペットで参加のケニー・ドーハムが書いた曲ですよね。ケニーってふつうのハード・バッパーという感じで、特にラテンとかブラジルとかと関係なさそうなのに(でもアルバム『アフロ・キューバン』がありますが)、こういった曲を用意できるんですね。「リコーダ・ミー」はジョーの曲です。どっちもドラマーのピート・ラ・ロッカがリム・ショットを混ぜながら印象的なボサ・ノーヴァ・ドラミングを聴かせているのもグッド。
各人のソロは無難にまとめているなと思いますが、なかでもぼくの気持ちに残るのはマッコイ・タイナーのピアノ・ソロですね。実はアルバム『ページ・ワン』の隠れた主人公はマッコイじゃないかと思うほどハツラツとした鮮烈な演奏ぶりで、イントロもソロもバッキングも大好き。1963年録音ですから、マッコイはちょうどグングン勢いに乗っていた時期ですよね。だから納得のプレイです。もちろんボスのジョーのソロもいかにも1960年代的といえる新感覚に満ちていて、好印象。
「ブルー・ボッサ」も「リコーダ・ミー」も、作曲者が違っているとはいえ、独特の哀感というかブラジルでいうサウダージがあって、そんなしっとり情緒が漂っているのがとってもいいですよねえ。ほ〜んと大好き。また二曲とも演奏後半でホーン二管のセカンド・リフ(テーマ部のヴァリエイションみたいな)が入るところも共通しています。演奏全体に統一感をもたらすことに寄与していますね。
これら二曲以外はふつうのモダン・ジャズ、ハード・バップ・ナンバーかなと思います。個人的にオッと思うのは、ちょっぴりジョン・コルトレイン・ジャズの香りがするところ。2曲目のバラード「ラ・メシャ」は「ナイーマ」みたいですし、5曲目のなぜか曲題が「ジンリキシャ」もちょっとコルトレインがやっているみたいに聴こえませんか。ピアノがマッコイなせいかなあ。いや、それだけではなく、1963年ならトレインの影響力が大きくなっていたということかもしれません。
全体的に新感覚を持った新しめのモダン・ジャズに聴こえるこのアルバム『ページ・ワン』のなかで、ラスト6曲目の「アウト・オヴ・ザ・ナイト」だけは従来路線っぽいです。これはふつうのブルーズなんですね。だからかなあ。曲が古い気がしますが、実はこれだけ1957年に書いたものだそうですから、さもありなん。でもジョーのソロ・パートだけは新世代に聴こえなくもないような。マッコイがあんがいふつうの(旧来からのハード・バップっぽい)演奏ぶりです。
(written 2019.11.5)
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