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2020年5月

2020/05/31

ジョージ・ウォリントンをちょこっと

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(3 min read)

 

George Wallington / Jazz For The Carriage Trade

https://open.spotify.com/album/6VxSLXE8OajuzpzDCBAt3E?si=Q8irIcs1Tu2mJjibPTV9JQ

 

30年以上ぶりくらいに聴いたジョージ・ウォリントンのプレスティジ盤アルバム『ジャズ・フォー・ザ・キャリジ・トレード』(1956)。ジャケットが好き、中身も好きで、そのむかし愛聴盤だったのは、この音楽のなんとなくオシャレな雰囲気と、それからぼくはフィル・ウッズのアルト・サックスのファンなんで、だからそれも気に入っていたと思うんですね。アート・テイラーの軽いビート感も好きでした。

 

このアルバムだと、たとえば1曲目(タッド・ダムロン)、2曲目(ジョージ・ガーシュウィン)と流れもいいですよね。音楽的にはビ・バップ寄りかなと思いますが、ちょっぴりハード・バップの香りもします。1956年ですからちょうどハード・バップが完成に向かっていた時期で、ウォリントン自身はどっちかというとビ・バッパーでしょうけど、このクインテットはもうちょっとモダンです。

 

1曲目のタッド・ダムロン「アワ・ディライト」が本当に調子よくて、この演奏のこのスウィング感が大好きなんですけど、むかしいちばん聴いていたのはこのなんとなくのムード、雰囲気だったんですね。これがモダン・ジャズだっていうような、しかもむずかしくもない、聴きやすくオシャレな感じもするっていう、そんなふうにただよう空気感を楽しんでいました。懐かしいなあ。いま聴いてもそんな心持ちが鮮明によみがえってきます。

 

それで「アワ・ディライト」でもそうなんですが、フィル・ウッズのアルト・サックスのこの音色、なんといったらいいのか、ちょっとジーン・クイルなんかにも通じるこの湿った塩辛いサウンドがぼくはたまらなく好きで、1956年だとウッズはちょうどライジング・スターといったところだったでしょうけど、チャーリー・パーカー直系にしてパーカーとは異なるムードをぼくはむかしから感じとっていたんですね。パーカーのサウンドは透徹していて乾いていますが、ウッズのそれには適切な湿り気があります。

 

2曲目のジョージ・ガーシュウィン「アワ・ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ」でもそんなウッズのアルトが活躍、雰囲気をもりあげてくれます。個人的にはこのガーシュウィン・ナンバーそのものが好きで、だれがやったどんなヴァージョンでも気に入ってしまうくらいなんですけど、それはたぶんこのメロディの動きが好きだからいうことなんでしょうね。都会的なムードをそこに感じます。ここではウッズとドナルド・バード二管をからませるアレンジもオシャレでいいですね。

 

アルバムにはもう一曲スタンダードがあります。そのバラード「ワッツ・ニュー」では、基本ウォリントンのピアノを楽しむものでしょう。その後ウッズとバードも出ますが、大半はピアノ・トリオ演奏です。個人的にはイマイチでしょうか。このアルバムでは管楽器が聴こえる時間の方が好きですから。だから、ウッズの書いたオリジナルである4曲目「トゥゲザー・ウィ・ウェイル」なんかはかなり聴けますね。曲題からして管楽器二本をフィーチャーしているんだなとわかるでしょう。やはりウッズのアルトが快調です。

 

(written 2020.4.9)

2020/05/30

Spotify のライブラリ保存数量制限が解除されました

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(5 min read)

 

https://community.spotify.com/t5/Community-Blog/Save-save-save/ba-p/4963349

 

この2020年5月26日の報道にありますように、音楽ストリーミング・サービスの Spotify はライブラリに音楽を保存できる10,000アイテムの制限を解除したようです。ユーザーはお気に入りの曲やアルバムを数の制限なく自由にライブラリに保存できるようになりました。これはかなり大きなことですよね。いままでずっとリミットがありましたから。

 

このことは、きのう Spotify にこういう点を改善してほしいという記事を書いたとき入れておいた項目です。実を言うと Spotify を使いはじめた2017年ごろ、いちばんイライラしていたのがこのライブラリへの保存数量制限でした。だってね、CD をどんどん買っては次から次へと iTunes に登録する、それでライブラリを聴くというのと同じことを Spotify でやりたかったわけですから。

 

iTunes に登録したものはアルファベット順に並びますから、ライブラリが膨大になっても探すのは楽チンです。それでずらーっと並んでいて一個のまとまったライブラリになっていればなにかと便利ですし、把握しやすいというか、正直に言えば「これが自分のライブラリである」という一種の安心感みたいなものにつながっていたわけなんですね。ところが Spotify ではそれができなかった。保存数の上限数がかなり小さかったですから。アルバムにして100か200かそこら保存したらもうたちまち「おお、epic library だぞ、もう保存できんよ」みたいなふざけたことを言われていたんですから。

 

アルバム数にして100か200かそこらなんて、とても小さいサイズですよね。そんなもんしか Spotify はライブラリに保存できなかったなんて、いままでがあまりにもあんまりでした。だから Spotify のライブラリは実質いままで使いものにならなかったんです。保存数の上限がかなり小さいということを知って、どうにもならないとわかって以降のぼくは、気になる音楽アルバムがあっても、いっさい保存しなくなっているんですからね。

 

保存しない、自分のライブラリに入れない、ということはすべてが Spotify の無限混沌の大海のなかにあるままだということで、目的の音楽を見つけるために検索が日常茶飯になっておりますね。ライブラリに登録しないということはどういう気になった音楽家やアルバムがあるか(一覧として)目で見てわからないということですから、ぼくはメモを欠かさないようになりました。

 

Spotify ライブラリに保存できないわけですから、ノート・アプリの Bear に気に留めた音楽家名やアルバム名を気になった瞬間に速攻でメモしておくようになり、そのメモ一覧がいわば図書館の目録みたいなものになっています。それを眺めて、さぁなにを聴こうかな、これにしようかなと、そのままコピペして Spotify で検索してたどりついています。

 

こういったプロセスは、Spotify が最初からライブラリ機能をちゃんとしていれば必要なかったことです。やむにやまれず思いついた手段なんで、iTunes を活用していた時代と同じように、膨大なサイズのアルファベット順に並ぶライブラリを一覧できればそれがいちばんやりやすい方法だったことに違いありませんよね。

 

それがようやく Spotify でできるようになったということで、しかし個人的にこのライブラリの無制限機能を利用するかどうか、どうもあやしいんじゃないかと思います。と言いますのはもはやすっかり諦めて次善の策を実行することが完全に板についてしまっているからなんです。いまさら…、との思いが強いんですよね。できうれば Spotify には最初からこの制限はかけないでほしかったと思います。そうだったなら、なにも思い悩んで策を練る必要もなかったはず。

 

しかしながらそれでも歓迎すべき機能変更であることは間違いありません。ぼくだってこれから使っていくうちに気が変わって、ライブラリにどんどん保存していくようになるかもしれませんし、一般的なユーザーのみなさんにとっては大きく利便性が向上したということですから、これからまた Spotify が使いやすくなっていくんじゃないかと思います。

 

(written 2020.5.28)

2020/05/29

Spotify のここを改善してほしい

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(これは今年四月に書いた文章です、5 min read)

 

Spotify の使い勝手にもいろんな不満があります。毎日毎日ずっと10時間以上も使っているものだから、いっそう気になるんですね。今日はちょっとそれを列挙してみたいと思います。たくさんあるんですけど、特にひっかかっているものだけにしぼります。

 

(1)まずもって、CD を買う代わりに Spotify で聴いている人間にとって、それは電気とかガスとか水道のような公共インフラみたいなもんなんですから、たまにですけど音楽再生そのものがうまくいかないなんていう事態におちいってはこちらの命にかかわります。

 

Spotify で音楽を聴くのもインターネット活動ですから、だからたまに不具合が出てしまうのはさけられない、やむをえないのだとは思いますし、個人的には Spotify がダメなとき Music アプリで聴いたり CD で聴いたりできますけどね。でもメインは Spotify なんですから、お願いしますよ。

 

(2)これに関連して、アルバムや曲によって、以前は再生できたのに今はグレー・アウトしていて聴けないとか消えたとか、そんな事態がときどきあるのも困ります。放っておいたら復活したりもしますが、消えたままのものもあり。たとえば2020年2〜3月ごろ『ヒバ・タワジ 30』が消えていました(現在は復活しています)。

 

(3)これも再生できるできないに関係ありますが、インターネットで聴いているから仕方ないんだとはいえ、ときどきレコード盤の針飛びみたいな再生不良が発生するのにもイライラします。しかしこれはぼくの使っているネット回線の安定具合の問題なのか、AirPlay のせいか、Spotify 側の問題か、切り分けがむずかしいですね。

 

(4)ライブラリに保存できるアルバムの数に上限があって、たくさん保存していると「epic library ですよこれは」などというふざけたアラートが出て、それ以上保存できないのも悩みです。Spotify でどんどんアルバムを保存するのは、ぼくのばあい CD をどんどんコンピューターにインポートするのと同じ感覚でした。

 

つまり要するに自分のライブラリに入れたいからということなんですけど、Spotify だと一定以上数を超えては入らないんですね。そんなに Spotify のサーバーに負担がかかるものなんでしょうか?感覚的にはアルバムにして100個か200個かそこら入れたらもうそれ以上保存できないといった程度なんだから困っちゃうんですよねえ。

 

自分のライブラリに置いておけばアクセスしやすいから、と思うんです。そうしなかったら無限の大海に素手で挑むようなもんで、こりゃどうなんですか。とにかく「巨大なライブラリだ」と(そんなにデカくないのに)、それ以上はどれかを削除しないと入らないと言われ、困り果て、最近ではまったくなにも保存しなくなりました。

 

で、自分のライブラリに入れておいてアクセスするというんじゃなくて、なにも保存せず、聴きたいときは検索して出す、というやりかたを最近はしています。どうやらこれしかないみたい、というかこれが Spotify の使いかたなのかもしれませんよね。

 

(5)何年リリースの作品というのが表示されますが、その年数がオリジナル・リリース年かリイシュー年かバラバラで一定していないのも問題です。最近の新作はリリース年が記されていますが、一方たとえばモダン・ジャズの過去の名作アルバムみたいなものは、オリジナル・リリース年が書かれてあることもあればリイシュー年が記されてあるばあいもあって、困っちゃうんですよね。

 

Spotify の年数表記がアテにならないもんだから、過去の名作みたいなもののオリジナル・リリース年(はとても重要)を知りたいときは、やっぱりネットで検索するしかないんですよね。Spotify に記されてあるリイシュー年は、しかも一回目の CD リイシュー年だったり、リマスター盤その他の(何回目かの)リイシュー年だったり、本当にバラバラなんです。困りますよ。

 

(6)ギャップレス再生をオンにしていないと、たとえばライヴ・アルバムを再生するときは一曲ごとに一瞬の無音が入ってイラっとするんですけど、しかしこの設定をオンにしたままだとスタジオ録音作だって曲間なしになって続けてどんどん次の曲が流れきて、それも違和感があるんですよね。曲間の無音時間の長さを設定できますが、ライヴ・アルバムをよく聴きますからこれはゼロにしておくしか手がないんです。アルバムをチェンジするたびに設定変更するなんて現実的じゃないですからね。

 

(7)アルバムには出ているんですけど、プレイリストにすると曲数カウントと曲の再生時間が出ません。これはかなり問題ですよ。いま何曲目?で把握しているばあいも多いのにそれがわからなかったり、一曲の長さがわからなかったりすると、聴く際に不便です。

 

(8)アルバムなどのジャケット・カヴァー(と音楽家名とアルバム名)は、再生中、ずっと常に見えている状態が望ましいと思うんですけど、Spotify では下のほうの曲名を見ようと思ってスクロールしていくと、ジャケットまでスクロールされて見えなくなっちゃうんです。アルバム名だって見えなくなるんで、これは問題でしょう。ジャケットをずっと眺めながら聴くんですからね。

 

(written 2020.4.12)

2020/05/28

スモーキーなジリアン・カニサーレス

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(4 min read)

 

Yilian Canizares / Erzulie

https://open.spotify.com/album/6Q3O4s7xCg085VVR8ShHyo?si=p3k8xhjjTSOKGAhXWAT8qQ

 

ジリアン・カニサーレス(Yilian Canizares)はスイスに住むキューバ人ヴァイオリニスト兼歌手。その2019年作『Erzulie』はジャケットでまず惹かれました。録音はアメリカ合衆国のニュー・オーリンズで行われたとのことで、現地のアメリカ人ミュージシャン、特に先鋭的なジャズ・ミュージシャンも多数参加している模様です。

 

アルバム1曲目はタイトルどおりアバネーラで、これはゆったりとしたゆるやかな官能が漂うなかなかいい一曲ですね。こういうのはいかにもキューバ人らしいと言えますが、そのいっぽうでヨーロッパ的なデカダンスと緊張感も強い曲と演唱で、キューバのアバネーラってもとはもっとおおらかなものだったように思いますから、まるでコンティネンタル・タンゴみたいに仕上がったこのジリアンのアバネーラは、やはりスイスに住むこのひとならではというところなんでしょう。

 

こういったちょっと退廃的なムード(タンゴ的?)のあるスモーキーな曲はアルバムにわりとたくさんあります。大別してリズムが活発なラテン・ナンバーとゆったり調に漂っているような曲と半々になるなと、このアルバムはそうだと思うんですけど、後者のほうは雰囲気を味わうだけみたいなもんで、込められた情感はなかなかいいなと思うものの、個人的にはイマイチ。

 

やはり快活にグルーヴするラテン・ナンバーでジリアンがヴァイオリンを激しく弾き倒しているようなものがグッと来ます。その意味では2曲目の「コントラディクシオーネス」なんかもかなりいいですよね。ドラマーとベーシストはだれなんでしょう?ちょっぴりジャジーな、でもキューバっぽいフィーリングの、ファンキーなビートを生み出していて、その上にジリアンの情熱的かつジャジーなヴァイオリン・ソロが乗っかっています。スキャット・ヴォーカルもあり。う〜ん、特にドラマーが気になるなあ。

 

3曲目「ジェマヤ」はふわっとはじまりますが、途中からビートが効いてきます。パーカッショニスト(コンガ)も入ってきたらいよいよグルーヴィ。ヒプノティックなビートに乗るジリアンのヴォーカルは、それでもやっぱり雰囲気重視のムーディなものでガツンと来ませんが、曲はなかなかいいんじゃないでしょうか。印象としてはヴァイオリン演奏のほうがヴォーカルよりも聴きごたえあるひとだなと思います。

 

