けっこう好みのさわやかめアブッシュ・ゼレケ
https://open.spotify.com/album/73pv6PONDf4FZT5leTS6PC?si=RpBwSDg7S-egn6Xb9n8nYw
bunboni さんに教わりました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-10-24
エチオピアの歌手、アブッシュ・ゼレケの2019年作『Hid Zeyerat』がけっこうぼく好み。聴きやすくていいですよ。エチオピア歌謡というと、日本の(古式な)演歌歌手みたいにコブシをグリグリまわして濃厚にやるというイメージがあって、それゆえちょっと敬遠しがちなんですけど、アブッシュはちょうどいい適度さがあります。アッサリさっぱりとまでではないし、濃厚すぎもしないっていう加減が気に入りました。
また、個人的にはアルジェリア/フランスのグナーワ・ディフュジオン(アマジーグ・カテブ)にちょっぴりだけ似て聴こえるあたりも気に入りました。それはだからアブッシュもレゲエ・ベースの音楽構築をやっているからだと思うんですけど、同じレゲエ・ベースといってもアマジーグみたいな深刻さや社会性はアブッシュには感じられないのがこれまたぼく好み。あ、いや、アマジーグも大好きだから似て聴こえるのが楽しいんですけど、アブッシュのほうはもっと気楽にやっている印象です。
アルバムでいえば、たとえば3曲目「Tamenal」。これなんかぼく的にはほぼグナーワ・ディフュジオンに聴こえます。やはりレゲエ・リズムですけど、特にホーン・セクションが演奏するリフなんか、なんだっけな、GDの『バブ・エル・ウェド・キングストン』に同じような曲があったと思います。それにとてもよく似ていますが、似ているのは偶然というよりレゲエ・ベースの音楽構築に共通性があるからでしょうね。
アマジーグのばあいは政治的スタンスもあってボブ・マーリーに強く共感して、ある世代以後のアフリカの音楽家に多いパターンなんですけど、自分の主張を強くおしだす推進力としてレゲエのビートや音構築法をとりいれたんだと思います。そこには深刻とまで言えるほどの一直線できまじめなシリアスさがありましたね。強く濃い暗い影もサウンドにあり、日常的に聴いて楽しむにはややヘヴィと感じられたりもしました。
エチオピアのアブッシュのばあいは、もっと気持ちを楽に持って、レゲエのこのビートが楽しいから使ってみているというような軽みが音楽に感じられるのが、ぼくは好きなんです。だからこのアルバムでもレゲエ・ビートを直截的に活用したどの曲も聴いて楽しいですよね。いちおう社会的な意見も音楽家として持っているらしいのですが、音楽を聴くかぎりではそれがストレートにシリアスなかたちでは出ていないのがエンタメとして好印象です。
その結果、アブッシュの音楽とヴォーカルにはさわやかなイメージがあって、聴いたあとくちがサッパリしているんです。そういったあたりがこのアルバムを聴いてぼくの持った最大の印象ですね。さっぱりしていて聴きやすい、歌いくちも濃厚すぎないし、かといって適度な粘り気はしっかりあって、ちょうどいいなあって感じです。
アルバムでは後半というか、7曲目あたりからラストに向けて、ぐんぐん充実してくるという印象ですね。出だし1曲目の、最初テンポ・ルパートでやってその後ずんずんビートが効いてくる、そこの感じも実は大好きですが、6曲目でアクースティック・ギターを使ったあとの7曲目「Wub Nesh」や8曲目「Kunoo」なんか、特に8曲目ですかね、さわやかでとってもいいですね。これがあのしつこいグリグリ濃厚コブシ演歌で押すエチオピア歌謡とは到底思えません。それがゆえにアブッシュにかなりの好感を持ちました。ノン・ヴィブラートでストレート、ナイーヴで素直な歌唱や演奏のほうが好きですから。
(written 2019.11.1)
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