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2020/04/29

新世代女性ブラジリアン・ジャズ・シンガーズの潮流

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(5 min read)

 

https://open.spotify.com/playlist/3A0Tv2c8W1VH1dMttVuhVM?si=fqZstrYeQXGku9rGTbO-Dw

 

・ニーナ・ヴィルチ『ジョアナ・ジ・タル』2012
・ルイーザ・ソブラル『Lu-Pu-I-Pi-Sa-Pa』2014
・アンナ・セットン『アンナ・セットン』2018
・ジャネット・エヴラ『アスク・ハー・トゥ・ダンス』2018
・ルシアーナ・アラウージョ『サウダージ』2019

 

以前「似ている三人 〜 アンナ・セットン、ルシアーナ・アラウージョ、ジャネット・エヴラ」と題する記事を書きました。これら三人がある種の共通資質を持っているように思えるということでひとくくりにしてみたわけですが、それはボサ・ノーヴァなどブラジル的な要素も加味しながらのジャジー・ポップスをやる新世代シンガー・ソングライター、しかも若手女性ということだったんです。ひょっとしたらこういった一個のムーヴメント、新潮流みたいなものがあったりするのかも?と思ったんですね。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2020/01/post-57fc41.html

 

これら三人にくわえ、最近、同じく若手のルイーザ・ソブラルも見つけました。ルイーザも新世代ジャズ・シンガーと呼んでさしつかえない資質の持ち主で、ジャズやジャジー・ポップ、あるいはその周辺を基底としながら、軽くふわっと歌うような曲を書くという、この点で、アンナ・セットン、ルシアーナ・アラウージョ、ジャネット・エヴラに相通ずる資質の持ち主と言っていいでしょう。

 

やはりこれ、なんらかの新潮流みたいなものになってきているとみていいんじゃないかという気がしてきているんですね。個人的には、これら四人に出会う前からお気に入りのニーナ・ヴィルチ(ブラジル)もちょっぴり持ち味が共通しているような気もして、だからニーナも入れて女性五人で一個の集団というか動き、流れとしてとらえたいところなんですね。ニーナはソングライターじゃないですけどね。

 

それで彼女たち五人の個人的お気に入りアルバムを一枚づつ計五個、リリース順に並べて一個のプレイリストにしておいたのが今日のいちばん上のリンクです。五人ともポルトガル語圏にいるか、あるいはブラジル音楽要素が加味された部分も持っているというのが最大の共通項かもしれないですね。念のため書いておきますと、ニーナ・ヴィルチはブラジル人、ルイーザ・ソブラルはポルトガル、アンナ・セットンはブラジル、ジャネット・エヴラはイギリス/アメリカ、ルシアーナ・アラウージョはブラジルです。

 

これら五人は大きく分けて、ニーナとルシアーナのブラジル色濃厚勢とそれ以外のジャズ勢との二つになるでしょう。ニーナもルシアーナもブラジル人にしてサンバなどローカルな音楽要素も色濃く持っていて、それを活かしながらキュートでコケティッシュに、そんでもって最終的には(ブラジル・ローカルとは限定されない)普遍的なポップネスを獲得しているとぼくには聴こえます。

 

ニーナの『ジョアナ・ジ・タル』は既存の有名サンバ楽曲のカヴァー集で、ルシアーナの『サウダージ』には書き下ろしの新曲が並んでいますが、どちらも土着色はさほど濃くもなく、もっとあっさりさっぱりした味つけで料理してあるのがいいですよね。リリース年でいえばニーナのそのアルバムが2012年とすこし前ですが、2010年代以後的な、世界に通用する普遍性を獲得できているなと思うんです。

 

それから、これはルイーザやアンナやジャネットにも言えることなんですが、彼女たちは声がいい。かわいくてチャーミングですよね。なかではジャネットの声の資質だけがちょっと違うっていうか深い落ち着きをともなっているなと思いますが、だいたい五人とも声や歌いかたにおだやかさ、+ユーモラスな味をも持っていて、それでいてその味はしつこくなく、さっぱり乾いていると感じられるところが好感度大です。

 

ジャネットの書き歌う曲にブラジルのボサ・ノーヴァ色がかなりあるというのはお聴きいただければわかると思うんですが、あくまでイギリス/アメリカ人のやるボサ・ノーヴァなんで、サウダージみたいなセンティミエントはほとんど感じられないですね。このことはルシアーナみたいなブラジル人歌手についても実は言えることで、土着色はどこまでも薄いんです。そういったところが彼女たちをひとくくりにできる新世代感覚かもしれません。

 

アンナあたりになれば、ブラジル人歌手だけどローカル色なんてほとんどないですよね。なにも知らせずにアルバム『アンナ・セットン』を聴かせれば、ポルトガル語で歌っているという部分以外にブラジル色は感じられない、皆無だ言うひとが多いはず。しかしですね、ぼくが聴くと、あたかも裏ごしされたかのようなとでもいうか、ほぼわからない程度にまで換骨奪胎されたというか、ブラジリアン・ポップスの味がほんのり漂っているように思うんですよね。

 

つまりだから、これら五人の女性歌手の全員がポルトガル語圏の音楽にベースを置きながらも普遍的なジャズ・テイストとそれを土台にしたポップネスに至っていると思うんです。きわめて聴きやすくスムースに響きますしね。21世紀的な新世代の音楽性、新感覚のソング・ライティングとシンギング、新世代ブラジリアン・ジャズというかアメリカン・ブラジリアン・ポップスとでもいうか、そんな音楽性に彼女たち五人はたどりついているんじゃないですかね。

 

(written 2020.3.15)

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