4曲目はアルバム・タイトル曲。中盤からドラマーの重たいビートが入ってきますが、これはイマイチですね。サウンド・メイクがスモーキーで、なんといったらいいか、うん、雰囲気一発で聴かせるというかなんとなくムードにひたっていればいいっていう、そんな音楽ですよね。悪いとは思わないんですけど、ぼくの好みではありません。このアルバムにはそんな曲多いんです。

 

その後アルバム中盤は、折々に聴きどころもあるものの、全般的にそんな雰囲気だけサウンド・メイクが続きますからこりゃちょっとう〜んと思っていたら、8曲目「シマロン」が格段にグルーヴするナンバーで、こ〜りゃいいですね。激しいビートに乗って、ジリアンのヴァイオリン&ヴォーカル・ハミングとのユニゾンでラインが進みます。こういうビートの効いた音楽が好きなんです。スペイシーなエレキ・ギターも気になりますね。12曲目「リベルタード」はファンク・ナンバーっぽいグルーヴ・チューンで、これも聴けます。

 

(written 2020.4.8)

2020/05/27

レゲエでモンク 〜 モンティ・アレクサンダー

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(4 min read)

 

Monty Alexander / Wareika Hill Rastamonk Vibrations

https://open.spotify.com/album/5HRe40l8IrYnRX4P3i0A85?si=JwXlequcRSO5rop0rcdw_g

 

bunboni さんに教えていただきました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

 

ジャズ・ピアニスト、モンティ・アレクサンダーはジャマイカ生まれ。だからなのか、事情は上掲 bunboni さんの記事でくわしく触れられてあるのでお読みいただくとして、2019年作『ワレイカ・ヒル・ラスタモンク・ヴァイブレイションズ』がとても楽しいですよ。ぼく的には傑作と呼びたいほど痛快な内容で、なんとセロニアス・モンクの楽曲をレゲエ・アレンジでやっているんですね。本当に楽しいんです。

 

聴いてみたら、モンク楽曲とレゲエ・リズムの相性のよさに驚きますね。モンクのコンポジションってもとからちょっとクスッと微笑むようなチャーミングなユーモア感覚があったと思うんですけど、レゲエに解釈することでそれがいっそう際立っているんですね。アルバムではオープニングとクローザーにちょっとしたトラックが置かれていますが、冒頭それに続く「ミステリオーソ」から愉快です。

 

このアルバムでは、メンバーはたぶんピアノ、サックス、ギター、ベース、ドラムス、パーカッションでしょうか、なかでもぼくはモンティ自身の弾くピアノがたいへんに気に入りました。ふだんはわりと華麗に弾きまくるタイプのピアニストですけれど、ここではモンクをやっているからなのか、モンク(やその師匠のデューク・エリントン)の打鍵スタイルに寄せていっているような感じですよね。

 

前半、「ミステリオーソ」「ナッティ」「バイ・ヤ」など有名曲が続きますが、どれもテーマはサックスとピアノのユニゾンで表現されています。リズムがレゲエなおかげで、モンクの書いたメロディの持つ愛らしさ、近寄りやすい親近感、キュートなチャーミングさが際立っているなと聴こえるんです。レゲエのリズム・スタイルって、たぶんもとからそういった身近なフレンドリーさをまとっていると思いますが、いっぽうでモンクの楽曲はどっちかというと高踏的で近寄りがたいと思われてきたんじゃないですか。

 

ところがモンティのこのアルバムで聴けば、とりあげられているモンクのどの曲もまるでやさしくほほえんでいるかのような、気のおけない友人とリビングでコーヒーでも飲みながら雑談しているような、そんな親しみやすい日常の空気感をまとっているなと思うんですね。ソロでも、サックスのそれはそうでもないかもですが、モンティ自身のピアノ・ソロでは似たようなフレンドリーなタッチというか表現を、特にブロック・コード弾きで、していますよね。

 

ぼくだってモンクの曲にはやや気高いオーラみたいなものをむかしから感じとっていて、だからこそ好きだというのがあったんですけど、モンティのやるレゲエ・ヴァージョンでなら本当に身近な友人といった、そんな音楽性をモンクの曲に感じて、認識を新たにしました。しかも演奏はなんだか文句なしに楽しいでしょう。メインストリームな4ビート・パートがまじっている曲もありますが、それもユーモラスで親しみやすく感じるから不思議です。

 

アルバム後半の「ブリリアント・コーナーズ」「ウェル・ユー・ニードゥント」「ベムシャ・スウィング」など、いずれも名の知れたスタンダードになっていますが、やはりレゲエにすればだいぶん味わいが違います。ユニークなのはモンクの曲だからそうですけど、ユーモラスでフレンドリーに化けていて、キュートで愛らしい表情すらモンティは引き出していますよね。

 

ピアノのタッチもイキイキと躍動しているし、このアルバムはジャズ・ファン、モンク好きといった方向よりも、むしろいままであまりジャズに親しんでいなかった、モダン・ジャズ楽曲はとっつきにくいと敬遠していた、そんなひとたちにも歓迎されそうな、ポップな表情を見せているなと思います。

 

(written 2020.4.6)

2020/05/26

ワン・コーラスの美学 〜 ウィントン・マルサリス『スタンダード・タイム Vol. 3』

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(6 min read)

 

Wynton Marsalis / Standard Time Vol.3: The Resolution of Romance

https://open.spotify.com/album/3ggRodyIM1r04IT4K3Ikho?si=67z4UQ6nRTOWOxPjX0BWjg

 

ウィントン・マルサリスには「スタンダード・タイム」と題したアルバム・シリーズがありますが、いちばん好きなのが1990年の『スタンダード・タイム、Vol. 3:ザ・リゾルーション・オヴ・ロマンス』。っていうかこのシリーズでもほかに楽しめるものがあるのだろうか?というのが正直なところですけど、全般的にイマイチおもしろくないウィントンの評価などもふくめ、今日はさておきます。この『Vol. 3』はいいんですから、そのことだけ言えばオーケー。

 

編成はワン・ホーン・カルテットで、当時のウィントンのレギュラー・メンバーからベース(レジナルド・ヴィール)とドラムス(ハーリン・ライリー)だけ起用して、ピアノを父エリスに設定したのもこのアルバムが成功作になった大きな要因だと思えます。実際、エリスはベテランらしい控えめかつ堅実な演奏ぶりで、ツボを決して外さず、ときにリリカル&華麗に弾いたりと、緩急を心得ていて、実に好感が持てますね。

 

ウィントンもふだんの派手な表情や大上段にふりかぶったような気負いがなく、エリスのおだやかなピアノに触発されたか抑制の効いた落ち着いた吹奏ぶり。音色からフレイジングからしっとりして丸いっていうのがこのアルバムでの特徴なんですね。演奏時間をだいたい2〜3分程度内におさめてあるのもちょうどいい按配で、聴きやすく、曲そのものをストレートに演奏することにつながって、本当にすばらしいです。

 

ウィントンはストレートなオープン・ホーンでだけでなく、アルバム・ジャケットに写っているように各種ミュート器を曲によって使い分けているのも聴きどころ。多彩な音色で楽しませてくれます。また、とりあげるスタンダード曲も快活調のものを避け、ほぼバラードばかりにしぼってあるのだって大きな成功因ですね。エリスのリリカルなピアノがそれによく似合っていますし、ふだんからどうもグルーヴしないウィントンのトランペットもバラードなら上々です。

 

そしてこのアルバム最大の美点は、ウィントンがだいたいどの曲でもテーマ・メロディだけのワン・コーラスしか演奏しないっていうところにあるんです。アド・リブ・ソロを吹く曲がまったくないわけじゃないですが、ほぼなしとしてさしつかえないんじゃないですか。ソロはエリスのピアノに任せてあるんですね。このアイデアが奈辺から来たものかわかりませんが、ふだんは吹きすぎのウィントンにしてワン・コーラスのテーマ・メロディだけに限定したのがちょうどいい抑制美につながっているように思え、好感が持てます。

 

とりあげている曲のなかにはこのアルバムのために書いたウィントンのオリジナルも三曲だけあるとはいえ、ほかはすべてよく知られたスタンダード・バラードばかり。美しいメロディを持つことでは上に出るもののない極上品ばかりです。だから、ウィントンとエリスやコロンビアの製作陣は、そんな美しいメロディを最大限にまで活かして聴き手に届けようと考えたんじゃないでしょうか。

 

たとえばこれはウィントンのオリジナルですが出だし1曲目の「イン・ザ・コート・オヴ・キング・オリヴァー」。バラードと言いにくい曲調ですけど、ウィントンはやはり書いたテーマ・メロディしかほぼ吹いていないでしょう。あいまにエリスのピアノ・ソロがはさまっているだけです。アルバムのどの曲もそんなマナーで進むんですね。

 

聴くたびにうっとりしてしまうのが2曲目のスタンダード・バラード「ネヴァー・レット・ミー・ゴー」。オープン・ホーンのきれいな音色でウィントンはワン・コーラスだけ、テーマ・メロディだけを、ただひたすらていねいに、美しく、吹き上げるだけ、それだけなんですね。そしてそれだけでこの1分44秒のトラックぜんぶなんですね。な〜んてすばらしいのでしょうか。こんなにきれいなトランペット演奏、バラード吹奏は滅多に聴けるもんじゃありません。ため息がでますね。

 

冒頭のエリスのピアノ弾き出しもキラめいていてステキな4曲目「ウェア・オア・ウェン」。ここでもウィントンが演奏するのは決められたテーマ・メロディだけなんです。そのワン・コーラスの演奏だけでトラックができあがっています。その他だいたいどの曲でもそうで、たったワン・コーラスだけ、美しいスタンダード・メロディを心を込めて、ていねいにやさしくおだやかに、ただそれだけをウィントンは実行しているわけなんです。

 

それでこんなにみごとなアルバムに仕上がっているんで、ひとつにはもとから曲のメロディが美しいから、つまりむかしからあるスタンダード楽曲がすぐれているから、というのがあります。くわえて、それをフェイクせず、ただストレートにそのまま演奏するだけただそれだけ、っていうウィントンの姿勢にも共感をおぼえますね。できあがりのこのアルバムを聴けば、もう絶品だとして称賛するしかないんですから。

 

そんなウィントンの円熟の吹奏ぶりをサポートするエリスのピアノ演奏も好感の持てるもの。ムダな音がなく、要所だけを着実に押さえていくといったベテランならではの味がありますよね。このアルバムの、ある意味では主役であるとも言いたいほど。そして、アルバムにはウィントンが吹かないピアノ・フィーチャー・ナンバーが数個あるんです。

 

7曲目「ア・スリーピン・ビー」はピアノ・トリオ、10「アイ・カヴァー・ザ・ウォーターフロント」の前半もトリオ演奏で、ビル・エヴァンズで有名な12「マイ・ロマンス」とラスト21「イッツ・トゥー・レイト・ナウ」の二曲は無伴奏ソロ・ピアノなんです。しかもそれらはどれもチャーミングでキュートな小逸品でしょう。

 

特にアルバム・ラストの「イッツ・トゥー・レイト・ナウ」。同じく独奏の「マイ・ロマンス」もそうですが、ここでエリスもワン・コーラスしか弾かないんですね。そんなやりかたで、もとの曲の持つメロディの美しさを最大限にまで引き立てているんです。原旋律を(ウィントン同様)崩さずそのままストレートに弾くエリス。「イッツ・トゥー・レイト・ナウ」ではメロの切なさに、特にサビ部分で、聴いていて感極まって泣きそうになっちゃいますね。

 

(written 2020.4.5)

2020/05/25

テレビなしの音楽だけ生活

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(4 min read)

 

上の写真で見られますように、ぼくがいつもすわっている部屋にテレビ受像機はありません。2015年の12月にケーブルを外し、機器を押入れにしまいました。その後一度も出したことがないんですね。部屋にいるときのふだんのぼくは、ずっと音楽を聴きながら、うん、それは途切れないんですけど聴きながら、ときどきそれに集中したり、あるいはながら聴きでネットをやったり本を読んだりっていう、そんな生活を送っているんですね。

 

特に音楽を聴くということですね、これは長時間のプレイリストなどをただぶらぶら流し聴きにするにせよ、一個一個アルバムをピック・アップして集中して耳を傾けるにせよ、とにかくなにを聴くか自分の意思で選びとっているわけです。テレビみたいに電源入れたらどこかの局のなにかの番組が自分の意思とは関係なく流れてくるというような状態は、音楽にはありません。

 

この「自分の意思で選びとっている」という行為の持つ意味がかなり大きいなとぼくは感じています。流されるまま入ってくるままというテレビ聴取とは違うということです。もちろんテレビだってふだんは電源をオフにしておいて、この番組だけは観たいという選択意思で点けるといったやりかたは可能ですし、そうなさっているかたもたくさんいらっしゃるでしょう。

 

ぼくのばあい、観る番組がなにもないということになって、見える場所に物体だけ電源入れないまま置いてあるというのがジャマに感じるようになったのでどけたわけです。その二年後にわさみんこと岩佐美咲と出会い、テレビの歌番組出演がちょっとはあるということを知りましたが、べつにいいかなと思っていることが多いですね。どうしても観たいときは家電量販店に足を運んでいます。それにしばらく経てばネットに上がることも多いですし。

 

とにかく、自分の意思とは言えないものでダラダラ流れているものが目や耳に入ってくるというのはもうイヤなんですね。テレビってそんなものじゃないですか。音楽を聴くのは自由意志による選択行為だから、みずからすすんでそれを選びとって実行するということにぼくは意味を見出しているわけなんです。自由意志で選ぶ、なにをどの音楽家のどのアルバムを聴くか、決めて、再生ボタンを押すというその行為が尊いことだなあというのが最近の気分なんですね。

 

こういったことは日常生活で鮮明に意識しておかないとできないことですね。CD だと可視物体ですけど、それもこれを聴こうとチョイスすることですし、CD じゃないストリーミング・サービスで聴く(というのがぼくのばあい九割です)のならなにも目に見えませんから、どれを聴くかという選択行為に、よりナーヴァスにならざるをえません。でもそれが心地いいんですよね。

 

目に見えない、CD みたいな物体がない、ということですから、なにも皆目わからないまま Spotify なりの無限の大海に向かっているわけで、だからとっかかりとしてぼくは最近メモを欠かさないようになりました。これはおもしろそう、あとで聴いてみよう、これはどんな音楽家だろう?どんなアルバムだろう?どんな音が出てくるんだろう?みたいなことが頭にのぼった次の瞬間にノート・アプリにそれをメモしています。使っているノート・アプリは Bear。

 

そんな発見の瞬間も絶え間なく音楽が鳴っているわけだからそのまますぐ気になったものに移行できないせいでもあるんですが、いわばブックマークするようなものですね。Spotify でも Apple Music でもブックマーク機能はないはずなので(あるならぜひ教えてください)、気になった音楽家名、アルバム名を Bear にメモしておいて、あとで見なおすということになっているんですね。そうしないと、どんどん情報が来るしどんどん聴いているから、放っておいたら忘れたりわからなくなってしまいます。

