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2019/12/29

マイルズ『カインド・オヴ・ブルー』は今年でちょうど60歳

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https://open.spotify.com/album/1weenld61qoidwYuZ1GESA?si=o4zjrLP8R9CWT1A-72gl1A

 

残り少なくなりましたが、今2019年はマイルズ・デイヴィス『カインド・オヴ・ブルー』の60周年にあたります。今年は『イン・ア・サイレント・ウェイ』『ビッチズ・ブルー』からちょうど50周年でもあるということで、60より50のほうがピッタリ半世紀と区切りがいいということと、1969年という意義深いあの時代に新しい時代の新しい音楽のフィールドを切り拓いたという意味でも、そっちのほうが(主に夏場に)盛り上がりましたよね。ぼくもそれに乗じて複数の文章を書きアップしました。

 

しかし『カインド・オヴ・ブルー』60周年のほうは、今年たぶんだれも言っていないと思うんですよ。こりゃちょっと扱いが不当じゃありませんか。ぼくも今年いままでこの1959年作のことを言わないできましたが、2019年も終わってしまうということで、やはりなにかちょっとだけでも書いておこうかなという気になりました。

 

でも『カインド・オヴ・ブルー』について特に斬新なことは言えない、もはや残っていないという気がしますし、60周年という区切りにもこれといった意義、意味はないように思えます。だから困っちゃうというか、みなさんそれでなにも言っていらっしゃらないんだろうと推測します。だからいままでも書いてきたことのくりかえしになってしまいますけれども、それでも記しておいて、2019年という60周年の節目にこのアルバムのことをもう一回思い出しておきたいんですね。

 

最近『カインド・オヴ・ブルー』を聴くといつも思うのは、なんて静かでおだやかな音楽なんだろうということです。そして全体的にとても整っています。あるいは整いすぎている、あまりに均整がとれすぎているという見方もできるのではないでしょうか。それはこの作品の長所でありますけれども、ばあいによってはだからつまらない、スリルがないとみなされてしまうかもしれません。

 

このアルバムにおける、それでもちょっとはハードなグルーヴ・ナンバーといいますと、たぶん2曲目の「フレディ・フリーローダー」ですよね。これは12小節の定型ブルーズです。ややファンキーに跳ねるフィーリングも持っているということで、アルバム中この曲でだけピアノはウィントン・ケリーが起用されています。といいますか1959年時点でのマイルズ・バンド・レギュラーはウィントンで、ほかの曲で弾いているビル・エヴァンズはすでに脱退していたのにセッションのときだけ呼び戻されたわけです。

 

このビルを呼び戻したというところにも、このアルバムを静的志向のものとしたいというマイルズの意図が見えますよね。ビルの和音の使いかたをかなり気に入っていたマイルズですけれど、そもそもこのピアニストに対してボスが持っていた最大の不満は「(ハードに)スウィングしない」ということでしたから。それでも『カインド・オヴ・ブルー』ではビルを使いたいと思えるだけの理由があったということです。

 

同じブルーズでも B 面の「オール・ブルーズ」はやっぱり落ち着いたフィーリングです。けれどもこのアルバムでビルが弾いている曲のなかでは、それでもちょっとは激しさが聴きとれるものかもしれません。ボスはテーマ部分だけハーマン・ミュートでやってソロ部ではオープン・ホーンですが、そのソロ部で強い音を吹くとビルが呼応して鍵盤をガンと激しく叩く場面もあります。

 

また『カインド・オヴ・ブルー』ではジョン・コルトレイン、キャノンボール・アダリーの二名のサックス奏者がそこそこハードなプレイ側面を担っていると聴くこともできます。それでもかなり抑制が効いているのはやはりボスの統率下にあるからで、このアルバムの音楽志向を如実に物語るものですけど、テナー、アルトのサックス・ソロは饒舌ですし、ボスやビルの控えめなソロ内容といいコントラストを形成しているかなと思います。

 

なんだかんだ言っても、やっぱり全体的にこのアルバムは静かにたたずむような夜の音楽といった面が非常に強いですね。だからこそ聴いていて心がなごみますし、ジャズ史に残る一大傑作には違いありませんが、ふだんはそんなことまったく意識しません。ただ聴いていて心地いいな、リラックスできるイージー・リスニングだなと思って、ただのんびり流しているだけなんですね。オーネット・コールマンの『ジャズ来るべきもの』もそうなんですけど、歴史に残る一大傑作、問題作とは、しばしばそういったおだやかな表情を見せているものなんです。

 

(written 2019.12.16)

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