岩佐美咲、秋LOVEライブ 2019.11.23 私感
(写真は岩佐美咲オフィシャルブログより)
2019年11月23日、浜松町の文化放送メディアプラスホールで開催された、わさみんこと岩佐美咲のコンサート「秋LOVEライブ」に行ってきましたので、簡単に私的な感想を書いておくことにします。毎年わさみんの誕生日近辺に開催されることの多いソロ・コンサートが演歌中心なのに対し、○LOVEライブのシリーズは歌謡曲やポップスだけで構成されています。ぼくは今年が初体験でした。12曲+アンコール1曲をやるというのが通例のようで、今年もそうでした。
1 風立ちぬ
2 楓(弾き語り)
3 君はロックを聴かない(弾き語り)
4 水の星へ愛をこめて
5 愛にできることはまだあるかい
6 20歳のめぐり逢い
7 色づく街
8 M
9 茜色の約束(弾き語り)
10 秋桜(弾き語り)
11 夜空ノムコウ(弾き語り)
12 変わらないもの
EN1 恋の終わり三軒茶屋
上記のうち弾き語りと書いてあるものはわさみんがアクースティック・ギターを弾きながら歌ったものですが、ほかにせんべいさんのアクースティック・ピアノ(の音色を出すデジタル・ピアノでした)伴奏もついています。弾き語りと書いていないものはピアノ一台の伴奏だけで歌われたものです。わさみんのギター演奏技術は、2018年2月に恵比寿で観聴きしたときよりも格段に上達していました。
指のつりそうな難度の高いコード・フォームの押弦やコード間の移動も目視なくきわめてスムースで(プロ・ギターリストだったならあたりまえですが)、それだけでなく右手のピッキングもはるかに上手くなっています。ピックを使ってのピッキング・アタックのニュアンス変化のつけかた、フィンガー・ピッキングでのアルペジオ弾きのうまさなど、目立ちました。とにかくギター・プレイ技術が向上しているなというのがこの日のとても大きな印象です。
松田聖子の「風立ちぬ」で幕が開いたときは、今日は100%の本調子じゃないかもと感じたんですが、それはオープニング特有の緊張感からまだすこしかたくなっていただけだと次第に気づきました。熱を帯びてきたのは、ぼくの記憶では3曲目の「君はロックを聴かない」(あいみょん)からです。この曲では歌に力がこもり、温度が上がって声に張りや伸びがグンと増しました。これ以降はラストまでずっと好調を維持できたと思います。
4、5曲目のアニメ・ソング・パートを経て、6曲目の「20歳のめぐり逢い」(シグナル)でぼくは感極まってしまいましたね。これは初披露の曲ではなく、ずっと前にシングル CD に収録していますし、ソロ・コンサートでも歌った年がありました。わさみんの歌う「20歳のめぐり逢い」は、本当に切なくて哀しくて最高なんですけど、この日のアクースティック・ヴァージョンはいっそうそれがきわまっていましたよね。
もちろん CD 収録などされている「20歳のめぐり逢い」とは伴奏がまったく異なっています。この日はピアノ伴奏だけで歌ったわけですから、もちろんなんどもリハーサルをくりかえしたでしょうけど、それでもこんな出来具合まで持ってきたのには称賛のことばしか浮かんできませんね。CD などヴァージョンに比しややテンポを落とし、落ち着いた暗めの陰な情緒をうまく表現することに成功していたと思います。いやあ、マジすばらしかった。
コンサート全体の個人的クライマックスは、ピアノ伴奏といっしょにわさみんがギターを弾きながら歌った10「秋桜」(山口百恵)、11「夜空ノムコウ」(SMAP)でしたね。こういった曲はギター&ピアノだけっていうミニマル編成でのアクースティック伴奏でやるとグンと魅力を増すものだと思うんですね。わさみんのギターもアルペジオでしっとりした雰囲気だったし、ヴォーカルのほうも安定していました。
これらはなんたって曲そのものがいいし、ふたりだけのアクースティック伴奏も似合っているし、かつわさみんのナチュラルな歌唱法は円熟味を増し、デビュー期のようなアイドルっぽい高音のキンキンさは影を潜め、しかし本来持っているキュートさはそのまま維持しつつ、スムースに発声し声に色艶を出すっていう、そんな歌手としての成熟を聴かせてくれました。
この日のわさみん歌唱、最大の着目点は、ふだんの演歌(系のもの)を歌うときとで歌いかたを変えてきていたというところでしょうね。コンサートや歌唱イベントなど演歌などを歌うときはわさみんも強く声を張りグググ〜ッと伸ばしたりしているんですが、この日はそれを抑えて、よりいっそう曲そのものに寄りそうようにナチュラルかつナイーヴな発声を意識してしているのが聴きとれました。レパートリーの違いで歌唱法を変化させられるんですね。
またピアノ担当のせんべいさんとの息もピッタリ。せんべいさんはどの曲でだったか忘れましたがエレクトリック・ピアノの音色にチェンジして弾いた曲もありましたね。コンサート全編を通じ、わさみんとふたりでかなりリハーサルしたんだなとうかがえる、阿吽の呼吸で合わせていました。阿吽の呼吸というか練習のたまものですけれど、わさみんのギター演奏技術が上がっているおかげで合わせやすくなっていたと思います。
アンコールで歌った最新シングル曲「恋の終わり三軒茶屋」だってもちろんアクースティック・ヴァージョンに生まれ変わっていましたし、それもおもしろかったです。もともとこの曲は歌謡曲・ポップスに近い雰囲気を持っているということで、アクースティック・アレンジでやってピッタリ似合っていましたよね。ワイン・レッドのドレスであの振り付けをそのままやるのも一興でした。
演歌なのか、歌謡曲か、はたまた J-POP なのか、わさみん本来の資質や願望がどこらへんにあるのか、どういうものを歌うと実力をフル発揮できるのか、そういったことは軽々には言えませんが、ふだん着物姿で演歌やそれに近い古い歌謡曲を歌っていることが多いだけに、ぼくにはかなり新鮮な驚きで、しかも岩佐美咲の真の実力の一端を垣間見たような気がした一時間半でした。
(written 2019.11.26)
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