 

時間ができて、さぁ次はなにを聴こうか?となったときにそのブックマーク一覧みたいなものを眺めて、選んで、決めて、再生しているということなんです。ぼくの毎日はそうやってテレビなし、音楽(とネットと読書)だけで過ぎていきますが、いずれにせよテレビを観なくなって音楽だけになって、イライラしたりストレスがたまったりもなくなったし、いいことだらけですね。

 

(written 2020.3.18)

2020/05/24

都会的なジュニア・パーカー

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(5 min read)

 

Junior Parker / Mr. Blues

https://open.spotify.com/album/6dL0V0efzoNS1UtNrwxWaD?si=xdQMcT2dT82aaP3oCHgVEA

 

Spotify でブラブラしていてたまたま出会ったジュニア・パーカーのアルバム『ミスター・ブルーズ』。聴いてみたら楽しかったのでこれの話を今日はしますが、これはいったいなんでしょうかね、コンピレイションというかアンソロジーには違いないわけですが、2012年となっていますから近年に編まれたものなんでしょうか。ジュニア・パーカーは、基本、単発録音ばっかりなんで、こういった編纂ものがいくつもありますよね。

 

ジュニア・パーカーの録音にかんしては、Wikipedia ページが全シングル盤録音を列挙してあってとっても便利なので、ぜひご参照ください。パーソネルなんかはわからないんですけど、1952年から74年までのすべてのシングル盤について、年数とレーベル、レコード番号も明記されています。このブルーズ歌手について、こういうディスコグラフィはネット上にほかにないはず。
https://en.wikipedia.org/wiki/Junior_Parker

 

さて、Spotify で聴くアンソロジー『ミスター・ブルーズ』ですけど、ジュニア・パーカーってやっぱりこの声のトーンに特徴がありますよね。ゴージャスっていうか豊かな感じがします。でもってブルージーというよりもソウルフルで、やわらかく都会的に洗練されていますよね。このひとはメンフィスで活躍したブルーズ歌手なんで、そういった土地柄も音楽に反映されているんだなと思います。

 

アルバム『ミスター・ブルーズ』は、ブギ・ウギ・ベースのジャンプ・ブルーズ「アイル・フォーゲット・アバウト・ユー」で幕開けしますが、こういった音楽はまぎれもなく都会のものです。ジュニア・パーカーのこれでもホーンズが炸裂。当時は生演奏の管楽器隊ですから、それなりにお金もかかっているわけです。シカゴ・スタイルでのジュニア・パーカー自身のハーモニカもいい感じです。ジャジーなフィーリングすらありますよね。

 

こんな路線がその後も続くわけですが、4曲目の「フィーリン・グッド」でオッ!となるんじゃないでしょうか。これはちょっと泥くさくイナタいフィーリングも感じられるブギ・ウギで、たぶんジョン・リー・フッカーの「ブギ・チルン」の焼きなおしです。でも歌詞はそうであっても曲調というか音楽スタイルとしてはジュニア・パーカー独自のブルーズであると言えましょう。ギターはだれかなあ、パット・ヘア?いずれにせよこれにはハーモニカもホーンズもなし。

 

続く5曲目「ラヴ・マイ・ベイビー」、6「ミステリー・トレイン」は、サン録音1953年のレコードの両面でした。これらこそジュニア・パーカーの代表曲で、のちにロカビリー/ロックのスタンダード・ナンバーともなりました。おもしろいのはこれら二つ、ほぼ同一曲といってもさしつかえないんじゃないかと思えるところ。エルヴィス・プレスリーがサンで「ミステリー・トレイン」をカヴァーしましたが、その際にギターを弾いたスコッティ・ムーアは「ラヴ・マイ・ベイビー」のリフ・パターンを借用して演奏したんですよね。

 

7曲目「ドライヴィング・ウィール」でふたたびホーンズ炸裂の都会的シカゴ・スタイル・ブルーズに戻っていますが、いやあ、こういったブルーズって本当にいいですね。聴いていて楽しいし、和めます。イヤなことがあったり落ち込んでいたりしても聴けばホッとしますから。この曲でもサウンドはやはりジャジー 。ジュニア・パーカーも持ち前のヴェルヴェット・ヴォーカルを聴かせていてグッド。

 

10曲目でロバート・ジョンスンの「スウィート・ホーム・シカゴ」をやっていますがおいといて、続く11曲目、エディ・ボイドの「ファイヴ・ロング・イヤーズ」。これこそ、このアルバム『ミスター・ブルーズ』の白眉だとぼくには聴こえます。もちろん「フィーリン・グッド」「ラヴ・マイ・ベイビー」「ミステリー・トレイン」なんかジュニア・パーカーの代表作であるという事実をさしおいてのことなんですが、「ファイヴ・ロング・イヤーズ」みたいなシティ・ブルーズがこのひとの資質によく合致しているなと感じるんですね。

 

ここでは自身の吹くハーモニカもちょうどいい感じで曲に似合って都会的でありながらややエグい感じにも聴こえるし、やさしくやわらかいヴォーカル・トーンも具合いいし、それからピアノも入る楽団の伴奏サウンドも都会的でジャジーで、このエディ・ボイドの書いたシティ・ブルーズ・ソングを最高にもりたてているんですよね。個人的にはこのヴァージョンを、カヴァーの多い「ファイヴ・ロング・イヤーズ」最高の解釈だと言いたいです。1959年のデューク盤。

 

(written 2020.4.4)

2020/05/23

ダニカ・クルスティッチのストレートなバルカン歌謡

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(3 min read)

 

Danica Krstić / Pod Gorom Se Setalo Devojce

https://open.spotify.com/album/5yIRgQizSi3cvfwOKMFvSy?si=-hbu1xSIQDq9j3FvDzKrog

 

ダニカ・クルスティッチ(Danica Krstić)、どこの歌手なんでしょう、名前からするに旧ユーゴスラビア圏ですよね、たぶんセルビアかな。その2017年作『Pod Gorom Se Setalo Devojce』が実に古色蒼然たるというか、ぼくたち、つまりエル・スール・ゴーワーズ的にはとってもいい感じに響くと思うんです。1995年生まれらしいからまだ25歳なのに、なんでしょう、このおばさんめいた歌謡の世界は。伝統的な音楽をやっているということなんだとは思いますけどね。録音時に21歳だったそう。

 

1曲目、2曲目からして古くさ〜い、じゃなくて伝統的なバルカン地方の音楽スタイルに乗って、ダニカがしっとりと歌います。声の出しかた、節まわしもふくめた歌いかたもやはりトラディショナルで、こういうバルカン民謡とか伝統音楽みたいなのを勉強してきているのかもしれないですね。そういえば、現在もベオグラードの音楽アカデミーで民俗音楽学を学んでいる最中でしたっけ。

 

バルカン半島の伝統的なフォークロアをそのまま活かしたようなサウンドづくりもいいし、楽団というかこれはオーケストラ伴奏ですよね、だれが演奏しているかみたいなことはわかりませんが、それもトラディショナルなスタイルで、コンボ編成のリズム+ストリングスを中心とするシンフォニーがくわわるといった感じでしょう。ストリングスはだれかが譜面を書いているわけですが、コアになっているのはバルカン半島音楽をやるバンドなんじゃないかと思えます。

 

曲もどんなものだかぜんぜん知らないんですけど、聴いた感じ、バルカン民謡をそのまま使っているんでしょうか?そんな素朴でフォーキーな印象があります。けっこう複雑な変拍子の曲も多いですね、そこはいかにもかの地らしいところ。それを伴奏陣が難なくこなすのもいかにもですし、ダニカもなに食わぬ涼しい顔で歌っているのが好印象です。独特の哀感が濃厚に漂っているのもわかりやすいですね。

 

しかもダニカのヴォーカルはそんなに情感を込めすぎず、ストレートにすっと歌っているのも印象に残るところです。コブシをあまりまわさずノン・ヴィブラートで素直に軽く発声しているのがぼく好み。でも声のテクスチャーそのものに暗い翳があらかじめ織り込まれているように聴こえて、そんなところは持ち前のものなのか、それともバルカン音楽を学んでいくなかで身につけたものなのか、とにかくこのしっとりとした中高年女性みたいな落ち着きを感じさせるような、それでいて素直でストレートな、歌いかたは、聴いていて心地いいですね。

 

(written 2020.4.3)

2020/05/22

ジャジーでラテンなトルコ軽古典歌謡 〜 インジェサス

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(4 min read)

 

Incesaz / Peşindeyim

https://open.spotify.com/album/5BNQZYIaxo6uhXZFn59EQ8?si=-24DfPAcTIGrLmgPQLAHQQ

 

インジェサス(Incesaz)はトルコ、カラン・レーベルのハウス・バンドみたいなもんで、カランがかかえているスタジオ・ミュージシャンからの選抜メンバーで構成されているインストルメンタル楽団。そんなインジェサスによる2017年作『Peşindeyim』にはエズキ・キュケルがヴォーカルで参加しています。このアルバムがライト・タッチで聴きやすく、とってもいいんです。

 

ふわっと軽いフィーリングでさわやかに、っていうのはアルバム1曲目からわかると思うんですけど、エズギの歌う、特に二つめの、半音階フレーズのあたりでいいねいいねと思ってしまいます。どことなくただよう哀愁、でもディープではなく、サラリとしていますよね。そういった、なんというか情緒を濃厚に出しすぎない適度な軽さがこのアルバム最大の特色なんじゃないでしょうか。

 

そのために演奏するインジェサスのメンバーもジャズやラテン音楽の要素を軽くとりいれて、ふわっとやっていますよね。そういったところ、なかなか好印象なんですね。メンバーというか楽器編成は、聴いた感じたぶんカーヌーン、タンブール、ケマンチェといった古典的ストリング・アンサンブルに、ベース&ギターとやはり弦楽器、and 打楽器がくわわっているという感じでしょうか。曲によっては木管かな?と思えるやわらかいサウンドがあったりします。

 

2曲目も軽いフィーリングでサラッと演奏し、男女デュオの軽めのヴォーカルでふわりと歌われていますが、それでもやはりトルコ古典歌謡だなと思えるだけの哀感とか渋みは随所で表現されています。このアルバムでは必ずしもそれを濃厚に押し出さないというだけで、フィーリングの根底にしっかりあるんです。ところでこの2曲目は五拍子ですね。

 

3曲目にはボサ・ノーヴァが来ます。ボサ・ノーヴァのこの(ギターが奏でる)リズムでトルコ古典歌謡をやってみるというのはなかなか楽しい試みですよね。成功していると思えます。トルコ隣圏のアラブ歌謡ではラテンやボサ・ノーヴァを使うのが常套ですけれど、トルコ古典歌謡もこういう衣装を着せれば現代的で楽しいです。ストレートでオーセンティックなスタイルも好きなぼくですけどね。

 

ヴォーカルなしのインストルメンタル演奏である4曲目を経て、5曲目はワルツ・タイム。これもトルコ古典歌謡ではめずらしいリズム・スタイルでしょう。途中でリズムが変化したりしますし。どうもこう全般的にこのアルバムではリズム面での実験というか試みが目立つ気がします。だれの発案なのか、プロデューサーがだれなのか、知りたいところですが、できあがりがあっさりさっぱりしていて普段着で、実験をやっているという気負いというか主張が出ていないあたりに好感をいだきます。

 

8曲目のアルバム・タイトル曲は、二拍子でレゲエっぽいフィーリングのリズム。曲調も明るいアレグリアだなあと思っておもしろがっていると、この曲ではエズギは歌わないんですね。男性歌手のみです。名前がよくわからないというかわかったところでだれなのか知りませんがボラ・エベオグルでいいの?Bora Ebeoǧlu さん。この曲では軽い口笛も聴こえ、まるで鼻歌フィーリング。あまり古典歌謡っぽくないですが、新鮮ですね。

 

10曲目もほんのりボサ・ノーヴァっぽいような?ラテン乗りがありますが、ここではかなりの薄味ですね、気にしないとほとんどわからない程度です。でも続くアルバム・ラストの11曲目がとってもいいですよ。なんとかなり鮮明なアバネーラなんです。まるでトルコに一羽の鳩が舞い降りたような、そんなフィーリングで、好感度大。いやあ、しかしアバネーラのこの、タ〜ン・タ・タ〜ンっていう付点付き二拍子のリズムって、どうしてこんなに魅力的なんでしょうか。

 

(written 2020.4.2)

2020/05/21

YouTube にて

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(4 min read)

 

https://www.youtube.com/user/hisashitoshima/

 

YouTube チャンネルのサブスクライバー(購読者?)がここ数ヶ月かなり増えているのは、やっぱりコロナウィルス感染症対策のため、みんな自宅にいてネットを見ているからですよね。それ以前と比較しても増えかたが大きくなっているように思いますし、なんだったらヴィデオにつくコメントの数も増えつつあります。ヴィデオといってもぼくがアップロードしているのは音楽(映像は静止画)だけですけどね。

 

その前からでも、ぼくが上げた YouTube ミュージックに思いもよらぬコメントがつくことがありました。ふつうのリスナーさんが発言してくださるのもたいへんうれしいんですけど、このホット・リップス・ペイジ(Hot Lips Page)の音楽についたコメントにはちょっとオオッ!となっちゃいましたね。

 

・ホット・リップス・ペイジ「ザ・ブルーズ・ジャンプト・ザ・ラビット」
https://www.youtube.com/watch?v=IQdSyb2y1C0

 

ごらんになればおわかりのようにベルフォード・ペイジ(Belford Page)さんからのコメントで、「これは私の大叔父です」とおっしゃっています。つまりこのベルフォードさんはホット・リップス・ペイジの孫というに近いような存在です。そんなかたがぼくの YouTube ミュージックを見つけてくださって、コメントくださったんです。10ヶ月前のこととなっていますから、2019年夏ごろのことでしょう。

 

こういった、ホット・リップス・ペイジみたいな歴史に名を刻んだジャズ・ミュージシャンの親族のかたから直接コメントいただけるなんてことは、思ってもいなかったことです。自分の好きな音楽、それもそれまでネットに存在しない、だからだれでもがパッと聴けるわけじゃない音源について、ぜひ紹介しておきたいと思うものを無許可で勝手にアップしているだけなんで、その音楽家の親族のかたから直にコメントいただけるなんて、望外の喜びです。

 

うれしくて、しばらく部屋のなかで跳ねまわっていました。

 

また、ついこないだはこのヴィデオにコメントがつきました。たった三週間前のことで、音楽はラトナ&イラーマ・カルテット(Ratna & Irama Quartet)。イラーマ・カルテットはニック・ママヒットがピアノ&リーダーを務めていたインドネシアのジャズ・グループで、主に1950年代に活動したみたいです。

 

・ラトナ&イラーマ・カルテット「Pertama Bunda」
https://www.youtube.com/watch?v=D4_TdhsseDU

 

