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2019/12/01

シカゴ・ブルーズなビッグ・ママ・ソーントン

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https://open.spotify.com/album/2lpWAoHgTroLmD8eCeF6l5?si=luHmkef9R3qSgOZyygXacA
(オリジナル・アルバムは10曲目まで)

 

ビッグ・ママ・ソーントンは1950年代がピークだったと思いますが、ここにマディ・ウォーターズ・ブルーズ・バンドをしたがえて歌った1966年の録音があります。アルバム題はなんの変哲もない『ビッグ・ママ・ソーントン・ウィズ・ザ・マディ・ウォーターズ・ブルーズ・バンド』。これがなかなか悪くないんですね。ちょこっとだけ感想を書いておくことにします。

 

ブルーズ聴きにはもちろんマディのほうが認知度高いでしょうけど、先にヒットしたのはジョニー・オーティス楽団時代のビッグ・ママ・ソーントンのほう。だからマディのバンドをしたがえて歌うっていうセッションが実現したんでしょうね。といっても1966年といえばビッグ・ママもマディも人気が落ちていた時期。だからその両者で組んで、またもう一発みたいな願望があったかもしれません。

 

この両者の1966年共演、ビッグ・ママが歌っているのは大半が自分で書いた曲のようですが、それでも伴奏のマディ・バンドの演奏は66年当時の完璧なシカゴ・ブルーズ・スタイルですよね。ブギ・ウギ・ビートの効いたアップ・テンポ・ジャンパーや、ゆったりとたたずむようなスロー・ナンバーはまるでとぐろを巻くような、黒い水たまりのようです。主役の歌も実にいい。

 

そしてビッグ・ママの歌は、ときどきソウルフルにも響きますよね。ソウル・ナンバーに近づいているものがこのアルバムには数曲あるように思えます。たとえば三連のストップ・タイムが使ってあるせいか4曲目の「ライフ・ゴーズ・オン」とか、またこれもバンドの演奏するリズムのためなのか7曲目の「ギミー・ア・ペニー」なんかもソウルっぽいですね。

 

こういったことは、ビッグ・ママがもともとピュア・ブルーズというというよりもリズム&ブルーズの歌手だったことにも起因するかもしれませんが、ぼくの聴くところそれ以上に時代が関係しているんじゃないかと思うんです。1966年でしょ、新興音楽ジャンルであるソウルが人気を獲得しつつありました。シカゴ・ブルーズ・シーンでも新世代はソウル寄りの音楽性を発揮しはじめていたころですからね。

 

とはいえ、このアルバムを聴いて、いちばん目立っているのはたとえばオーティス・スパンのピアノでしょうけどそれを聴くと、やはりまごうかたなき完璧なシカゴ・ブルーズに違いない、ビッグ・ママのヴォーカルもそれに接近しているなとは感じるんですけどね。それにくわえ、ジェイムズ・コットンのアンプリファイド・ハープが聴こえますから、もう文句なしのシカゴ・ムードです。

 

ビッグ・ママ・ソーントンは、戦後にシカゴ・ブルーズが確固たるスタイルを確立していくのとは関係なく歌い、人気となり、曲も有名になった歌手ですけど、このアルバム『ビッグ・ママ・ソーントン・ウィズ・ザ・マディ・ウォーターズ・ブルーズ・バンド』を聴けば、そんな歌手でも包摂してしまうほどの魔力を1960年代のシカゴ・ブルーズは持っていたんだなと納得します。

 

なおバンドのボス、マディ・ウォーターズもギターで参加とのクレジットはありますが、そんなには目立っていませんね。

 

(written 2019.11.14)

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