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2019/12/19

オルジナリウス松山公演 2019.12.17

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開演ブザーが鳴ったとき、客席はまばら。キャパ2000人の松山市民会館大ホールは半分くらいしか埋まってなかったんじゃないでしょうか。やはり松山でのオルジナリウス公演はなかなかたいへんだよなあと思ったんですけど、それでもメンバーたちは全力を尽くしてエンターテイメントに徹してくれました。CD で聴くこのヴォーカル・グループのハーモニーの楽しさがそのままステージにあったんですね。いやあ、実に楽しかったです。

 

幕が開くと、そこにはまず映画館のスクリーンのようなものがあって、ブラジル音楽、特にヴォーカル・グループの歴史が簡単に紹介されました。個人的には知っている内容でしたが、一般のお客さん向けにオルジナリウスを楽しむための必要知識として映し出されたのでしょう。それが二、三分ほどあったでしょうか、終わるとスクリーンが上がり、そこにオルジナリウスのメンバーが立っていました。

 

オルジナリウスのステージは二部構成。一部ではいままでに発売されているもののなかから、それもカルメン・ミランダのレパートリーや彼女に関連した曲を中心に、やったように思います。ブラジル音楽、それもヴォーカル・ハーモニーの楽しさをまず知ってほしいという意味でそういった構成にしたのかもしれないですね。CD で親しんでいる曲がどんどん並ぶので、おなじみの世界をあらためて味わっているような、そんな親しみがありました。ほかのお客さんたちはどうだったでしょうか。

 

どの曲のアレンジも CD ヴァージョンどおりでしたが、随所にライヴ・ステージならではというパートもふくまれていて、ライヴ・パフォーマンスで観客にアピールするという意味での、ヴィジュアル面あわせ、強調や緩急や激しさも聴けました。そういったところは CD では味わえないところですよね。特に見た目の演出、ダンスやちょっとした動作など、ステージ・パフォーマンスも考え抜かれているなと感じました。

 

日本公演ははじめてだったとはいえ、ブラジル国内外でライヴ経験を積み重ねているオルジナリウスですから、ヴォーカル面やヴィジュアル面での演出もすっかりお手のものなのかもしれないです。歌っているのは六人(男女三人づつ)。計七人のメンバーのうち一人、マテウスははパーカッション専門で歌いませんでした。そのマテウスのパーカッションなんですけど、実にうまかったですね。正確無比のひとこと。しかも柔軟で多彩、一曲のなかでも自在にリズムを変化させていました。しかもそれとわからないくらい微妙に。そのおかげで、聴き手が意識しなくても曲に陰影が生まれていましたね。

 

ライヴならではといえば、一部で「アデウス・バトゥカーダ」をやったんですけど、それへの導入部として、二名によるパンデイロ妙技のかけあいインストルメンタル・パートがありました。一名はマテウス、もう一名は歌やカヴァキーニョもやったファビアーノがパンデイロを持ちました(ファビアーノは歌のあいまあいまに打楽器を演奏していた)。バトゥカーダということで、打楽器合奏パートをくっつけたんでしょうね。

 

一部で歌った曲のなかには CD に収録されていないものだって少しありましたよ。イヴォーニ・ララの「Alguém Me Avisou」や、ジャコー・ド・バンドリンの「Santa Morena」(アンダルシアふう)、さらに一部のラストではカルメン・ミランダに提供されながら彼女は歌わなかった「Brasil Pandeiro」もやりましたね。全体的に一部は(ぼくには)親しみやすさが前面に出ていたように思います。

 

二部の出だしではちょっとビックリしました。プロテスト・ソングをやったからです。シコ・ブアルキとジルベルト・ジルの「Cálice」。1970年代のブラジル軍政下でつくられ歌われた曲ですよね。オルジナリウスもこんな社会派な曲を歌うんですね。コンサート全体をとおし、この曲でだけシリアスさが際立っていました。ここではハーモニーの楽しさよりも、リーダーのアウグストがひとりでギターで弾き語るのがメインでした。歌詞も重要ということで、一曲ぜんぶの和訳がスクリーンに映し出されました。

 

そうそう、スクリーンに映し出されといえば、ステージ背後にどの曲もぜんぶ曲紹介が出ていたんですね。だれの書いたどんな曲かという説明が日本語で出ていました。さらにいえば、メンバーがポルトガル語でしゃべる内容も大意が和訳され映し出されていたんです。盛り上げどころ(「さあみなさんもいっしょに手拍子を!」など)も出ていたし、つまりこのオルジナリウスのライヴ・ステージは全曲セット・リストが固定されていて、しゃべる内容もあらかじめ決められていたということです。

 

二部のステージではおなじみのボサ・ノーヴァ・ナンバー(「Wave」「Garota de Ipanema」)が続けざまに歌われるパートがあって、「イパネマの娘」では歓声が上がりましたから、オルジナリウス側の目論見は成功したといえるでしょう。レゲエのジョニー・ナッシュの曲をやったり、日本向けのサービスとして松任谷由美の「ルージュの伝言」をオルジナリウスふうにアレンジして日本語で歌ったり、最後のほうでは有名曲「Mas Que Nada」を客席といっしょに合唱したりなど、とことんファン・サービスに徹していましたねえ。

 

一部開幕の最初のほうではかたかった客席の反応も、二部になりどんどんほぐれてきて、最後は立ち上がって踊り出すことになりましたから、ホールの半分しかお客さんが入っていなかったとはいえ、結局はオルジナリウスの音楽の楽しさが伝わったと言えるでしょう。その意味でも大成功のライヴでした。なによりぼくはたいへんに楽しかったし、前後左右に座ったお客さんの反応から同様に感じていることが伝わってきました。

 

音楽的は聴きやすい洗練されたハーモニー・ワーク、微妙に変化して曲にダイナミズムをもたらす陰影に富むリズム表現など、意識しないとわからない程度ですけど、たんにわかりやすく底抜けに楽しいヴォーカル・グループというだけでなく、いや、その魅力を最大限に発揮するために凝らされた工夫も聴きとれて、なかなかうなる場面もあって、収穫がありましたよ。ステージのラストのほうでは、もうすぐ次のアルバムがリリースされることも言われましたので、楽しみです。

 


セット・リスト
(一部)
・South American Way
・Na Baixa do Sapateiro
・Tico Tico No Fuba
・Linda Flor
・Disseram Que Eu Voltei Americanizada
・O Samba E O Tango
・Adeus Batucada
・Auguém Me Avisou
・Um Chorinho Em Cochabamba
・Santa Morena
・Brasil Pandeiro

(二部)
・Cálice
・A Rã
・Estrada do Sol
・Wave
・Garota de Ipanema
・André de Sapato Novo
・Baião de Quatro Toques
・I Can See Clearly Now
・ルージュの伝言
・Cantar
・Mas Que Nada
・Feminina
・O Que É Que A Bahiana Tem

 

(written 2019.12.18)

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