コメントくださっているのは Enrinia Tanod さんで、なんと「これは私のおばあちゃんの声です」とのこと。Enrinia さんはラトナのお孫さんなんでしょうね。YouTube でこんな出会いってあるのでしょうか。たった一個、ラトナ&イラーマ・カルテットの音楽を、魅力的なのにネットで聴けないからなにか一個ちょっと、と思ってだいぶ前にアップしただけ、ただそれだけのことです。

 

それを歌手のお孫さんが見つけてくださって、アップしてくれてありがとう、おばあちゃんです、と。ビックリですよねえ。Enrinia さんもインドネシアのかたなんでしょうか。ご自身の YouTube チャンネルもおありのようですからちょっと見にいったら、ヒップ・ホップ・ダンスの動画をすこし上げているみたいです。

 

二つめのコメントによれば、ラトナはいまは天国にいるとのことで、この音楽を聴くのをやめられない、おばあちゃんがいなくなってとてもさびしいとおっしゃっていますよね。こんなことってあるんですね。Enrinia さん、ラトナが歌うこのヴィデオを見つけてくださって、そしてコメントくださって、ぼくのほうこそありがとうございます。

 

ずっと音楽関係の活動を続けていると、こういったハート・ウォーミングな交流もたまにあります。

 

(written 2020.5.16)

2020/05/20

マイルズのベスト 9(ver. 2020)

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(6 min read)

 

https://open.spotify.com/playlist/5NboBbjjdxEz2y9lUOY8Ex?si=x6wMfmKzSMqanBFq7gjSpw

 

以前こんな記事を書きました:「僕のオススメ〜マイルズの必聴アルバム10選」。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2017/03/10-b694.html

 

2017年3月の文章ですね。それ以後マイルズ・デイヴィスへの興味や関心が変化したり発展したりしている部分がありますので、2020年4月時点で考える「マイルズのベスト・アルバム」というものを書いておくことにします。ただし変更点が二つ。10作ではなく9作にしました。ひとえに上掲のように画像をタイルしたかったから。

 

もう一つ、2017年に書いたときはいちおうマイルズ初心者に向けての配慮や、どのアルバムが重要かみたいな意義、全体のバランスも考えたんですけど、今回は個人的嗜好だけで選ぶことにします。音楽趣味でなにがいちばん肝心かって、その音楽を自分が心から好きかということですからね。2017年ベストと重なりすぎないようにとも思いましたが、一部はしかたがないです。

 

以下、タイトルの次のカッコ内にあるのはリリース年。そのリリース年順に並べましたが、でも一個だけ、『リラクシン』はプレスティジのアルバムなのでこの順番です。すべて楽に CD が買えるしサブスクリプション・サービスで聴けます。

 

いずれのアルバムもいままでにこのブログでとりあげてそこそこくわしく書いてきていますので、お時間があれば探してみてください。今日はそれぞれ手短に記しておくことにします。

 

・Miles Davis and Milt Jackson Quintet/Sextet (1956)

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これはヒドゥン・ジェム。いままであまりマイルズを聴いてこなかったみなさんや、あるいはマイルズ・ファン向けにでも、強く推したい一枚です。推薦盤にあがることのないアルバムですけど、マイルズは歴史を変えたとかなんとかそんな立ち位置とはまったく無関係の、音楽の純粋な楽しさ、美しさがここにはあります。

https://open.spotify.com/album/6QV1iyREyud3AGQZxf8Yt7?si=s7cgtiN1TmKAursytcHcNw

 

・Relaxin' (1958)

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やはりなんといっても大好きなので。アルバム題どおりくつろげる内容で、ジャズを聴いてまったりタイムを過ごすにはもってこいの一枚ですよね。緊張感の張りつめた時間もありますし(「オレオ」)、「ユア・マイ・エヴリシング」といった絶品バラードでの玉に露な味わいや、「アイ・クッド・ライト・ア・ブック」や「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」の余裕もすばらしいです。

https://open.spotify.com/album/0dyIXPKoUBt1vFJHX57dqt?si=6N_uLTpfQ3WpuHg4x0NmAQ

 

・Miles Ahead (1957)

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これなんか、いままであまりにも聴きすぎていてさすがにもういいやって感じだろうと思ったら、今回また聴けば、特にバラード「カディスの乙女」「マイ・シップ」なんかの美しさにはやっぱり惚れぼれしちゃいますね。ぼくの考える最高のイージー・リスニング。A面が完璧。

https://open.spotify.com/album/6WOddaa5Vqp8gQZic8ZUw9?si=107BuG9BRpa6hPOTBLVPPg

 

・Someday My Prince Will Come (1961)

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ウィントン・ケリー&ジミー・コブ時代がわりと好きなんですけど(『カインド・オヴ・ブルー』だって実はそうです)、このバンドはライヴで本領を発揮したのかもしれません。ほぼ唯一のスタジオ録音作であるこれは、しかしなかなか小粋でチャーミング、こじんまりとまとまっていて聴きやすく、キュートですよね。これもおだやかなくつろぎということが本質の音楽です。

https://open.spotify.com/album/68A4o4tkirJRFYbO9Ag0YZ?si=aL4b5ty9TPGELEI2mTxVrA

 

・Miles Smiles (1967)

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ぼくにとっては「オービッツ」「フットプリンツ」「フリーダム・ジャズ・ダンス」「ジンジャーブレッド・ボーイ」の四曲でのポリリズミックなアプローチがすべて。この1965〜68年のセカンド・クインテットの諸作中いまではいちばん好きなアルバムになりました。トニー・ウィリアムズって本当に天才でしたよね。

https://open.spotify.com/album/7buEUXT132AA4FPswvh9tV?si=MQXzcPdBRvuVhNI0EhYSzQ

 

・Filles de Kilimanjaro (1968)

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ここ一年半ほどは、これがある意味マイルズの最高傑作、とは言いすぎにしても、はっきりと時代を刻んだターニングポイントだったとみるようになっています。ジェイムズ・ブラウンやジミ・ヘンドリクスを下敷きにした「フルロン・ブルン」「マドモワゼル・メイブリー」には興奮しますね。「キリマンジャロの娘」のアフリカ志向といい、もう一度しっかり聴いて考えてみたいソウル/ロック・アルバムです。

https://open.spotify.com/album/7pFyY6SvB0XlUKp8srk8Az?si=TKWshqBGS8iOe6CBMwebRg

 

・Jack Johnson (1971)

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シンプルな演奏ですけど、ここで聴けるジョン・マクラフリンのロック・ギター(とマイクル・ヘンダスンのファンク・ベース)にはマジしびれます。ボスのオープン・ホーンもそれにふわりと乗ったり鋭角に切り込んだりして、スリリング。最初のインサートがあるまでの11分間弱は本当に宝石です。

https://open.spotify.com/album/0xr31or2qYglJpiX6pODjY?si=rNIZYO19RJKSLC9KjIkKqg

 

・Black Beauty (1973)

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1970年のフィルモア・ライヴにはいいものが多いんですが、『ブラック・ビューティ』になったウェスト4月10日公演がいまはいちばん好き。フェンダー・ローズにエフェクターをかませてナスティ&ダーティに弾きまくるチック・コリアにムズムズします。

https://open.spotify.com/album/3qFhhUSLJxUKrRIbmcDo11?si=C-ObyCSsS0C-8s2HastAUA

 

・Live Around The World (1996)

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フォーリー(lead bass)+リッキー・ウェルマン(dms)体制が1981年復帰後のベスト・バンドだったというのがぼくの見解で、だから1988〜91年。そんな時代のベスト・ライヴ集であるこのアルバムはヒット曲ばかり収録していてベスト盤的な聴きかたができますし、バラード吹奏では死ぬまで輝いていたこのトランペッターの真価がわかる愛聴盤。しかもこのライヴ・アルバムには独特の雰囲気というかヴァイブがあるんですよね。

https://open.spotify.com/album/0YBvNUUwBf23f5hKhk8xLj?si=iGf9GhIlQjigYenTSvDi5A

 

(written 2020.4.17)

2020/05/19

グアドループ出身、エルマン・サンビン

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(4 min read)

 

Véro Hermann Sambin / Sky Loom

https://open.spotify.com/album/4YKHx6AKpCesagg6rdhdI5?si=eJbqJj0mSyaUbS146tLvSw

 

この歌手、いまはフランスで活動しているんですかね、(ヴェロニーク・)エルマン・サンビン(Véro Hermann Sambin)。グアドループ出身とのことです。その2020年作『Sky Loom』がなかなかのお気に入りになりました。ジャズ・ヴォーカル・アルバムと呼んでいいと思うんですけど、カリブ的といえる要素、特にリズムにそれがあって、聴いていて楽しいです。

 

まず1曲目「Lanmou the Entertainer」から曲に独特のリズムがありますよね。グアドループの音楽をなにも知らないので、これが同島由来かどうかいえないんですけど、聴いて気分が浮き立つカリビアン・グルーヴだなとはわかると思うんです。ピアノ+エレベ+ドラムスでつくりだすこのサウンドもいいですし、中盤部でエルマンがスキャットでピアノとかけあいをやるあたりは本当に極上です。そこからそのままピアノ・ソロ(グレゴリー・プリヴァ)、それもいいです。ギターも聴こえはじめます。

 

このアルバムの伴奏は、基本、ギター、ピアノ、ベース、ドラムスだと思うんですが、曲によってはホーン奏者がくわわっているものもあります。あまり聴こえないけどパーカッショニストもいるかも。とにかく演奏は地道というか堅実で、派手に目立つようなことはありません。エルマンの書いた曲とヴォーカルを主役に、どこまでももりたてていこうといった感じですね。しかもなんだかオーガニックなテクスチャーもありますね。

 

2曲目以後、しっとりした歌謡系というか、シャンソン的というかモルナ的というか、そういった曲ではカリビアン・リズムの楽しさを味わうことはできないですけど、エルマンの書いたメロディの美しさとしっとり情緒、ヴォーカルの味をしみこませるように楽しむといった、そんな聴きかたができますね。でもどことなくリズムのニュアンスにカリビアン・テイストをかすかに感じないでもないです。

 

1曲目とならぶアルバム前半部のクライマックスは、たぶん5曲目の「Sourie」ですね。ハンド・クラップが効果的に使われていて、そのリズムがいいんですよね。曲じたいはしっとりシャンソンみたいですが、この曲には鮮明なグルーヴがあります。ギターだけで歌うんですけど、そのギター伴奏もなかなか聴かせますね。だれが弾いているんでしょうか。あ、ラルフ・ラヴィタルですか。

 

ひきずるような重たい感じのビートを聴かせる(特にエレベが)7曲目「Wonderfil」もノリがいいですが、ここでのコーラス・ハーモニーはエルマンの多重録音かもしれません。後半は特にキメも入っていい感じですが、続く8曲目「Douwé」後半がとってもいいんです。ドラマー(アルノー・ドルマン)がスネアをメインにかなり激しい叩きかたをしていて、曲の前半部はやっぱりしっとりバラードみたいだからな〜と思っていたら、後半は様相一変、リズミカルになるんですね。この曲後半部はかなり聴けますね。

 

アルバム後半は全体的にカリビアン・リズムでぐいぐい攻めるといった趣で、本当に聴き惚れます。10曲目「Volonté」からそうですが、本番はたぶん11曲目「Sky Loom」からです。この11曲目中盤ではエレベ・ソロが出るんですけど、それがもうなんともいえずいいノリで、曲のビートもいいし、このアルバム・タイトル曲にはグルーヴがありますね。いやあ、みごと。

 

12曲目「Foufou」と13曲目「Foufou frange」はメドレーになっていて、これは同じひとつづきの曲ということなんでしょう。ややキューバン・ボレーロっぽい感触も聴きとれますし、同時にピアノなんかは部分的にサルサっぽくなったり、それでも全体的にはグアドループっぽいリズム・ニュアンスが聴きとれて、実にいいですね。

 

そして14曲目「Léjé」。これがこのエルマンのアルバムで(1曲目とならぶ)ぼくの最大のお気に入り。続くアルバム・ラストの15曲目はエピローグ的なインストルメンタルなので、本編はこの14曲目で終わりです。ビートが効いているのがいいし、快活で楽しくて、グルーヴはカリビアンだし、もう文句なしですね。伴奏のリズム・セクションも一体となって激しくもりあげてくれるのが最高です。

 

(written 2020.4.1)

2020/05/18

コロナまだまだ?シリーズ(5)〜 岩佐美咲 5th コンサート DVD(これでおしまい)

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(5 min read)

 

https://www.amazon.co.jp//dp/B07P6NCXXJ

 

2019年1月26日、東京キネマ倶楽部で行われた岩佐美咲のフィフス・ソロ・コンサート。それを収録した DVD『岩佐美咲コンサート2019〜世代を超えて受け継がれる音楽の力』を昨年発売時に観た際の感想文はこれです↓
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2019/06/post-e31174.html

 

このフィフス DVD に収録されているうち CD に未収録なのはたったの二曲しかありません。

 

・能登半島(石川さゆり)
・狙いうち(山本リンダ)

 

なんやたったこれだけか、これでは今日の文章が仕上がらないな〜と思ってしまいますが、コンサート当日には初披露だった曲がけっこうあったのです。相前後して、あるいはしばらくして、また一年後に、スタジオで歌いなおし CD 収録され発売されたケースが多いんですよね。この五回目のコンサートのクライマックスだったともいえる名曲名歌唱「遣らずの雨」(川中美幸)もそうです。

 

前2018年は濃厚演歌路線だったのが、2019年はややライト・タッチの歌謡曲傾向に移行したということで、コンサートもそれを反映しています。毎年のことなんですが、美咲のソロ・コンサートはその年の新曲の傾向にあわせて編成されていますから。濃厚激烈演歌ならコンサートもそんなカヴァー曲を多めに、軽歌謡路線だったならポップスを多めにとかですね。

 

フィフス DVD のばあい、前年の「佐渡の鬼太鼓」路線から当年の「恋の終わり三軒茶屋」へと移行させるため、四曲目の「遣らずの雨」までは濃厚抒情演歌をまとめて並べ、その後5曲目の「冬のリヴィエラ」以後は軽めの歌謡曲で構成するという、そういった具合になっているんですよね。だから「遣らずの雨」と「冬のリヴィエラ」はこのコンサートのヘソです。

 

「能登半島」もコンサート序盤の濃厚演歌路線、有り体に言えば前年の「佐渡の鬼太鼓」の傾向にあわせるためにチョイスされたものでしょう。ところでこの「能登半島」という曲はちょっとおもしろいですよね。A メロの出だしが、ふつうの曲ならサビになりそうな動きの旋律になっていて、はじめて聴いたらめんくらうような感じです。全体的にも斬新なメロディ展開で、書いたのは三木たかしですか。初演歌手の石川さゆりにとってもチャレンジだったのでは。

 

