”あのころ”の空気感 〜 ザ・ジャズ・ディフェンダーズ
https://open.spotify.com/album/6GUCV6aQBQsteA3P0cmsh0?si=EIB5stN8QyaRYjb141DMVQ
萩原健太さんの紹介で知りました。
https://kenta45rpm.com/2020/01/09/scheming-the-jazz-defenders/
ちょっと大げさな名前のジャズ・ディフェンダーズ。英国のグループというかプロジェクトで、昨2019年末にデジタル・リリースされた(CD は2020年1月末発売)アルバム『スキミング』は、とても現在の新作とは思えないレトロさ加減。これ、1950年代後半〜60年代初頭ごろの、あのころの、ハード・バップ一直線なんですね。ジジイ趣味もいいところなんですけど、こういう音楽にある種の郷愁をいだく人間には文句なしに楽しいはず。
ジャズ・ディフェンダーズは英国のセッション・ピアニストであるジョージ・クーパー(31歳)が牽引するもので、彼がたぶんこの1950年代的ブルー・ノート・ハード・バップ再現を考えついて、メンバーを集めたんだと思います。編成はジョージの鍵盤(オルガンは彼の兼任か別奏者がいるのかわからず)を中心とするリズム・セクションにトランペット+テナー・サックスという、典型的ハード・バップ・コンボ。全員 UK スタジオ・ミュージシャンじゃないでしょうか。
もうね1曲目の「トップ・ダウン・トゥーリズム」からして笑っちゃいますよねえ。それくらいストレートでど真ん中の懐かしきハード・バップ路線。アルバム全体がそうなんですよ。収録の全10曲すべてジョージ・クーパーの書き下ろしだそうで、まだ31歳なんだけど、こういった音楽趣味があるのかなあ、ハード・バップは時代を超えた不変・普遍の音楽だということなのか、あるいは隔世遺伝でこそテイストが濃厚に煮詰められ純化されるということでしょうか。
アルバム・タイトルになっている3曲目「スキミング」はオルガンの音が聴こえるジャズ・ロック/ソウル・ジャズですけど、ほかにも9曲目の「シール・カム・ラウンド」も同傾向で、これらはハービー・ハンコック「ウォーターメロン・マン」(1962)やリー・モーガン「ザ・サイドワインダー」(63)からの直系遺伝子ですね。まさしくブルー・ノート・サウンド!
そう、ハービーとかリーとか、ソニー・クラークやドナルド・バードや、ホレス・シルヴァーとかアート・ブレイキー(ジャズ・メッセンジャーズ)とか、そういったラインナップがすぐ頭に浮かんでくるジャズ・ディフェンダーズの『スキミング』。ブルーズ・フォーマットを基調とし、ちょっぴりラテンなリズム活用だっていかにもですし、静水をたたえたような(かすかに新主流派ふうの)バラードだって美しく響きます。
惜しむらくは健太さんもご指摘のようにちょっぴりホットさが足りないっていうか、ぼく的には肝腎要の<なにか>がここにはないような気もするんですね。そこが時代的にもハード・バップ全盛期から遠く離れたひとたちがあえて似せてやっているだけという、ことばは悪いかもですけどフェイクもの、物真似にすぎない、とひとによっては聴くかもしれません。
それでも2019年リリースの新作ジャズでここまでやれれば、じゅうぶんオーケーですけれどもね。なにはともあれ聴いて楽しめるアルバムであることは間違いないです。ジョージ・クーパーのジャズ・ディフェンダーズが単発のプロジェクトなのか継続的に録音活動を続けてくれるのかは、いまはまだ不明です。
(2020.1.21)
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