カリブふう?ギリシア歌謡 〜 エレフテリア・アルバニタキ
https://open.spotify.com/album/1imoPbwErKi20kI9JfJ4EM?si=7DK8MrczRjKuNEiOrxrhGA
エレフテリア・アルバニタキという読みでいいんでしょうか、ギリシアの歌手 Eleftheria Arvanitaki の2019年作『Ta Megala Taxidia』がなかなかいいですよ。紹介してくださっているエル・スールのホーム・ページになにも記載がないですからくわしいことはわかりませんけど、現代ギリシア・ポップスですかね。歌声を聴くとそんなに若い歌手じゃなさそうに思えます。
このアルバムでまず惹かれるのは、1曲目にアバネーラのリズムを使ってあるというところですね。カリブふうギリシア・ポップス?おかげで汎地中海的なニュアンスも感じられます。とにかくアバネーラが好きで好きでたまらないもんですから(ぼくは「ラ・パローマ」の熱狂的愛好家)、このリズムが使ってさえあればどんな音楽でも好きになれそうな気がします。
エレフテリアのこの1曲目のばあい、ギリシアふうな哀感こもる情緒よりも、陽光のもと青い海に臨んでいるような、そんなカラッとさわやかなフィーリングが漂っていますよね。これはリズムにアバネーラが使われているせいなだけでなく、メロディ・ライン、和音構成やアクースティックな弦楽器をうまく活用したサウンド・メイクにも理由がありそうです。
エレフテリアのヴォーカルもさっぱりしていて、かといって乾きすぎずちょうどいいリリカルさもあって、しっかりしているし、聴きやすくていいですね。そんなに強く声を張ったりはしない歌手のようで、スムースにスッと歌っているみたいなんですね。軽く舞っているような、しかし地に足を下ろした、フレイジングも感じられ、いい感じですね。
カリブふうとか汎地中海的という点でいえば、アルバム・ラストの9曲目もそんなフィーリングをぼくは感じます。それよりはギリシア的哀感のほうが強い曲かもしれませんが、2〜8曲目とはあきらかに違っていますよね。そんなには明るくもないけれど、ちょっとさっぱりしてさわやかな雰囲気が漂っているでしょう。この曲もかなり好きですね。エレフテリアがふわっと軽く歌っているのが印象に残ります。
こんなカリブふうな地中海歌謡にはさまれた2〜8曲目はいかにもギリシア歌謡といった趣で、おなじみの路線です。ところでギリシア音楽って、それにしかない音階使用があるんですかね。なんだか歌のメロディ・ラインを聴いていると、世界のほかのどこの音楽でも聴けない、すぐにこれはギリシアだなと判別できる動きがあるように思うんですけど、それがこの独自の哀感とか濃い情緒表現に結びついているのでしょうか。どなたか楽理にくわしいかた、教えてください。
たったの31分間とこじんまりしたアルバムですし(だからといってミニ・アルバムとか EP とかっていうわけじゃない)音楽的に特筆すべきものじゃないのかもしれないですけど、1曲目のアバネーラが印象的ですし、全体的にもきれいにまとまって、歌手の歌いかたもしっとりしていて好感が持てるいい内容だと思います。
(written 2019.11.28)
« 日本盤の帯ってなんのためにあるの? | トップページ | 倦怠期ブログ Black Beauty? »
「音楽(その他)」カテゴリの記事
- とても楽しい曲があるけどアルバムとしてはイマイチみたいなことが多いから、むかしからぼくはよくプレイリストをつくっちゃう習慣がある。いいものだけ集めてまとめて聴こうってわけ(2023.07.11)
- その俳優や音楽家などの人間性清廉潔白を見たいんじゃなくて、芸能芸術の力や技を楽しみたいだけですから(2023.07.04)
- カタルーニャのアレグリア 〜 ジュディット・ネッデルマン(2023.06.26)
- 聴く人が曲を完成させる(2023.06.13)
- ダンス・ミュージックとしてのティナリウェン新作『Amatssou』(2023.06.12)
コメント