美咲はいろんなメロディや凝った展開もあるポップスの世界にもなじんでいますから、「能登半島」のそんな新鮮なメロディも難なく歌いこなしていますね。さらにこの曲でもほかの曲でもそうなんですが、フレーズ終わりやコーラス終わりにスーッと音を伸ばす部分の声の丸み、ふくらみが2018年までと比較しても豊穣になっているのがわかります。

 

声を伸ばすときに丸みやふくらみが出て豊穣に、というのは実はヴィブラートが効くようになったということでもあります。もともと美咲はナチュラル&ストレートな発声法でやる歌手で、コブシもガナリもヴィブラートもなし、というのが大きな特徴だったんですけど、2019年はじめごろから軽いヴィブラートで声をサスティーン(サステイン)させるようになっているんですね。

 

しかし歌謡曲やポップスを歌うときにはそういったヴィブラートは抑えられていますから、なにを歌うかによって発声を自在に変化させられるようになったということでしょう。表現の幅が広がったと素直に歓迎したいと思います。それでも歌謡路線1曲目の「冬のリヴィエラ」ではまだ濃厚さを残していますが、「恋の奴隷」以後は軽快さのほうが勝るような声の出しかたになっています。

 

コンサートそのものの開催時には、このあたりの曲は初チャレンジ、初披露セクションになっていたもので、その後「恋の奴隷」「お久しぶりね」「あなた」「別れの予感」は2019年2月発売のシングル「恋の終わり三軒茶屋」に収録・発売され、「遣らずの雨」「冬のリヴィエラ」は、同年夏発売の同曲シングル特別盤に収録されました。ですので、このコンサート当日の印象としては<新鮮>ということがあったんですが、いまとなっては見知った曲ばかりということになるんです。

 

ラウンド・コーナーでの「狙いうち」。きのう、ピンク・レディーの曲と美咲はとても相性いいんじゃないか、だからなにか一曲でも CD 収録してくれないだろうかという意味のことを書きました。実は山本リンダのこのへんのアクション歌謡路線も美咲によく似合うピッタリの楽曲傾向だなとぼくはにらんでいます。だから「どうにもとまらない」でもいいし「狙いうち」でもいいけど、それもスタジオ収録してくれないもんでしょうかねえ。

 

正直な話、山本リンダとかピンク・レディーとかの、ああいった歌い踊る歌謡曲が美咲に似合っているというのは、美咲はAKB48というダンス&ヴォーカル・グループにいたからでありますね。七年間毎日ステージで歌い踊っていたわけですから、はっきり言って鍛えられています。モノが違うんです。美咲のソロ・コンサートで「ペッパー警部」や「狙いうち」をやる様子は、まさにこれが私の本領ですよと言っているようなハマり具合じゃないでしょうか。

 

(written 2020.5.15)

2020/05/17

コロナどうですか?シリーズ(4)〜 岩佐美咲 4th コンサート DVD、あの感動をもう一度

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(6 min read)

 

https://www.amazon.co.jp//dp/B07B16RGKL/

 

岩佐美咲フォース・ソロ・コンサートは、2018年2月4日、恵比寿ガーデンホールでの昼夜二回公演でした。そこから映像作品化された DVD『岩佐美咲コンサート2018 〜演歌で伝える未来のカタチ〜』は夜公演から収録されています。二年前に観たときの感想文は以下↓
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/2018-b979.html

 

このなかから CD に収録されていないコンサート・オンリーの曲を抜き書きしますと、以下の計八曲。カッコ内は初演歌手です。

 

・火の国の女(坂本冬美)
〜〜ラウンド・コーナー
・かもめが翔んだ日(渡辺真知子)
・冬の稲妻(アリス)
・ペッパー警部(ピンク・レディー)
〜〜ギター弾き語り
・歌舞伎町の女王(椎名林檎)
・心の旅(チューリップ)
〜〜
・わたしの城下町(小柳ルミ子)
・グッド・バイ・マイ・ラヴ(アン・ルイス)

 

この2018年コンサートからはぼくも現場に足を運んでいるということで、いま DVD で観かえしてもなかなか感慨深いものがあるわけです。当日は動く生の美咲にはじめて会ったということで感動しきり、はっきりいって内心激しく動揺していて、ボロ泣きでしたし、歌や音楽の内容について詳細な記憶がないんですね。

 

今回ファースト DVD から続けて一日一枚観ていると、美咲は年々大きく成長しているなという強い印象があります。いちばんそれがわかるのが冒頭の「初酒」です。この曲は2016年のファースト・コンサートでもオープニングでしたが、三日前に書きましたようにそれは不安と緊張で歌の出来としてはボロボロというに近いものだったのです。

 

ところが2018年コンサート出だしの「初酒」はどうでしょう、これが同じ曲、同じ歌手なのか?と思うほど様変わりしているじゃないですか。登場するやにっこりおだやかに微笑んで快調に歌い出します。コンサートに臨む美咲自身、ワクワクする楽しみのほうが大きかったんじゃないですか。そんな余裕は歌にも姿にも表情にも出ていますよね。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/2-ac7b.html

 

2018年は新曲が「佐渡の鬼太鼓」という激烈演歌だったので、ソロ・コンサートもその傾向にあわせたような曲が多くとりあげられています。特にラウンド・コーナーに入るまでの前半部は、美咲自身「ここまでしっとりした曲をはじめのほうに(たくさん)持ってくるということはなかったんじゃないか」と MC で語るほどの編成です。

 

なかでも坂本冬美の「火の国の女」はかなり調子の強い演歌で、これがコンサート前半部の抒情演歌カヴァー・コーナーの1曲目ですから、美咲や製作陣がどんな意図をこの曲に込めたのか、よくわかりますね。美咲もそんな期待にこたえるように劇的かつ濃厚に声を出し歌いこなしています。そんななかにもときおりキュートな表情が垣間見えるのも美咲らしいところです。キュートな、というのは世間で言う<アイドル発声>ということなんですが、ぼくらは否定的にとらえておりません。

 

ラウンド・コーナーで目立つのは、やはり安定の1970年代歌謡曲路線を堅実に歩んでいるなということです。美咲にこういった方向をとらせているのがだれなのかわかりませんが、たとえばピンク・レディーの「ペッパー警部」なんかは現場で聴いてかなりうれしかった、興奮したという記憶がありますね。おばさんおっさん捕獲器と化しておりますね(笑)。

 

「ペッパー警部」にしてもそうだし、この DVD にはありませんが「サウスポー」とか「UFO」とか、どれでもいいから一つピンク・レディーの曲はいちど CD 収録してほしいという気持ちがぼくにはあります。この DVD で聴ける「ペッパー警部」から推し量るに相性バッチリだと思うんですよね。ダンスがないとおもしろみ半減かもしれませんが、いやいやなかなかどうして、歌だけでもオーケーじゃないですか。ホントお願いしますよ、ピンク・レディーの曲を一つ CD 収録してください>徳間ジャパンさん。

 

アクースティック・ギター弾き語りコーナーでの(現場では三曲だったんですけど)「歌舞伎町の女王」と「心の旅」も出来がいいです。ギターの腕前が年々向上していますし、それにともなってヴォーカルのほうにも余裕が出てくるようになっています。特に「歌舞伎町の女王」のほうはギターもヴォーカルもちょっとむずかしいと思うんですけど、椎名林檎より魅力的でカッコイイ感じに仕上がっておりますね。「心の旅」は安定の中高年ホイホイ状態。

 

その後「わたしの城下町」「グッド・バイ・マイ・ラヴ」になりますが、ここらあたりのしっとり歌謡路線は、この2018年コンサートで本当にすばらしかったところです。「わたしの城下町」では、小柳ルミ子より線が細いものの、声の魅力や安定感では上ですし、それからこれはなんでしょう、伴奏のオケもみごとですよ。特にサビでスネアがシンコペイションを演奏するのはルミ子オリジナルでは聴けません。

 

アン・ルイスというよりテレサ・テン(鄧麗君)のヴァージョンをあきらかに下敷きにしている「グッド・バイ・マイ・ラヴ」も聴きごたえありますね。こういったしっとり系で落ち着いた歌謡/演歌が、このとき2018年美咲コンサートのテーマなんで、「グッド・バイ・マイ・ラヴ」は最終盤のオリジナル・ソング・パートに行く前のプチ・クライマックスになっていますね。しかも美咲らしいキュートな可愛らしさもふりまいていて、文句なしです。

 

(written 2020.5.14)

2020/05/16

コロナどうですか?シリーズ(3)〜 岩佐美咲 3rd コンサート DVD ふたたび

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https://www.amazon.co.jp//dp/B0753581B7/

 

よみうり大手町ホールでの2017年7月22日、23日と2 days の計三回公演から収録された岩佐美咲のサード・ソロ・コンサート DVD『岩佐美咲 3rd コンサート〜笑顔・心・感謝で繋ぐ…至福の2日間〜』。発売された2017年当時に観た際の感想文はこれ↓
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/dvd-4801.html

 

このときは三回もライヴをやったなかから、DVD の本編は三回目の23日夜公演で編成されていますが、ボーナスとして一回目(22日)と二回目(23日昼)からもダイジェストが収録されています。そっちにもなかなか魅力的な歌があるんですけれども、キリがありませんから、今日も本編だけを考えて書いていきたいと思います。

 

もちろんボーナス収録されている一回目公演(7/22)には「岬めぐり」だとか「恋のダイアル6700」、二回目公演には「暑中お見舞い申し上げます」「夏のお嬢さん」だとかいった、かなりそそられる曲もふくまれているんですけれども、ダイジェストですし(どの曲も抜粋収録)、涙を飲んでカットです。

 

このサード DVD『岩佐美咲 3rd.コンサート〜笑顔・心・感謝で繋ぐ…至福の2日間〜』本編にある曲で CD で歌われていないのは以下の12曲。かなりたくさんありますね。カッコ内は初演歌手(ペギー葉山を除く)。

 

・哀しみ本線日本海(森昌子)
・銀座カンカン娘(高峰秀子)
・南国土佐を後にして(ペギー葉山)
・おもいで酒(小林幸子)
〜〜アクースティック・ギター・パート
・丸の内サディスティック(椎名林檎)
・Silly(家入レオ)
〜〜ラウンド・コーナー
・ダンシング・ヒーロー(荻野目洋子)
・夢見る少女じゃいられない(相川七瀬)
・少女A(中森明菜)
・プレイバック part 2(山口百恵)
・飾りじゃないのよ涙は(中森明菜)
〜〜
・ノラ(門倉有希)

 

このサード DVD にはラウンド・コーナー終了後に必殺の「ノラ」が収録されているということで、しかもそれがいまだに CD には収録されていない、この DVD だけ、ということで、どうしても気持ちがそこへ行ってしまいます。サード DVD の白眉というばかりか、五枚ぜんぶの DVD トータルでもクライマックスなんじゃないでしょうか。

 

美咲ヴァージョンのこの「ノラ」もまたつらく苦しい恋を歌ったもので、ちょうどいまの、そう2019年「恋の終わり三軒茶屋」、2020年「右手と左手のブルース」といった最新オリジナル楽曲の傾向にわりと合致する、共通する路線の曲じゃないかと思いますね。2017年夏にすでにこういうのがあったんですよね。

 

「ノラ」で聴ける美咲のこの歌には、つらみ、苦しみをやわらかくくるむ無邪気さというか無垢さをも感じる部分があり、どんよりした内容の歌ですけど、翳りすぎない暗すぎないトーンをもたらすことに成功していますね。明るい調子の歌をやるときもちょうどいい感じに中和しますし、美咲の歌はいつでもその中庸さ加減が聴きやすくていいです。「ノラ」でもこんな深刻な内容をサラリと歌っているからこその迫真の歌唱力が身に沁みるんだと思うんです。

 

声の伸び、艶やかみ、あざやかみなども「ノラ」では完璧ですけれども、ぼくの印象としてはこのサード DVD になった2017年7月23日夜公演の美咲は、そもそもかなり調子がよかったんじゃないでしょうかね。DVD 全体を通してそう感じますし、コンサート冒頭からこの印象が持続します。2曲目「哀しみ本線日本海」でも聴かせますね。歌が胸に迫ります。

 

その後演歌カヴァー・コーナーみたいなのが続きますが、そこで歌われているなかでは「おもいで酒」だけがイマイチな出来かもしれません。なんたってこの曲は旋律が細かく上下してむずかしいんですよね。オリジナルの小林幸子はさすがにうまく歌っていますが、カヴァーするほとんどどの歌手も微細なメロディのひだのゆらめきで音程をうまくとれていません。特にコーラス終わりの「おもいで酒に、酔うばかり」の「ば〜か〜〜り」部。美咲も不安定です。

 

しかしこれ以外の「銀座カンカン娘」「南国土佐を後にして」はきれいに歌いこなしていますよね。後者はしっとり系ですけど、前者は美咲も得意とする陽気なビート・ナンバー。高峰秀子のレコードが初演ですけど、笠置シヅ子のヴァージョンで知られるようになった歌でしょう。笠置といえばブギウギものですけど、ああいった服部良一ナンバーは美咲にもピッタリ似合うと思うんですね。服部曲集を出してほしいと思うほどなんですけど、そんなこと言う美咲ファンはぼくだけですか?

