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2019/11/24

ソニー・クラーク『リーピン・アンド・ローピン』

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https://open.spotify.com/album/2akec72Ypln9yScfhHo8rm?si=klseKXqGSiyPeMBrQ0yEJQ

 

ソニー・クラークのラスト・アルバム『リーピン・アンド・ローピン』(1961年録音62年発売)は、なかなか雰囲気のあるいいハード・バップ作品ですよね。ラテン好きなぼくにとっては、ラスト6曲目が「ミッドナイト・マンボ」であることがポイント高し。いやあ、好きですね。これはソニー作ではなくトランペットで参加しているトミー・タレンタインの曲です。しかしアレンジはかなりソニーが貢献しているんじゃないでしょうか。

 

といっても各人のソロ・パートはふつうの4/4拍子のなんでもないモダン・ジャズになっちゃうっていうよくあるパターンですけど、でもこの最初と最後のテーマ演奏部のラテン・リズムは強力ですよ。1961年録音だから、アメリカ合衆国でもマンボはもちろん認知されていたでしょう。この曲がマンボと言えるかどうかはむずかしいですけれども。あ、そうそう、ソロ・パートでもビリー・ヒギンズのドラミングとソニーのピアノ・バッキングにラテン香味がちょっぴりありますね。

 

その前の5曲目が「ヴードゥー」というタイトルで、これまた南洋というか中米カリブ風味かという感じですが、ソニーのこの曲にハイチふうなところはありません。なんとなくおどろおどろしい不気味なアトモスフィアをヴードゥーと表現しているだけのことでしょう。ドクター・ジョンなどニュー・オーリンズの音楽家がこのことばを使うときとは用法が違っているなと思います。でもそれなりにソニーの「ヴードゥー」もお化けが出てきそうなハロウィンっぽい雰囲気で、いいですよね。

 

ってな感じでぼく的にはアルバム終盤の二曲が『リーピン・アンド・ローピン』のハイライトなんですが、一般的にはここじゃないですね。幕開けの変型ブルーズ「サムシン・スペシャル」の早足で歩く感じがちょっと「クール・ストラティン」(これもブルーズ)っぽいなとかソロも内容がいいとか、ホーン二管がおやすみして代わりにテナーのアイク・ケベックのワン・ホーン・カルテットでやる2曲目のバラード「ディープ・イン・ア・ドリーム」のゆったり感とかが聴きどころですよね。もちろんぼくもそれらは大好き。

 

特にバラードの2「ディープ・イン・ア・ドリーム」はかなりできがいいと思うんですね。しかしここでだけどうしてアイク・ケベックを起用しているんでしょうか。同じときのセッションなんですけどねえ。ほかの曲のテナーはチャーリー・ラウズ。そのへんの人選理由はわかりませんが、録音数の全体が少ないアイクのテナーがここでは実にいいです。こんなふうにバラードを演奏されると、思わずベン・ウェブスターを連想しちゃいますよ。褒めすぎ?

 

その「ディープ・イン・ア・ドリーム」はワン・ホーン・カルテット演奏ですが、アイクのテナーが出るまでのすこしのあいだ、ソニーがピアノ・ソロを弾いていますよね。たんなるイントロというのとも違います。そのソニーのピアノ演奏がいつになくいいですね。前々からくりかえすように、ぼくのなかではジャズ・ピアニストというよりコンポーザー/アレンジャーとして評価しているひとなんですけど、アルバム『リーピン・アンド・ローピン』でのピアノ・ソロは聴きごたえあります。後ノリでプレイして粘っこいフレイジングをするソニーの特徴がよくわかりますよね。

 

(written 2019.11.4)

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