古き良きセンバの味わい 〜 パトリシア・ファリア
https://open.spotify.com/album/0QU9B9gqhUTyqMKcB8elAV?si=fGkAxawbR0a1Zi3d0sb-_Q
アンゴラのパトリシア・ファリア。2019年の『De Caxexe』は、エル・スール入荷のもの(左 or 上)と Spotify にあるものとでジャケットが違いますが、それはままあることとして。中身はぼく大好きですね。かなりストレートなトラディショナル・スタイルのセンバで、もはや古き良きといってもいいくらいなもんですけど、こういうの好きなんです。エレキ・ギターの弾きかたなんか、完全に好みですね。打ち込みなしの人力演奏で組み立てられているところもオールド・スタイル・センバで、好ましいです。
1曲目から二本のエレキ・ギターのからみが心地いいですが、こんな感じでアルバム全体も続くんですね。いかにもポルトガル系というようなサウダージも随所に感じさせつつ、しかし全体的にはどっちかというと明るさ、陽気さのほうが目立つパトリシアのセンバ、聴いていて楽しくていいですね。ポルトガル系といいましたが、音楽的にはフレンチ・カリブを感じさせる(マラヴォワっぽい)曲もあったり、キューバン・ボレーロがあったりと、なかなかヴァラエティに富んでいるのもこのアルバムの特色です。
アルバム・タイトルになっている3曲目がもろストレートな典型的オールド・スタイル・センバで、ホーン陣も炸裂、かなり聴かせます。それになんたってこのリズムですね。も〜う、大好き、たまら〜ん!続く4、5曲目もそのままのスタイルですが、6曲目になってちょっと雰囲気が変わります。これがマラヴォワっぽいと上で書いたフレンチ・カリブふうな曲なんですね。まあ音楽的に関連はあるだろうというか、センバとそれは似てますけれど、これはおもしろい試みです。
こういったマラヴォワ・プレイズ・センバみたいな曲はほかにもあって、アルバム後半ではひとつの特徴になっているんですね。パトリシアも豪球で押すばかりでなく、そういった曲ではややゆるめに力を抜きながら歌っているのがわかり、曲想によって歌いかたを変えているんだなと思うと、それも好感触なんですね。
そうかと思うと、7曲目はなんとボレーロなんですね。こういうのがアンゴラの音楽家の、それも伝統的スタイルのセンバ・アルバムのなかで聴けるとは思っていませんでした。なかなかの変化球ですよね。ヴァイオリンも使われていたりしてそれが哀愁感をいっそう強めていたりして、工夫されています。この7曲目にセンバとかアンゴラふうとかいう部分は聴きとれない完璧なキューバン・ボレーロで、ボレーロ好きのぼくとしては頬がゆるみます。
アルバムはその後ふたたびセンバ一直線スタイルに戻り(といってもマラヴォワっぽいものやさわやか系バラードなどはあるけれど)、あ、そうですね、ヴァイオリンといえば17曲目のこれもストレート・センバなんですけどそれでヴァイオリンが使われています。センバでこんな感じのヴァイオリンが聴けるのはおもしろいですね。ここまで書いてきたもの以外は、どなたがお聴きになってもまごうかたなき直球センバ・アンゴラーノを感じるものだと思います。
(written 2020.1.4)
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