 

続くアクースティック・ギター弾き語りコーナーは、ある意味「ノラ」とならぶこのサード DVD の白眉です。セカンド DVD の同コーナーがイマイチに聴こえましたから(特にギター)、半年でずいぶんよくなっているなという印象です。特に注目したいのは「Silly」。まるで水を得た魚。美咲のギターも歌も輝いています。こういう音楽が好き!やりたい!と言いたげな美咲の心からの気持ちが音に出ていますよね。ギターもヴォーカルも美しいです。

 

ギター・パート3曲目の「糸」にしたって、CD「鯖街道」特別記念盤ヴァージョンになった2017年5月の新宿ライヴではサポート・ミュージシャンがいましたからね。ところがこの7月ヴァージョンは美咲ひとりのギターと歌だけで、それで CD になった5月公演ヴァージョンに劣らないどころか、さらに一段よくなっているんじゃないかと思えるほどなんですから。特に声が活きていますよね。

 

ラウンド・コーナーではいつもながら1970〜80年代の歌謡曲ヒットを再現するという安定路線の美咲。ロック調で、なかにはマジなというかシリアスな感じがする歌もふくまれていますが、美咲はキュートでかわいらしく歌いこなしているのが特徴です。こういった発声は、ほかの箇所、たとえば演歌パートやギター弾き語りパートではそうなっていないことも多いですから、歌謡曲ヒットをやるときにあえて意識して選びとっているものなんでしょう。(演歌系の)声の伸びや張り、艶もまじっていますから、なかなか得がたい唯一無二の個性になっていると思えます。

 

ふりかえると2017年の美咲は充実していました。1月と7月にソロ・コンサートをやり、7月は二日間で三回公演でしたから、合計年間四公演分もソロ・コンサートをやった計算になります。5月と11月にはギター弾き語りライヴをやったので、それで二回。9月には地元千葉県印西市でもコンサートをやりました。つまり年間のコンサート総数がなんと七回なんですね。

 

たぶん美咲のデビュー後最も充実していて忙しかったのが2017年だったのではないでしょうか。その後徐々にしりすぼみ…、かわかりませんが、2020年のいまのこの状況を考えると、なんだか複雑な気持ちになってしまいます。

 

いずれにしてもこのサード DVD、「哀しみ本線日本海」「丸の内サディスティック」「Silly」「プレイバック part 2」「飾りじゃないのよ涙は」などはオリジナル歌手のヴァージョンよりも出来がいいし、全体的に聴きどころが満載で、美咲も終始ずっと調子よく元気で、ほぼ文句なしのすばらしい作品だと言えるでしょう。

 

(written 2020.5.13)

2020/05/15

コロナで暇?シリーズ(2)〜 岩佐美咲 2ndコンサート DVD 三年ぶり

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https://www.amazon.co.jp//dp/B06XK4TX1Z/

 

主役の誕生日前日の2017年1月29日に浅草公会堂で開催された岩佐美咲セカンド・ソロ・コンサートを収録した DVD『岩佐美咲コンサート〜熱唱!時代を結ぶ 演歌への道〜』。三年前の発売時に観た感想はこれです↓
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/dvd-1896.html

 

この DVD に収録されているもののうち、現在でも CD で歌われていない曲は以下の九つ。わりとありますね。あ、このセカンド DVD で泣くということはありませんでした。

 

・雨の慕情
・池上線
・京都から博多まで
・チェリー
・ I LOVE YOU
・タッチ
・夏の扉
・学園天国
・DESIRE -情熱-

 

たくさんあるといっても、「チェリー」と「I LOVE YOU」はギター弾き語りコーナーでの披露で、「タッチ」以下はラウンド・コーナーでの歌ですね。それ以前の三曲「雨の慕情」(八代亜紀)「池上線」(西島三重子)「京都から博多まで」(藤圭子)なら、一定の傾向をはっきり示していると思います。

 

それは大人のしっとり演歌路線ということで、これら三曲に入る前はアルバム『美咲めぐり〜第1章』からのカヴァー・ソングを連続させています。そこからひっくるめて考えても、このセカンド・コンサートではファースト・コンサートに比べてもより落ち着いた抒情演歌を打ち出そうとしたのかもしれません。しかもなんだか物語を感じるような曲順です。

 

大ヒットした有名曲「雨の慕情」に比べたら、「池上線」「京都から博多まで」はさほどの知名度がないんじゃないでしょうか。そのへんもあえてそういう曲を持ってくるという意図がなにかあったかもしれませんが、いずれの曲もオケは美咲用に作成されたものであるとはいえ、アレンジはオリジナルに忠実です。

 

「雨の慕情」だと美咲の声はかわいらしいチャーミングさも聴かれます。このへんは<アイドル発声>と言われ、一部のみなさんには2020年でもいまだ評判のよくないものなんですが、それも一種の偏見だと言わざるをえません。だいたいぼくが美咲を知ったときAKB48というアイドル界出身ということは知りませんでしたからね。それで好きになったんですから。

 

キュートでかわいらしい声で「雨の慕情」のような曲を歌うのは、濃厚な演歌発声ではないことにより、結果的に歌の世界が新しい相貌を現すことになっているんじゃないかという気がします。演歌というティピカルな、というかステレオタイプなグリグリ発声では得られないフレッシュな情緒感を獲得できているかなと思います。

 

そういった新しいフレッシュな情緒感こそ、21世紀的なニュー演歌のフィーリング、ニュー表現法じゃないかな、だれよりも美咲がそれを体現しているんじゃないかな、というのがぼくの持つ最大の印象です。そんなところ、「池上線」「京都から博多まで」でも実感できると思います。「池上線」ではそれでも大人の落ち着きをみせているし(そんな歌ですけど)、「京都から博多まで」も歌に迫力がありますね。

 

個人的には「雨の慕情」「池上線」の二曲は、今後歌いなおして CD に収録してほしいという気持ちだってあります。曲がすばらしいし、いまの美咲の成長した表現でよりみごとな世界を実現できるはずだと思うんですね。曲調としても2019年ごろからの美咲の路線にフィットするんじゃないかと。特に「池上線」がそうです。起伏の大きいメロディで歌いこなすのがむずかしい曲ですが、美咲の歌は実にいいですね。似合っています。

 

アクースティック・ギター弾き語りコーナーでの「チェリー」(スピッツ)「I LOVE YOU」(尾崎豊)。2017年のこのコーナーは、一回目だった2016年のそれと比較して大きな違いがあります。2016年コンサートのときはバック・バンドが演奏をサポートしていたのに対し、2017年は本当に美咲ひとりだけだということです。本人もそのことを MC で指摘していますが、ごまかしがきかないぶん、緊張があったのではないでしょうか。

 

それでも「チェリー」ではギターもヴォーカルも健闘しているというか無難にこなしているなという印象ですが、どっちも難度がやや高めの「I LOVE YOU」ではちょっぴり不安定に聴こえる部分もあります。ぼくはこの曲が好きじゃないのでそう聴こえるだけかもしれませんが。美咲のアクースティック・ギター弾き語りは年々技術が向上していますので、2017年時点ではまだ未熟な面も垣間見えたのかもしれません。

 

ラウンド・コーナーに入って「タッチ」(岩崎良美)「夏の扉」(松田聖子)「学園天国」(フィンガー5)「DESIRE -情熱-」(中森明菜)。このあたりの曲とヴォーカルになると、もはや完璧に美咲の自家薬籠中のもので、すばらしいできばえ。文句をつけるところはなにもないですね。ポップでキュートですし、美咲の声の資質が曲によく似合っていて、これ以上ない魅力をふりまいています。

 

特に「夏の扉」と「学園天国」は絶品じゃないですか。どう聴いても美咲のために書かれたポップ・ソングかもと思えるほど。2017年当時、いやいまでも、演歌や、歌謡曲でもしっとり路線のものばかりオリジナル曲だと歌ってきている美咲ですが、本当はこういったポップス・ナンバーのほうが持ち前の資質に合致しているかもしれません。「学園天国」の毎コーラス終わりでグリッサンド(びょ〜んとメロディをなめらかに下降させること)するあたり、強烈な魅力にぼくは骨抜きになりました。

 

(written 2020.5.12)

2020/05/14

コロナで暇?シリーズ(1)〜 もう一回観る岩佐美咲 1st コンサート DVD

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https://www.amazon.co.jp//dp/B01CYI54BA/

 

岩佐美咲のファースト・ソロ・コンサート(2016年1月30日、浅草公会堂)を収録した DVD『岩佐美咲ファーストコンサート〜無人駅から新たなる出発の刻』を観かえす機会がありました。テーマは、いままでに五作ある美咲のコンサート DVD を(コロナでヒマだから)もう一回観て、コンサートでしか歌っておらず CD には収録されていない曲をピック・アップして、ちょちょっと感想を記しておこうということです。

 

三年前にはじめて観たときの感想はこちら↓
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2017/03/post-206d.html

 

『岩佐美咲ファーストコンサート』で聴ける、その前でも後でも CD に収録されていないワン・タイム・パフォーマンスはぜんぶで以下の四曲。

 

・アンコ椿は恋の花
・天城越え
・女のブルース
・東京ブギウギ

 

あんがい少ないなあというのが現在の印象ですね。三年前最初にこの DVD を観たときはたくさんあったような気がしていましたが、当時は美咲のことをまだあまり知らなかったためだったんでしょう。この当時は CD 未収録でもその後録音して発売されたというものだってあります。そのへんふくめ、遅れてきた美咲ファンのぼくもいまでは理解しているというわけです。

 

上記四曲「アンコ椿は恋の花」「天城越え」「女のブルース」「東京ブギウギ」は続けて歌われ DVD にも連続収録されているものの、「東京ブギウギ」はラウンド・コーナー(美咲が客席をまわり写真におさまりながら歌う)の一曲目なので、ちょっと外して考えたほうがいいかもしれません。「アンコ椿は恋の花」「天城越え」「女のブルース」の三曲はコンサート前半部におけるカヴァー・ソング・コーナーを形成していて、ある種の大プチ・クライマックスです。

 

都はるみの「アンコ椿は恋の花」は典型的ド演歌ですが、美咲はかなりうまく歌いこなしていますよね。もともとキュートでチャーミングでポップなナンバーでもあるだけに、美咲のような歌手には資質的に似合っている曲と言えましょう。どなたが曲のチョイスをしたのか知りたいところです。美咲の声には深みと可愛らしさが共存していて、なかなかの聴きものですよ。

 

この「アンコ椿は恋の花」でも実感することなんですが、美咲は歌と自身との距離のとりかたが実にうまいなと思うんですね。付きすぎず離れすぎず、ちょうどいい頃合いの適切な距離を保つことが、たぶん生まれつきできる才能を持ち合わせているんじゃないでしょうか。ときにシリアスに、別な箇所ではキュートな発声をしてみせたり、しかし全体的に歌の世界を突き放す冷静さが常に声にあります。裏を返せば歌の世界がいつもどこか他人事なのかもしれませんが、べったり入り込みすぎる歌手より心地いいですからね。

 

中村とうようさん(音楽評論家、故人)が、歌手は歌の世界に入り込みすぎないほうがいい、歌手と歌はべったりくっつかないでいるべきだ、適度な距離がないと歌がきれいに聴こえないのであるといった意味のことをどこかで書いていましたが、そんなことばも思い出しつつ美咲の『岩佐美咲ファーストコンサート』を聴いていくと、続いて石川さゆりの「天城越え」が来ます。

 

この曲なんかはわりとシリアスな歌で、さゆりはどうも感情移入しすぎなんじゃないかと思える部分があるわけですが、美咲の天然な、もとい、天才的なナチュラル&スムース歌唱法によって、さゆりとはまた違った世界を表現することに成功しておりますね。激烈な曲ですけど、美咲ヴァージョンだとさっぱり感があって聴きやすく、「あなたを殺していいですか?」なんていう歌詞も本気じゃないんだなとわかって安心です。

 

藤圭子の「女のブルース」。演歌というより歌謡曲寄りですが、ここで聴ける美咲ヴァージョンは出色のできばえです。この日のコンサートでナンバー・ワンの一曲だったかもしれないと思うほど。暗くて陰な曲なんですが、そんなところも美咲のキャラによく似合っていますね。しかし声は暗くなりすぎず、かといって明るくないちょうどよい適度な頃合いの伸びを保つという難度の高い技をさりげなく繰り出しておりますね。

 

さて「女のブルース」がこの日の出色の出来だったと書きましたが、実は「津軽海峡・冬景色」もこの日のとってもすばらしい内容ですよね。CD に収録されている既発曲ですが、この日のコンサート・ヴァージョンはそれをはるかに凌駕する完璧な歌です。美咲にとっては演歌歌手デビューのきっかけになった思い出深い一曲でくりかえし歌ってきていますが、このファースト・コンサート・ヴァージョンがぼくが聴いたなかではトップじゃないかと思えます。

 

なんたってこの日の「津軽海峡・冬景色」は音程が完璧です。一曲を通し一瞬たりともかすかにも音を外しません。さらに、声にこもる情緒感、艶や色が絶妙で、ここまでの表現をファースト・コンサートで実現できていたとは今回初発見で、驚きですらありました。この曲、昨2019年11月21日のけやきホールでも歌われたんですが、客席で聴いていたぼくは、う〜んこの曲は(思い出の曲だけど)相性イマイチなのか?と思ってしまいましたからね。そんなことなかったです。たまたまその日の体調だったんでしょう。

 

ところで今回『岩佐美咲ファーストコンサート』を久しぶりに観て、ぼくはちょっと冒頭部で泣いてしまいましたね。美咲も泣いているんですけれども。出だし1曲目が「初酒」で、イントロの演奏がはじまり幕が上がってライトが当たりそこに立っている着物姿の美咲も、人生初コンサートという不安と緊張が極大で、右手で両目の涙をぬぐっているんです。身体は小刻みに震え、顔もこわばっています。音程もフラフラ。

 

そんな美咲の姿を観ながら歌を聴いていくうちに、震え涙ぐむ美咲と同様、なぜだかぼくもまた泣いちゃったんです。どうしてだったんでしょう?美咲の姿も歌もすっかりおなじみになっているはずです。号泣というほどじゃありませんでしたが、どうして涙が出てきてしまうのか自分でもわからなかったですね。2曲目の「鞆の浦慕情」になっても涙止まらず。ホンマなんでや?

