« ブルー・ノート 50 | トップページ | アート・ブレイキー生誕100周年にあたり »

2019/11/05

「バスタブの太っちょさん」〜 リトル・フィート『ディキシー・チキン』

A8c3e37da22949ce92c67ab3ba7fcba2

https://open.spotify.com/album/4xtCtXkGuTbHQwTaVd5FCF?si=FWgPJdCyTS-Ry8wjMMQlJw

 

リトル・フィートのアルバムを発売順に聴いていくと、三作目の『ディキシー・チキン』(1972年録音73年発売)でいきなり大化けしたように思えます。ウェスト・コーストのバンドでありながら大胆に米南部ニュー・オーリンズの音楽要素をとりいれて、そしてずいぶんと都会的に洗練されたサウンドになって、ときどきジャジーにも響くっていう、しかも全般的にビートが強化されているという、そんなバンドになりましたよね、突然変異的に。

 

ベースがロイ・エストラーダからケニー・グラッドニーに交代、さらにポール・バレーア(ギター)とサム・クレイトン(パーカッション)の二名があらたに参加したというバンドのメンバー変更も、音楽性の激変に寄与したのでしょうか。でもロウエル・ジョージ自身以前からニュー・オーリンズ音楽には興味を持っていたようですけどね。リッチー・ヘイワードのドラミングまで根本から変化しているのはなぜなんでしょうか。

 

そのへんのラディカルな音楽性の変化の原因はぼくにはわからないのですけど、ともあれアルバム『ディキシー・チキン』では、まず出だし1曲目のタイトル曲こそシグネチャーですよね。ロウエル亡きあと再結成されたフィートでも現在に至るまでライヴで必ず演奏される、このバンド最大の代表曲になりました。こんな曲をロウエルが書いたという事実に、それまでのフィートのことを考えたら、驚きます。

 

しかし、ことニュー・オーリンズのセカンド・ライン・ファンクという面にフォーカスを当てると、むしろ8曲目の「ファット・マン・イン・ザ・バスタブ」のほうが直截的でわかりやすいと思うんです。みなさん曲「ディキシー・チキン」のことばかりおっしゃいますが、どっちかというと「ファット・マン・イン・ザ・バスタブ」のほうでしょ。わりとタイトな曲「ディキシー・チキン」に対し、「太っちょさん」ではもっとルーズでゆるい、スキマのあいた、そしてそのあいた空間で大きく跳ねるような、いかにもニュー・オーリンズのセカンド・ライン・ビートというものが表現されていますよね。アクースティック&エレキのギター・カッティングも3・2クラーベのパターンです。

 

ところでこの「太っちょさん」でもそうなんですが、ロウエルがスライド・ギターを弾いていますよね。しかしこのひとがこのバンドで弾くばあい、あまり目立ってソロで弾きまくるとかはせず、あくまでバンド・アンサンブルの一部としてうまく溶け込むようになっていますよね。だからいちスライド・ギターリストとして聴いたらイマイチに響くかもしれず、実際、ロウエル・フォロワーはほとんどいないというのが事実です。フィートのロウエルのばあい、アルバム・プロデュースもやってバンド全体のサウンド・メイクに気を配っていたからかもしれません。

 

さて、ニュー・オーリンズ・ビートのフィート流活用ですけど、あんがいかなり好きなのが、アルバム2曲目の「トゥー・トレインズ」ですね。歌詞も大好きなんですけどそれよりも、このリズムですね。こんな躍動的なビート感は最初の二枚目までのフィートにはありませんでした。いかにも米南部的と言えるイキイキとした肉感的なリズムですよね。リッチー・ヘイワードもいい仕事をしています。

 

アルバム4曲目の「オン・ユア・ウェイ・ダウン」はアラン・トゥーサンの曲。いかにもアランが書きそうなややエキゾティックなメロディ・ラインでぼくは大好き。しかも都会的に洗練されていて、このフィートの演奏にもジャジーさをぼくは感じます。この意味ではロウエルの曲ですけど続く5曲目「キス・イット・オフ」もなんだかアランっぽい感じのメロディじゃないですか。それをロウエルが書いたという事実がニュー・オーリンズどっぷりぶりを表しているなと思うんです。

 

アルバム最終盤の二曲はかなりジャジーというかフュージョンっぽいですよね。特に10曲目の「ラファイエット・レイルロード」は歌なしのインストルメンタル・ナンバーで、ロウエルのスライド・ギターをフィーチャーしているとはいえ、実のところ共作者のビル・ベイン(キーボード)がかなり貢献していそうな気がします。こんなジャズ・フュージョン路線は、この後フィートのなかで比率が大きくなっていくのでした。

 

(written 2019.10.13)

« ブルー・ノート 50 | トップページ | アート・ブレイキー生誕100周年にあたり »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« ブルー・ノート 50 | トップページ | アート・ブレイキー生誕100周年にあたり »

フォト
2019年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