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2020/01/07

やさぐれていない爽やかなトム・ウェイツ 〜 ウィミン・シング・ウェイツ

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https://open.spotify.com/album/4xyavB5BZ4HZeAFwmothzx?si=DLHQ4TZzStyb1F3Zjep2xg

 

萩原健太さんに教えていただきました。
https://kenta45rpm.com/2019/11/28/come-on-up-to-the-house-women-sing-waits/

 

2019年でトム・ウェイツは70歳になったんですって。そのトリビュートみたいな意味で製作・リリースされたらしい『カム・オン・アップ・トゥ・ザ・ハウス:ウィミン・シング・ウェイツ』(2019)は、副題どおり女性が歌ったトム・ウェイツ・オリジナルばかりをピック・アップして一個のアルバムにしたもの。新録ではなくて、既存の作品から選ばれています。このアルバム、かなりいいですよ。

 

トム・ウェイツ自身の世界というとあんな感じですから。やさぐれているというか、ひとによってはとっつきにくいものだと思います。なにを隠そうぼくもトム・ウェイツの、曲は好きだけど、彼自身のヴァージョンは苦手なんですね。芝居がかりすぎているというか、ちょっとわざとらしいでしょう、そんな部分で、聴いていてちょっとシラケちゃうんですね。

 

でも書きましたようにウェイツの書く曲はいいなと思っているんで、だからもっとストレートにそのよさを活かすような歌手がどんどんカヴァーすればいいのになというのが本音です。いままでもそんな清新なヴァージョンに多少接してきましたが、今日話題にしている『ウィミン・シング・ウェイツ』は、いままでウェイツのあんな世界を遠ざけていたような(ぼくもそうだけど)ひとたちにも推薦できる一枚で、曲のよさを理解させ、とっつきにくさを解消してくれる格好のアルバムじゃないかと思うんですね。

 

『ウィミン・シング・ウェイツ』では、トム・ウェイツの曲をどの歌手もストレートに歌い、ウェイツ自身のヴァージョンが持つわざとらしさ、芝居がかったこけおどしを消しています。これが大成功なんですね。彼女たちのヴァージョンはキリッとしていて、凛として、清廉なさわやかさすら感じますから、ウェイツ自身のヴァージョンからガラリと世界が変化していますよね。

 

ぼくの見方では、こんなさわやかな感じに姿を変えたウェイツ・ソングの数々こそ、もとの曲のよさを引き立てた最上の解釈だと思うんですね。これでこそトム・ウェイツの曲の真のよさ、真の魅力が伝わろうというものです。収録されている曲をトム・ウェイツ自演ヴァージョンと比較すれば、だんぜん彼女たちのカヴァーのほうがいい曲に聴こえますから。

 

『ウィミン・シング・ウェイツ』に収録の女性たちによるウェイツ・カヴァーの数々は、決してきどらずストレートに曲を伝えようとしているし、パフォーマーとしての素直で正直なアティテュードが聴きとれます。どの曲も透明感があるし、清新で、ものによってはさわやかな明るさ、前向きに進む肯定感だってあるんですね。アルバムを聴いている最中や聴き終えて、後口がさっぱりと心地いいです。

 

トム・ウェイツはもうああいったひとなんでしょう。だから彼の書いた深みのあるすぐれた曲の数々を自演で聴くのはもうやめて、この『ウィミン・シング・ウェイツ』や、そのほかいままで散発的に女性でも男性でもカヴァーしているヴァージョンで、その世界を味わえばいいじゃないですか。聴けば、どんなヴァージョンがウェイツ・ソングをいきいきと聴かせてくれているか、曲が生きているか、よりよい音楽に聴こえるか、明白なんですもん。

 

(written 2019.12.26)

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