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2019/12/28

冬にも似合うニーナ・ベケール『ミーニャ・ドローレス』

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https://open.spotify.com/album/4KKDLia9xJT8NM98jPfRvM?si=SytbIQDdScGUEKHfikIUtA

 

以前、2018年の夏でしたか、ニーナ・ベケールの『ミーニャ・ドローレス:ニーナ・ベケール・カンタ・ドローレス・ドゥラン』(2014)は夏にピッタリという話をしましたよね。独特の冷感があってヒンヤリした音感で、聴くだけで体感温度がちょっと下がりそうっていうようなことでした。その記事を書いてブログを更新したのがちょうど真夏でしたから、だからそんな感想を持ったのかもしれません。

 

それはそれで間違いないといまでも思っていますが、最近実感しているのはこのアルバム、寒い季節に聴いても実にピッタリの温感があるなということなんです。冷感があると言ったり温感と言ったり、一貫性がないぞ、ええ加減なやつめ、どっちなんや?!とのご指摘もあろうかと思いますが、すぐれた作品とはさまざまな容貌を見せ、種々多様に変化し、幅のひろい受け止めのできるものでしょう。

 

ニーナ・ベケールの『ミーニャ・ドローレス』もまたそんな傑作のひとつに違いありません。このアルバムが暖かい感じがする、だから冬に聴いたらピッタリだなと思うのは、主に曲のよさ、ショーロふうな伴奏、ニーナのちょっぴりかすれたハスキー・ヴォイスのおかげなんですね(ぜんぶやないか)。特に伴奏と声ですね、それが理由でこんなぬくもりみがあるんじゃないでしょうか。

 

なかでもニーナのこの声、これがいいですよ。そっと優しく、決して張らずささやくように、ていねいにことばを並べていくこの歌唱法が、あたたかみを感じさせるんですよねえ。こういった歌いかたこそぼくにとっては最高の声なんです。いや、最高だと感じさせる歌いかたはいくつもありますが、ニーナのこのアルバムでのこのヴォーカル表現こそ、温感をもたらすものじゃないでしょうか。

 

収録されているどの曲でもそうなんですけど、特に注目していただきたいのは6曲目の「Vou Chorar」です。この親密で(聴き手との)距離の近い声の出しかたは実にすばらしいですよねえ。曲がいいんですけど、それにくわえニーナのこの発声がそれを最大限に活かすことにつながっています。まるで狭い部屋のなかでふたりっきりになって目の前でニーナが耳元で小さな声でささやくように歌ってくれているような、そんな気分になりませんか。そのおかげで人間の肌のぬくもりすら(じかに)感じられると思うんですね。この曲ではウーリッツァーの電気ピアノが使われているのもそんないい感じに拍車をかけていますねえ。

 

そう、人間味のあるあたたかさ、これこそぼくが今日いちばん言いたいことなんです。このアルバム最大の特長がそれでしょう。基本的には7弦ギターとバンドリンの二名デュオだけっていう伴奏がショーロふうなのも、オーガニックな音楽の質感構築に寄与しています。サンバ・カンソーン歌手だったドローレス・ドゥランの書いた曲も暖かみがあって、アルバム全体として真冬に聴いたら気持ちがほっこりとぬくもっていくような、そんな音楽じゃないでしょうか。

 

(written 2019.12.15)

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