ウェインの『ジュジュ』はコルトレイン・ライクでかなり好き
https://open.spotify.com/album/46VoobaZCtFPReElOHFEqq?si=EV5dI8YqTECbwAnYDaISzA
ウェイン・ショーター特集をやるつもりはなかったんですが、「フットプリンツ」つながりで芋づる式に昨日まで来ました。もともとは1960年代ショーターが苦手なのを克服したいということで聴きかえしていたのが出発点でしたから、今日はそこへ戻って『ジュジュ』(1964年録音65年発売)はわりと好きだという話をしたいと思います。ジャケットだけはいまだイマイチに感じますけど、中身はいいですよね。
ひとことにしてウェインの『ジュジュ』はほぼ同時期のジョン・コルトレイン・カルテットによく似ています。実際、ウェインのこれにもマッコイ・タイナーとエルヴィン・ジョーンズが参加していますしね(ベースはレジー・ワークマン)。それでその二名ともコルトレイン・バンドでの演奏と遜色ない充実ぶりを聴かせてくれているし、そのせいかもとからなのかウェインのテナー・サックスまでトレインによく似たブロウぶりだなと思うんですね。
そういえばこのアルバムの曲はすべてウェインの自作ですが、それもトレインが書きそうな感じによく似ていますよねえ。ホント演奏全体がここまで似ているとなにか意識したのでは?と思わないでもないほどです。それで結果的にアルバム『ジュジュ』はよくこなれた、あまり新主流派っぽくないかもですけど新世代感覚のある、できあがりのいいハード・バップ、いやポスト・バップかな、そんな作品になっています。
個人的には1曲目の「ジュジュ」で決まりといいたいくらいこの曲が好きで、テーマ・メロディもいいし、それになんたってここではエルヴィンの爆発ぶりがたまりません。2曲目以後は比較的おとなしいドラミングですから、いっそうこの1曲目での猛烈な叩きっぷりが目立ちますよね。冒頭マッコイの演奏するリフに乗せて、ウェインが出る前からエルヴィンは大活躍。特にシンバル・ワークとリム・ショットで表現する複雑なリズムが快感です。
「ジュジュ」でのソロはマッコイ、ウェイン、エルヴィンの順。いずれも充実していますね。テーマ吹奏後まずピアニストにソロを弾かせ場があたたまってからボスみずからいざサックス・ソロで出るというのはコルトレインがよくやっていた手法でもあります。その一番手マッコイのソロもトレインのバンドでのやりかたそのままだし、二番手ウェインも音色までトレインに似ているような気がします。ややフリーキー気味にかすれるところまでソックリ。エルヴィンのポリリズムも見事です。
アルバムでは2曲目以後落ち着いたフィーリングになっているかなと思いますが、内容は充実しています。1曲目が頭抜けてすばらしいもんですから地味に聴こえちゃうだけなんですね。4曲目「マージャン」とか5曲目「イエス・オア・ノー」とか、曲も演奏もすぐれています。3曲目「ハウス・オヴ・ジェイド」も好きですが、これはどう聴いてもコルトレインをかなり強く意識したとしか思えないですね。似ているという点を除けば及第点でしょう。
(written 2020.1.13)
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