ブルー・ノート 50
https://www.udiscovermusic.com/stories/the-50-greatest-blue-note-albums/
疑いなく史上最もアイコニックなジャズ・レーベルであるブルー・ノート。1939年の創設以来、今年でちょうど80年。その長きにわたる歴史のなかでリリースしてきたレコードは1200枚近く。そのなかからベスト50というものを uDiscovermusic が選び掲載したのが上にリンクした記事です。ちょこっと簡単に感想を記しておきましょう。
このブルー・ノートの50作品という記事は、ただ単なる好事家の楽しみというだけでなく、初心者向けの格好のディスク・ガイド、ジャズ入門のためのガイダンスにもなっているなと思うんですね。モダン・ジャズへの道案内としてはこれ以上ないセレクションじゃないでしょうか。その意味でも幅広いみなさんにご一読願いたいところです。
50作品のチョイスと順位は妥当なところじゃないかと思います。第1位がキャノンボール・アダリー名義のマイルズ・デイヴィス『サムシン・エルス』なのは納得ですよね。これ以上の名盤はなかなかありませんから。だいたいだれが選んでもこれがトップに来そうな気がしますね。
2位以下やはり名盤の数々が並んでいますが、なかには個人的にイマイチなものもあります。たとえば3位のウェイン・ショーター『スピーク・ノー・イーヴル』ですけど、ぼくのなかではそんなに評価は高くありません。あくまで個人的な趣味ですけどね。だいたいぼくは1960年代のショーターがやや苦手といった側面があって…。エリック・ドルフィーの『アウト・トゥ・ランチ』が生理的にムリという話は以前しました(ドルフィーは好きだけど)。
あと、10位のアンドルー・ヒル『ポイント・オヴ・ディパーチャー』は、今回のセレクション50のなかで唯一 CD で持っていない作品です。たぶんいままで聴いたこともなかったものです。苦手だとかなんだとか、なにか理由があるわけじゃありません。なんとなくヒルと縁遠かっただけなんで、これを機にちょっと…と思い Spotify で聴いてみたらかなりいいですよねえ。どうしていままで聴いてこなかったんでしょう?不思議です。
でもこれら以外はあまのじゃくのぼくが見ても黄金の選盤といった感じで、選者がどなたであれ、こんなような50作品になるのではないでしょうか。ブルー・ノートですからハード・バップとそれ以後のものが中心で、そのあたりのジャズを味わうには持ってこいの選盤ができるレーベルですよね。ここに名前があがっている50作品を聴いていけば、だいたいモダン・ジャズのおおまかな見取り図が描けるのではないかと思うほどです。
50セレクションのなかに二枚だけ、21世紀的新世代ジャズがふくまれていますね。42位のカサンドラ・ウィルスンと45位のロバート・グラスパー。ふたりとも最近のジャズ界を引っ張っている存在なので、ここに名前があるのは納得です。彼らと48位のシドニー・ベシェ(は古いひと)以外は、すべていわゆるモダン・ジャズのアルバムで占められていますよね。
こうしたセレクション50を眺め、あれが入っていないとか、これは外すべきだとか、順位付けに不満があるとか、いろいろ言うのはカンタンです。ですけれど、ちょっとした概観とガイダンスとして活用・応用すればいいのであって、従来からのブルー・ノート・ジャズのマニアはただ微笑んでいればいいし、ジャズの世界にあまり縁がなかった向きにはピッタリの入門選だし、特に文句なしだとぼくは思いますよ。
(written 2019.10.8)
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