 

そんな「初酒」や「鞆の浦慕情」でも、またコンサート全体がそうなんですが、この日のコンサートは生演奏のバンドが音を出しているんですね。コンサート終盤で美咲がメンバー紹介をしているのによれば、ドラムス、ベース、ギター、ピアノ、キーボード、キーボード、ヴァイオリン。音だけ聴くとオーケストラみたいな感じがしますが、キーボード・シンセサイザーによるものでしょう。

 

で、生演奏だから CD ヴァージョン通りでは必ずしもないのが新鮮で、美咲の歌をふだん CD や歌唱イベントなどでどんどんたくさん聴いていますがどれもカラオケなんですね、だから伴奏はいつも同じ。コンサートでも二回目以後はカラオケなんです。それがこのファースト・コンサートだけはバンドの生演奏ということで、とっても聴きごたえがあってすばらしかったです。

 

テンポなんかも微妙に違っていて、幕開けの「初酒」は CD ヴァージョンよりほんのかすかにだけ遅いような気がしました。ほかにも生きているバンドの演奏だなと実感できる瞬間、時間がたくさんあり、またもう一回美咲のコンサートを生バンド伴奏で聴いてみたいと痛切に思ったりもしましたね。

 

(written 2020.5.11)

 


※【参考資料】岩佐美咲 CD 全曲リスト(アルバム収録の既発シングル曲は省略)。抜けているものがあったらご指摘ください。

 

無人駅
ヘビーローテーション(演歌ヴァージョン)
翼をください
瀬戸の花嫁
帰郷

もしも私が空に住んでいたら
フライングゲット(演歌ヴァージョン)
あじさい橋
津軽海峡・冬景色

鞆の浦慕情
恋するフォーチュンクッキー(演歌ヴァージョン)
異邦人
赤いスイートピー

初酒
履物と傘の物語
20歳のめぐり逢い
レット・イット・ゴー〜ありのままで〜(演歌ヴァージョン)

ごめんね東京
ハロウィン・ナイト(演歌ヴァージョン)
一歩目音頭
川の流れのように

鯖街道
ふたり酒
石狩挽歌
なごり雪(アクースティック・ヴァージョン)
若狭の宿
糸(ライヴ)
木綿のハンカチーフ(ライヴ)

佐渡の鬼太鼓
夢芝居
空港
下町の太陽
旅愁
手紙
大阪ラプソディー
風の盆恋歌

恋の終わり三軒茶屋
あなた
別れの予感
恋の奴隷
お久しぶりね
飛んでイスタンブール
冬のリヴィエラ
遣らずの雨

右手と左手のブルース
虹をわたって
年下の男の子
元気を出して
ふたりの海物語
ルージュの伝言

越冬つばめ
つぐない
北の宿から
ブルーライト・ヨコハマ
ハナミズキ
なごり雪
愛のままで…
待つわ
涙そうそう
ラヴ・イズ・オーヴァー
時の流れに身をまかせ
赤いスイートピー

潮来花嫁さん
学生時代
リンゴの唄
北の螢
なみだの桟橋
東京のバスガール
涙そうそう(アクースティック・ヴァージョン)


秋桜
魂のルフラン
まちぶせ
わたしの彼は左きき
千本桜
ごめんね東京(ライヴ)
初酒(ライヴ)
もしも私が空に住んでいたら(ライヴ)

2020/05/13

ストリーミング音楽をどうやってアンプにつないでいるか

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(4 min read)

 

ご質問をいただくことがなんどかありましたので、書いておくことにします。ぼくの一日の音楽ライフの大半は Spotify を使ってのものなんですけど、部屋にいるときは Mac パソコンで Spotify のストリーミング音楽を聴いています。それで、ぼくは CD を聴くのと同じオーディオ・アンプに接続してストリーミング音楽を聴いているんです。アンプの前面パネルのソース切り替えスイッチだけでカンタン。

 

Mac からどうやってアンプまでつないでいるかというと、Apple 社製の AirMac Express(現在は製造中止)を導入しているんです。AirMac Express は小型の Wi-Fi ベース・ステイションですが、無線音楽再生の規格である AirPlay 2に対応していて、パソコンやスマホの音を無線で AirMac Exoress まで飛ばせ、機器の背面にオーディオ出力端子がありますので、そこからは有線ケーブルでアンプ背面までつなげます。

 

ですから

 

Mac(Spotify 音源をストリーミングする)⇨ AirMac Express ⇨ ケーブル ⇨ オーディオ・アンプ ⇨ ケーブル ⇨ スピーカー

 

といった接続になっているんですね。

 

ぼくが AirMac Express を導入したのは2017年1月のことです。そのころまだ Spotify はやっていませんでしたが、Mac の iTunes にある音楽をなんとか高音質で鳴らせないものだろうかと調べていたんですよね。なにもしていないあいだは、なんと Mac の内蔵スピーカーからそのまま聴いていたんです。2015〜16年ごろのブログ記事はそれで書いていたんですよ。

 

最初は USB ケーブルで Mac から有線でアンプにつなげることを考えて、実行もしていました。音質的に満足していましたが、ノート・パソコンに電源ケーブル以外のものが差し込まれているのが生理的にどうしても我慢できず、なんとか Mac → アンプ間を無線接続できないだろうかと悩み、よく調べてみた結果、AirMac Express にたどりついたわけです。

 

触れましたように AirMac Express は製造と販売が終了していて、通常の方法では入手できませんので、これから無線音楽再生システムを構築しようと考えていらっしゃるみなさんには推薦できません。しかし調べてみたら同様のことが可能となる機器が他社から数点出ているみたいですね。Bluetooth 電波でつなげるレシーバー(背面にオーディオ出力端子あり)のようなものも見つかりました。たとえばこれ↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B00E9Q9DPE/

 

また、オーディオ・メーカー各社からネットワーク・オーディオ・プレイヤーがいくつも販売されているじゃないですか。それらはここ数年の新展開なのかもしれません。一万〜数万円で導入できるみたいです。そのままアンプの上に載せられるような形状ですし、接続も容易のようです。ぼくもちょっとそれを考えてみようかなといくつかピック・アップしています。

 

いずれにせよ、いまや CDではなくストリーミングで音楽を聴くというのが主流ですから、オーディオ・メーカー各社がそれに対応した新製品を販売しているというのはとてもよくわかることですね。ぼくが魅力を感じているのはこれです↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B07F7M13CB/

 

スマホやパソコンから Bluetooth 接続でそのまま対応するスピーカーに直結なさっているかたが大半かもしれませんが、不足を感じなければそれでいいと思いますし、Bluetooth スピーカーのなかにはかなりしっかりした音質のものだってあります。ぼくも Bose 製など四個ほど持っていますよ。これなんかいい音を鳴らします↓
https://www.amazon.co.jp//dp/B06Y3YLKP9/

 

また高性能なヘッドフォンやイヤフォンだって多数ありますしね。空間で音を鳴らすためのさらなる高音質を求めるならば、ネットワーク・オーディオ・プレイヤーの導入を検討するということになるのでしょうか。

 

(written 2020.5.11)

2020/05/12

ロックにおけるラテン・シンコペイション(4)〜 スパイダース篇

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(3 min read)

 

https://www.youtube.com/watch?v=ar9qMlAU_T0

 

レイ・チャールズ「ワッド・アイ・セイ」、ビートルズ「アイ・フィール・ファイン」の話をしたら、やっぱりザ・スパイダース(日本)の「バン・バン・バン」のことを言わなくちゃいけませんよねえ。いやあ、もうカッコイイのなんのって本当に。ラテン・ブルーズであるスパイダースの曲「バン・バン・バン」は、シングル盤「いつまでもどこまでも」の B 面として1967年10月25日に発売されたものです。

 

1967年にこんなのがあったわけですから、当時すでに日本にはしっかりした日本語ロックがあったことの証左ですけど、このスパイダースの「バン・バン・バン」、直接的には英マンチェスターのビート・バンド、ザ・マインドベンダーズの1965年「ラヴ・イズ・グッド」にインスパイアされてできあがったものらしいです。
https://www.youtube.com/watch?v=ySherI3MBLI

 

これを聴くと、「バン・バン・バン」でかまやつひろし(井上孝之かも)が弾くギター・リフはそのまんまですよね。でもこういったロック界におけるラテン・リズムの活用は、たぶんぼくのみるところだいたいがレイ・チャールズの1959年「ワッド・アイ・セイ」から持ってきているものだと思うんですね。
https://www.youtube.com/watch?v=xTIP_FOdq24

 

マインドベンダーズのばあい、さらに「ラヴ・イズ・グッド」の前年にビートルズの「アイ・フィール・ファイン」のレコードが出ていたわけですから、参考にしなかったとは考えにくいです。
https://www.youtube.com/watch?v=WrAV5EVI4tU

 

つまり、レイ「ワッド・アイ・セイ」(1959)→ビートルズ「アイ・フィール・ファイン」(64)→マインドベンダーズ「ラヴ・イズ・グッド」(65)→スパイダース「バン・バン・バン」(67)と、こういったおおざっぱな見取り図というか流れを描くことができると思うんですね。その上、「バン・バン・バン」には、ビートルズ「アイ・フィール・ファイン」からの直接流入もかなりあると思えます。

 

特に毎コーラス終わりで「バンバン・ババババ・ババババン」とハモリでコーラスを入れてふくらませるところなんかにも、ビートルズの影響を感じますよね。しかしレイのにもビートルズのにもマインドベンダーズのもない、スパイダースならではの特色は、リズムのこのがちゃがちゃしたにぎやかな色彩感です。グループのリーダーでドラムスの田邊昭知がかなりすごいラテン・リズムを演奏をしていますが、その他のメンバーもパーカッション類を担当しているんだなとわかります。あるいは多重録音かもしれません。

 

こんなにぎやかなでカラフルでラテンなリズム表現があるので、スパイダースの「バン・バン・バン」はまるで祝祭のような派手さ。聴いていて心が浮き立って、本当に楽しくいい気分です。堺正章のリード・ヴォーカルも色気があってカッコイイ。1967年の時点で、日本のこのロック・ナンバーは史上最高の突き抜け感を示していたんだと言えますね。それに一役も二役も買ったのが(UK ビート由来の)ラテン・シンコペイションだったということです。

 

(written 2020.3.31)

2020/05/11

「アイ・フィール・ファイン」ではじけたビートルズ

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(6 min read)

 

The Beatles / Past Masters

https://open.spotify.com/album/3GmCXW10kLxmZrEY0JpRlw?si=qUVeUFCIRuqARE_xDTt_OA

 

ビートルズのシングル盤音源を集大成した『パスト・マスターズ』は現在二枚組ですけれども、もともと2009年リマスターまでは初期シングル曲を収録した『Vol. 1』(1965年分まで)と後期の『Vol. 2』との二枚バラ売りだったものです。以前も書きましたね。この音楽家はシングルをたくさん出し、そのなかには公式アルバムに収録されないものも多かったので、1988年の公式初 CD 化の際にまとめられたんです。

 

それで、ビートルズの足跡は、ある意味シングル曲を順番に聴いていけばたどれるという面もあるように思いますが、最近気づいたことは、「アイ・フィール・ファイン」(1964年10月18日録音)のあたりから総合能力が格段に向上しているなということ。『パスト・マスターズ』をただなにげなく流しているだけでも、そこでハッ!とわかる違いがあります。

 

「アイ・フィール・ファイン」はラテン・リズムを使った曲で、たぶんレイ・チャールズの「ワッド・アイ・セイ」(1959)を下敷きにしたんでしょう。そんなのはそれまでのビートルズ楽曲に、オリジナルでもカヴァーでも、皆無でしたから、突如の変貌に驚きます。ビートルズにとってはコンテンポラリー・ヒットだったレイの「ワッド・アイ・セイ」はこれ↓
https://www.youtube.com/watch?v=xTIP_FOdq24

 

このレイの「ワッド・アイ・セイ」は、いわばルンバ・ブギ・ウギとでもいうようなものだと思うんですが、1959年ですからね、アメリカの黒人リズム&ブルーズの世界もラテン・フレイヴァーを存分にたたえていたころです。ビートルズの連中は米国産 R&B のレコードをたくさん聴いていましたから、これも間違いなく知っていたでしょう。

 

聴いて知っていて、これはおもしろい、自分たちでもこんな曲をやってみたいと考えて、それで「アイ・フィール・ファイン」みたいなものが仕上がったんでしょう。しかしそれまでのビートルズの足跡を考えると、まるで突然変異のように聴こえます。わりとナイーヴでストレートなブルーズ・インフルエンスト・ロック・ピースばかりでしたからね。

 

「アイ・フィール・ファイン」ではラテン・リズムを活かしたソング・ライティング、アレンジ、入り組んだ演奏をこなし歌う能力など、総合的にぐっと一段ビートルズが階段を昇ったのがわかると思います。こういった複雑でありながらタイトに仕上げるといった例がそれまでのビートルズになかったかというと、実は一曲だけあるんです。それが「抱きしめたい」(I Want To Hold Your Hand、1963)。

 

「抱きしめたい」ではハンド・クラップが活用されているでしょう、その手拍子のリズムにはあきらかにクラーベの痕跡があります。跳ねてシンコペイトしていますからね。それもふくめこの曲は全体的にそれまでのビートルズの楽曲とはちょっと違う入り組んだ構成を聴かせているし、キラキラしていて若干ゴスペル・ライクな高揚をもみせ、バンドとしての成熟を準備したのだとも思えますね。これじたいメガ・ヒットしたんですけど。

 

「アイ・フィール・ファイン」なら、「抱きしめたい」ではまだほのめかしだったそんなラテン・クラーベ感覚が存分に発揮されていて、アンプを通してのフィード・バック・サウンドをイントロに据えるという大胆な試みや、全体にメリハリをつけた複雑な構成とあいまって、ロック楽曲としてこれ以上ない実験でありながら、同時にタイトな完成を聴かせているんですね。演奏にも歌にもまったくほころびや躊躇がありません。

 

おもしろいのはストレートなロックンロール・ナンバーでも「アイ・フィール・ファイン」の前のものと後のものとではかなり様子が違っているということです。前者ならたとえばラリー・ウィリアムズのカヴァー「スロウ・ダウン」(1964年はじめ録音)と、後者ならやはりラリーの曲である「バッド・ボーイ」(1965年5月録音)や、オリジナルだと「アイム・ダウン」(1965年7月録音)を比較してみてください。

 

「スロウ・ダウン」はストレートなロックンロール・ナンバーで、ピアノが三連のリフを叩いている(ポール?)のが大きな特色です。ジョンのリード・ヴォーカルのラインにも、バンドの演奏にも、特に入り組んだ工夫は聴かれません。ロック・ミュージックのばあい、こういう素直にそのまま表現したようなナイーヴさが大きな魅力につながったりしますね。

 

ところが同じラリー・ウィリアムズの曲でも、約一年以上後に録音された「バッド・ボーイ」ではストップ&ゴーを活用して演奏にメリハリをつける工夫が聴きとれます。ドラムスだけでなくタンバリンのサウンドがリズムにニュアンスをもたらしているし、リズム感もやや複雑です。特にジョージが弾いているのかな?ジョン?リード・ギターのオブリガート・フレイジングには、跳ねるシンコペイションがありますね。

 

ポールが書いて歌う「アイム・ダウン」ともなれば、こんなに複雑な構成の曲を書きアレンジし演奏し歌えるということが、あの「ラヴ・ミー・ドゥー」のバンドだったのにと思うと、かなり驚きですよね。ポールが歌う背後でバンドの演奏が進んだり止まったりしていますが、その出入りもかなり複雑で難度が高そう。しかもヴォーカルともども迫力満点です。ピッタリの呼吸で合わせるのはむずかしい、レベルの高い一曲じゃないですか。

 

1962年にレコード・デビューしたビートルズですけど、約二年か三年が経過したあたりから、こういった入り組んだリズム表現や難度の高いアレンジを使った曲を書いたりしていて、そんなサウンドを問題なくこなせる演唱能力も備わったんだなとわかります。シンプルさ、野卑さがある意味ウリのロック・ミュージックですけど、ニュアンスに富んだ表現をビートルズも1964/65年ごろからするようになったんですね。

 

そのきっかけというか第一号がラテン・リズムを効果的に活用した「アイ・フィール・ファイン」や、その次のシングルだったジャマイカ音楽ふうのバックビートを持つ「シーズ・ア・ウーマン」(1964年10月録音)だったんじゃないでしょうか。こういったラテン〜カリビアン要素が、やはりビートルズのようなバンドにとっても音楽をふくらませ豊かにする大きなきっかけだったのです。

 

(written 2020.3.30)

2020/05/10

(わさみんきっかけで知った)福田こうへいの南部民謡がすばらしい

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(4 min read)

 

https://www.amazon.co.jp//dp/B00FALR82C/

 

