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2020/01/17

ニコスの仕事が光るアスパシアの『Filachto』

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https://open.spotify.com/album/6YZZAAceS7ChodoLfvVUym?si=m4gbx9AsSQaK6vRcdzXWDw

 

いやあ、それにしてもいいジャケットです。これまたいかにもギリシア歌謡というような、哀感あふるるニコス・サマラスとアスパシア・ストラティゴウのコラボ作『Filachto』(2019)。渋くて、こりゃ実にいいですね。エル・スール界隈とかでは大人気のはず。エル・スールといえばその HP でこのアルバムはアスパシア中心のコラボ作であるような書かれかたになっていますけど、本当はたぶんニコス中心なんじゃないかとぼくは思います。主役歌手であるアスパシアのほうに肩入れするのはじゅうぶん理解できますけれども。

 

いずれにせよ、このアルバム『Filachto』はかなりの充実作ですね。ジャケット絵がすべてを物語っていますが、この地味さ、落ち着き、渋さ、哀感など、ギリシア人でないと出せないもので、しかもそれは遠いレンベーティカ全盛時代からの遺産をいまでもしっかりと持っているからこそのものでもあります。このアルバムでは特に曲がいいですね。大半ニコスが書いているんじゃないかと思います。

 

ソング・ライティングのこのなんともいえない情緒感、たまりませんねえ。アスパシアの声もすばらしいんですけど、これはたぶんだれが歌ってもこんなフィーリングにしあがったであろうような、そんな曲づくり、アレンジのすばらしさを感じます。伴奏陣の演奏ぶりも充実しています。特に弦楽器アンサンブルの見事さなんかきわだっていますよね。

 

3曲目では打楽器の音が目立ちますし、その地中海的な?リズムもいいです。ちょっぴり北アフリカのセンスをこのリズムには感じないでもないですね。ギリシアと北アフリカ地域は地中海をはさんでいるだけでとなりあっているとも言えるわけで、文化的に相互影響があったことは歴史的に疑いえませんから。いままでもギリシア音楽に、たとえばヨルゴス・ダラーラスにアルジェリア音楽の痕跡が鮮明にあることを指摘してきました。

 

アルバム・タイトルになっている5曲目はオールド・レンベーティカからの流れをストレートに感じさせる曲で、これまたコンポージングがすばらしいんですね。アスパシアのヴォーカルもいいし、ニコスが弾いているであろう弦楽器のオブリガートもソロも見事です。曲のリズムもいい。この5曲目が個人的にはこのアルバムでの白眉で、大のお気に入り。やっぱりニコスのプロデュースぶりが光ります。

 

ニコスのプロデュースぶりが光っているのはこのアルバム全体で言えることなんで、曲づくりからアレンジ、伴奏陣の人選や起用法、演奏の際の指示、アスパシアへのヴォーカル指導など、なにからなにまで徹底していて、その結果あってのこの歌の出来具合なんでしょう。アスパシア個人が云々というより、そこにこそ賞賛を贈りたいと思います。

 

(written 2020.1.5)

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