中近東ふうなステファン・ツァピス
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ギリシアとフランスにルーツを持つらしいステファン・ツァピス(Stéphane Tsapis)は、パリ在住の新世代ジャズ・ピアニスト。しかしその2019年作『ル・ツァピス・ヴォラン』で印象に残るのはピアノ演奏ではなく、女性ヴォーカル陣ですよね。もちろんピアノ演奏を聴かせるインストルメンタル・ナンバーだっていくつもありますよ。それらだって楽しいんですけれども。
そんでもってインスト・ナンバーでもヴォーカル・ナンバーでもこのステファンのアルバムで一貫して感じるのはアラブというか中近東風味ですね。このピアニストの出自とか現在の活動地とか見ていると、中近東の音楽と関係あるのかないのかよくわかりませんけど、このアルバムではわりとはっきりしたアラブ音楽の音階と旋律つくりを聴きとることができるなと思います。
そんなところがぼくのお気に入りになっているところなんですけど、曲によって哀感を持ちながらふわっとヴェールのように漂ったりするものもあれば、強く鮮明にグルーヴィなものだってありますね。グルーヴ・ナンバーではそのリズム・タイプも中近東音楽ふうにぼくには聴こえ、これ、いったいどこが新世代ジャズ・ピアニストなんですかね。
いや、けなしているわけじゃなくて、このアルバムみたいな音楽やそれをやる音楽家なら好きです。曲はもちろんぜんぶステファンの自作でしょうし、女性ヴォーカルのアレンジもやっているはず。ヴォーカルにしっかりした歌詞らしいことばはないばあいが多く「あぁ〜」「うぅ〜」とか言っているだけで、まるで立ち込める幕とか霧みたいなヴォイス活用法ですね。ちょっとアンビエンスっぽい?6曲目は日本語が使われています。どう聴いてもネイティヴの日本語話者ですね。
そういえば、ステファンのピアノ演奏によるメロディ・ラインも、無国籍ふうと思わせながら、やっぱり中近東のアラブふうなところが漂っていますし、それに<オリエンタル・ピアノ>とクレジットされているものも弾いているみたいで、それはどの音でしょう、この(アメリカでいえば)ホンキー・トンクなタック・ピアノみたいな音がそうなんでしょうか?アルバムではエレピも使われています。
オリエンタル・ピアノ(というのがなんなのかイマイチわかりきりませんが)だけでなく、ふつうのアクースティック・ピアノでも、ステファンはわりと中近東音楽ふうなフレイジングをしていますから、女性ヴォーカルのラインもそれにあわせて同趣向にアレンジしているというわけで、全体的にミステリアスなムードも漂わせ、なかなか雰囲気のある好作品だと思います。
(written 2019.11.30)
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