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2020/02/19

槇原敬之を焚書するのなら、ビートルズやストーンズやマイルズも焚書しろ

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こないだ2月13日に槇原敬之が逮捕されました。覚せい剤取締法違反で。昨年は電気グルーヴのピエール瀧の件もありましたね。裁判で有罪判決がくだったピエール瀧とはちがって今回の槇原のばあいはまだ逮捕されただけで証拠はなし本人も否認している簡易検査でも陰性ということで、まだなにかを言うには早すぎると思います。推定無罪の原則も尊重しなくてはなりません。でもピエール瀧のときと同様のことが今回もくりひろげられるかもしれない可能性が示されつつありますので、やはりちょっと記しておきたいと思うんですね。

 

それは日本の音楽家が違法薬物で罪に問われたら、日本でだけだと思うんですけど、マスコミにあおられてレコード会社が盛大に自粛をはじめてしまうことです。発売済みのレコードや CD を一斉回収し、配信も全停止してしまうでしょう、これは実にバカらしいことだと思うんです。俳優が同様の罪に問われた際も出演作品がお蔵入りになってしまったりするのだって同じように愚かなことですが、ぼくにとって切実なのは音楽です。

 

音楽家が罪に問われて、それでその音楽家の全作品の流通を全停止してしまうなんてことは、はっきり言ってまったく抑圧的で有害なバカバカしい行為だからやめていただきたいと思います。今回の槇原のばあいも、またぞろ自粛祭りの狂態がくりひろげられようとしています(ただし Spotify など配信はストップしていない)が、いまにはじまったことじゃないんですね。昨年のピエール瀧の一件以来、電気グルーヴの音楽作品はこの世から抹殺された状態のままなんです。

 

こういったことはまっとうな処分でしょうか?意味のあることなんでしょうか?音楽家の違法薬物騒ぎそのものにはぼくはなんの興味もないというか完全に他人事で、まあ犯罪をはたらいたのであればそれ相応の刑事罰を受けるしかないとしか思えません。どんな犯罪内容だったのかどんな罰がくだる or くだったのかもネット・マスコミ報道以上のことをまったく知らないです。

 

だからそれはいいんです。問題はだれか音楽家が違法薬物などで罪に問われた際、その作品を一切合切闇に葬ってしまう、焚書してしまうのはオカシイだろうと言っているんです。法を犯したならその行為は法で罰せられる、これは当然です。しかしそのことで作品を全面抹殺してしまうのは異常です。なんらの法にも契約にももとづいていない、必要のない弾圧、示威行為にほかなりません。唾棄すべき慣習でしょう。音楽創造・制作と違法薬物とのあいだにはなんの関係もないんですよ。罪は罪、音楽は音楽であって、別のものとして分けて考えるべきです。

 

今回、槇原の一件が明るみに出た翌日に、さっそく某テレビ局は槇原が制作した番組テーマ曲を流すのを停止したそうです。もううんざりなんですが、笑ってしまったのは差し替えた音楽がビートルズの「ヒア・カムズ・ザ・サン」だったことですね。ビートルズの連中は違法薬物にかんしシロなんでしょうか?違法薬物関係で槇原の音楽を使えないなら、ビートルズだっていっさい使えないんじゃないですか?

 

ビートルズだけじゃないですね、ローリング・ストーンズだってエルトン・ジョンだってニルヴァーナだってだれだって、ロック/ポップ界の外に目を向ければボブ・マーリーだって、あるいはヘロイン常習者で、それをやめて以後もコカインを常用していたマイルズ ・デイヴィスの音楽はどうなるんです?マイルズの CD はショップに並んでいるじゃないですか。配信だっておおっぴらにまかり通っていますけど、これ、いいんですかね。マイルズは違法薬物常用者だったんですよ。チャーリー・パーカーなんか、もはや音楽史から名前そのものを抹殺しなくちゃいけないんじゃないですか。もちろんパーカーの音楽はいっさい聴けなくしなくちゃいけません。CD も配信もやめなくちゃ。かのサッチモことルイ・アームストロングだって麻薬常用者でした。

 

販売できる音楽なんか、なくなってしまいますよね。

 

つまりですね、その程度の無意味なバカバカしい行為でしかないんですよ、電気グルーヴにせよ槇原敬之にせよ、彼らの音楽作品の流通を止めるなんてのは。音楽家が(薬物で)逮捕されたら、レコードや CD、配信用の楽曲などすべてが流通停止になり、コンサートも中止、CM や他者への楽曲提供なども全面ストップ…、 ということがあたりまえだとされていて、だれひとりとしてその「理由」をつまびらかに説明することなどないんですけど、理由なんかないんだからそれも当然です。

 

麻薬中毒者だろうが(殺人者だろうが)、そのひとの創った音楽が楽しく美しくすばらしければ、それはひとの心を癒すいい音楽なんです。どんな善人の創る音楽でもつまらない作品のほうが音楽的にはよっぽど悪いです。いずれにせよ聴くか聴かないかはぼくらリスナーの選択なんで、問答無用に聴けない状態においてしまうのはかなりヒドいことですね。そこにはレコード会社の内輪のムラ論理しかなく、音楽家のことも購買聴取層のことも考慮されていません。

 

音楽文化先進国では、音楽家が違法薬物で罪に問われた、有罪判決が出たことで、その音楽作品が焚書されることなんてありえませんし、いままで一回もそんなことにはなっていません。「そのことじたいでは」作品の流通にも、ライヴ公演にも、まったくなんの影響も出ないんですね。もちろんがっかりしてファンをやめるひとはいるのかもしれませんが、それは個人的なことです。大手メディアが自粛圧力を盛り上げて、レコード会社が動いて云々…なんてのは日本だけでのことでしょう。

 

電気グルーヴの一件、そして今回はじまろうとしている槇原敬之の件。そこには正義もなく、音楽や芸能・芸術への、音楽家への、敬意もありません。もちろんいままで買い支えてきたファンへの感謝だって一片たりとも感じられません。文化への抑圧を、当の文化発信者であるはずのレコード会社がやってしまおうとしているんですから。そんなことをやっているから日本社会はどんどん根腐れしてきているんですよ。

 

(written 2020.2.18)

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