歌手、福田こうへいを知ったのは2018年の11月、高知市内のホテルの一室でのことでした。それにしては書くのが遅くなってごめんなさい。そのとき、わさみんこと岩佐美咲ちゃんの歌唱イベントに参加するため(今治市と)高知市を訪れていたんですね。イオンモール高知内のでイベントでわさみんが、今夜放送の NHK-BS「新・BS日本のうた」に出演しますので観てくださいと告知してくれたんです。

 

それでわさみんイベントが終わってホテルに戻り、落ち着いてから夕食を食べるためイタリアン・レストランに向かいました。食事を終えてホテルに戻り、時間になったので部屋にあるテレビ受像機のスイッチを入れてみたというわけですよ。それでわさみんだけでなく、同じく出演している福田こうへいを知りました。福田は記憶ではたしか二曲歌ったと思います。

 

その晩のその番組にはわさみんや福田だけでなく何組も出演していたのに、いまだに憶えているのはわさみんと福田こうへいの二人だけなんですから、よほど福田の歌が印象に残ったんですね。福田はふだんは演歌歌手として活動しているみたいですが、その日、2018年の11月の高知市内のホテルで観たテレビ番組では個人的に民謡のほうが耳と脳に強く刻み込まれたのです。

 

福田こうへいは岩手県出身で現在も岩手に住んで活動しています。当地に根差した南部民謡こそ福田の得意レパートリーで、あの日高知で観たテレビ番組でも、民謡のほうで歌ったのはたぶん「南部牛追唄」だったんじゃないでしょうか。なにはともあれお聴きください。これを、福田の歌う「南部牛追唄」を聴けば、その絶品な喉に惚れてしまうこと必定です。福田こうへいなんて名前もぜんぜん知らなかったぼくが、高知市内のホテルで観て、いまだにその姿、声が脳裏に強く焼きついていて、忘れられないんですから。

 

・福田こうへい「南部牛追唄」
https://www.youtube.com/watch?v=87nbviqtlWs

 

どうです、いやあすごい喉ですよねえ。張りがあってよく透き通ったこの艶やかな美しい声、中低音部での伸び、特に高音部でのキラメキとあざやかさには舌を巻きます。こういう声は持って生まれた才能ですよね、きっと。福田こうへいは演歌歌手デビューもしているけれど、どうやら南部民謡こそ本来の活動領域みたいで、こういった「南部牛追唄」みたいなものを歌ってこそ真価発揮ということになるんじゃないですかね。そういう声質だと思えます。

 

南部民謡こそ福田こうへい本来のレパートリーということで、彼が南部にかぎらず東北地方の民謡をひろく歌った CD アルバムをぼくは買いました。Spotify では聴けないもんですから。それが『みちのく民謡ベスト』(キング、2013)。たぶん編集盤でしょう。いままでに福田が歌った民謡のうち、みちのくとの限定でそんな曲ばかり選んで収録しているもののようです。

 

そんな福田こうへいのアルバム『みちのく民謡ベスト』でも1曲目がやはり「南部牛追歌」で、そのほか岩手県民謡が最も多く収録されています。青森の「津軽じょんから節」「津軽よされ節」や、秋田の「秋田草刈唄」「秋田おはら節」、あるいは宮城の「宮城長持唄」などもありますね。いわゆる南部地方は現在の県境を越え東北地域一体にひろがるものなので、こういった収録になっているんでしょう。

 

福田こうへいは父親が民謡歌手の福田岩月で、自身は23歳から民謡を習いはじめたそう。そう読むと遅いような気もしますが、それでも2012年6月に第25回日本民謡フェスティバルでグランプリを受賞するなど数々のコンクールで優勝、呉服店で営業をしていたけれども脱サラし、その後出身地を活かした演歌曲「南部蝉しぐれ」でシングル・デビューを果たしたという経歴の持ち主です。

 

演歌歌手として活動し、紅白歌合戦にも出演するなど活躍をみせている福田こうへいですが(それにしては2018年11月まで福田を知らなかったぼく)、そのいっぽうで歌手活動の原点ともいうべき民謡活動も一貫して続けていて、CD も出し、テレビの歌番組などに出演しては「南部牛追唄」などで絶品の喉を味わわせてくれているというわけです。

 

(written 2020.3.25)

2020/05/09

都はるみの演歌グルーヴ

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都はるみ / 都はるみゴールデンベスト

https://open.spotify.com/album/2v2TfTCg9yrX55xM1IlPG7?si=rFSlEffEQmK_LiR5nOKt0A

 

2015年のライヴ・コンサート・ツアーを最後に現役歌手活動を停止している都はるみ。きのう『都はるみを好きになった人』というトリビュート・アルバムの話をしましたが、カヴァー・ヴァージョンを聴けば、やっぱりはるみ本人のオリジナル歌唱を聴きたくなるというもの。それで Spotify でさがして聴いてみたんです。Spotify にはベスト盤みたいなものがたくさんありますが、現実、CD なんかでも同じ状況なんじゃないでしょうか。

 

だからどれでもいいからなにか適当に、と思ってピック・アップした2008年リリースの『都はるみゴールデンベスト』。出だしの「アンコ椿は恋の花」「涙の連絡船」「好きになった人」の三連発で、もう完全ノック・アウトですよね。個人的に最近こういったいかにもな古式ゆかしき演歌唱法から遠ざかりつつありますが、それでも聴けば聴いたで感動します。こういうのを正統派演歌グルーヴと言いたいですね。

 

もとから曲がいいっていうのも大きいですよね。これら三曲はいずれも典型的な演歌というか、ズンタタズンタタっていうリズムで、よっこいしょといいながら乗っていくような、そんな曲です。古いと言われようが、な〜んだ演歌じゃんと言われようが、はるみの歌で聴けばとってもいい感じに響きますから。楽しいうれしいというこの気分に嘘偽りはありません。

 

はるみのこの独特の節(こぶし)まわしもいいですよね。フレーズ途中や終わりでリキを入れてぐわ〜っと声を濁らせるところ、胸に迫ります。ソフトにやさしくことばを置いていくんじゃなく、もっとこうぐ〜っと強く声を張ってシャウトするような、そんな歌いかたですよね。日本の演歌、と言われてまず頭に浮かびそうなティピカルなというかステレオタイプかもしれませんが、それを編み出し定着させたのがはるみですから。

 

はるみの歌いかたの特色のひとつとして、フレーズ終わりでヴィブラートを強くかけ伸ばすとき、必ずしも音程を正確にヒットせず、ややフラット気味に声を止め(つまり上げきらず)、そのままでグワグワとヴィブラートで揺すりまくるといったことがあると思うんです。ある種、聴き手の気持ちというか情緒、フィーリングをわしづかみにするやりかたじゃないかなと感じます。わざと音を上げきらないでフラット気味のままでおくというのは、たぶん意識してやっているんでしょう。

 

揺れる心情、不安定な情緒を的確に表現するこんなはるみの歌唱法、後年は、簡単に言えば引退を撤回しての復帰後は、もっとストレート&ナチュラルなやりかたで歌ったものだってありますが、個人的には1980年代前半までの、特に「アンコ椿は恋の花」「涙の連絡船」「好きになった人」とか、それからなかんずく「大阪しぐれ」とか、そのへんで聴ける典型的なはるみブシにぞっこんなんですね。

 

そう、昨日も書いたんですけど、特に「大阪しぐれ」。も〜う、この曲のことがぼくは大好きで大好きでたまらず、だれの歌で聴いてもいいけどはるみのオリジナル・ヴァージョンはもう至高最高のものだとしか思えないんですね。これはヴォーカルもいいけど、それ以上に曲がチャーミングな絶品だということ。作詞作曲編曲の全面にわたって文句のつけようがないですね。作詞吉岡治、作曲市川昭介、編曲斉藤恒夫、完璧な仕事です。

 

「アンコ椿は恋の花」「涙の連絡船」「好きになった人」や、あるいは「大阪しぐれ」なんかでもそうなんですが、歌われている内容は必ずしもハッピーなものじゃありません。っていうか最初のそれら三曲はかなりつらいロスト・ラヴの歌ですよね。ところがはるみの歌を聴いてみてください、そこにはぐっと堪える心情というより、底抜けにといいたいほどの明るさがあるでしょう。曲の旋律がそうだからということなんですけど、はるみの声のトーンにも暗さや落ち込みはありません。

 

なかでも(「大阪しぐれ」は別格として)「アンコ椿は恋の花」と「好きになった人」。明るく奔放に、あっけらかんと笑い飛ばしているかのようなフィーリングすら、このはるみのヴォーカルには聴きとれます。だからこそこういった失恋すらもキュートでチャーミングに響くと思うんですね。ポジティヴなトーンが声にあると思うんですが、はるみが失くした恋を歌うときのこういった突き放したようなヴォーカル表現がぼくは本当に大好きです。

 

(written 2020.3.24)

2020/05/08

都はるみを好きになった人

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v.a. / 都はるみを好きになった人

https://open.spotify.com/album/5B923bnHGhe2fh3UMX9PUl?si=5Ue2WluOS_O2ijzQJ_28Zw

 

都はるみ再評価の機運があったりするんですか?シーンとか傾向とか動向とか、そういったたぐいのことにまったくうといのでわかりませんが、最近『都はるみを好きになった人 〜 a tribute to HARUMI MIYAKO』(2020)というアルバムが出たみたいです。いろんなひとがはるみの代表的なレパートリーを歌ったもので、これ、なかなか楽しいんですね。はるみが所属する日本コロムビアからの発売ということで、ある意味オフィシャル・トリビュートみたいな面があるのかも。

 

アルバム『都はるみを好きになった人』はぜんぶで九組による九曲を収録。順番に聴いていくと、まず最初1曲目の UA「北の宿から」なんかはあまりピンと来ませんね。個人的にグッとくるのは4曲目、ミッツ・マングローブの「花の乱」から。その前、2曲目「好きになった人」を一青窈が歌うのも悪くないと思うものの、ちょっとしっとりしすぎているような気がするんです。一青窈カラーですけどね。ミッツの「花の乱」も妖艶系ですけど、歌とアレンジがいいですね。ミッツは歌うまいですよね。はるみとはまったく別な世界をつくりだすことに、声で、成功しています。

 

続く5曲目「アラ見てたのね」からが本当にこのアルバムがよくなってくるところ。これは浜野謙太+民謡クルセイダーズの歌と演奏で、おもしろおかしいサウンドでやっているのがとてもいいです。もとからそういうユーモラスな曲ですしね。最初プランジャー・ミュートをつけたトランペットの音が出るだけでニンマリ。その後も民謡系の曲だということで、民謡クルセイダーズの本領発揮というべきうまあじの演奏に乗せ、ハマケンが快調に歌います。声もよく出ているし、ホーンズのソロも似合っています。

 

そして6曲目「大阪しぐれ」。アレンジと演奏がダブ・バンドのリトル・テンポで、歌手が畠山美由紀なんですけれども、これ、どうですか、最高じゃないですか。ぼくはもともと以前から「大阪しぐれ」という曲そのものが大好きでたまらないということがあってのことですけど、この(ダブふうなところはない)レゲエ・アレンジがぴったり似合っていて、スティール・パンのサウンドもすばらしいし、もう言うことないと思いますよ。畠山もちょうどよい加減のヴォーカルで文句なし。

 

そんな「大阪しぐれ」がこのアルバム『都はるみを好きになった人』のぼく的ハイライト。いやあ、もうなんど聴いてもみごとです。こればっかりリピート再生しちゃいますね。この「大阪しぐれ」があるからこそ、この一曲だけでも、このアルバムの存在価値があろうというものです。ちょっと褒めすぎましたか、でもそれくらいこのリトル・テンポ+畠山美由紀の「大阪しぐれ」のことがぼくは大好きです。もとから曲が好きなので、でありますけどね。

 

続く水谷千重子(友近)&Chage の7曲目「浪花恋しぐれ」にかんしては、はっきり言って曲が大嫌いで、なんなんですかこの男尊女卑セクハラの典型みたいな歌詞は!?って思ってしまいますから、それだけで評価できないんですけど、でもこの曲、メロディ・ラインはあんがいキュートなんですよね。だからいまでも歌い継がれているのでしょう。でも耳に入れることにむかしから抵抗感がありますけどね、この歌詞は(「芸のためなら女房も泣かす、それがどうした文句があるか」)。

 

8曲目「アンコ椿は恋の花」で口直し。こ〜れはむかしから大好きな曲です。歌詞もメロディもポップでキュートでチャーミングですからね。歌うのは高橋洋子、ってあのエヴァンゲリオン歌手の高橋洋子でしょう、意外です、こんなド演歌をとりあげるなんて。企画側から高橋に話が行ったのだと思いますが、みごとに歌いこなしています。最初から演歌歌手だったのかと思えるほどのはまりっぷりですよね。アレンジはデジタル・ビートにクラシカルなストリングス&オペラティックなクワイアを混入させているのが勘所でしょう。

 

そしてアルバム・ラスト「千年の古都」を大竹しのぶが歌いますが、個人的にはとっても好感度高いです。大竹はあっさりさっぱりと、ある意味淡白にさらっと歌いこなしているでしょう、それがいいんです。アルバム『都はるみを好きになった人』ヴァージョンも好きな「大阪しぐれ」や「アンコ椿は恋の花」などは抜擢された歌手も演歌系歌唱を意識していて、それで大健闘なんですけど、「千年の古都」を歌う大竹にはそんな気負いが微塵もありません。この大竹のナチュラル&スムース&ストレートなあっさり歌唱こそ、成熟した表現というべきでしょうね。

 

どこかで読みかじった断片的情報によれば、なんでも近年、都はるみのレパートリーをカヴァーしたり CD 収録したりする歌手が増加中なんだそうで、やっぱりはるみ再評価のムーヴメントがあるか、あるいはそんなことでもなく、もとから歌手としても曲もファンが多いということかもしれませんけれども。

 

(written 2020.3.23)

2020/05/07

民謡クルセイダーズに降参

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民謡クルセイダーズ / エコーズ・オブ・ジャパン

https://open.spotify.com/album/04KzmTdQCWmCi37v8r74vw?si=Umsw2X0FRYGE9muGN3i8HA

 

民謡クルセイダーズ。アルバム『エコーズ・オブ・ジャパン』がリリースされた2017年当時、一部でたいへんに評判が悪く、それですっかり聴いてみる気すらなくしていたようなところがありました。昨2019年あたりからかな世界での活躍を主に Twitter でさかんに見るようになり、いささか気になりはじめて、それでたぶんはじめてちゃんとアルバムを聴いてみたんですね。

 

そうしたら『エコーズ・オブ・ジャパン』、とってもいいじゃないですか。すっかり気に入ってヘヴィ・ローテイションしています。1曲目の「串本節」から快調で、このノリ、グルーヴがいいですよね。民謡ということで歌手の資質が問われるわけですけど、リード・ヴォーカルのフレディ塚本はホンモノでしょう。そのままノリよく4曲目の「真室川音頭」まで飛ばします。途中、Meg も歌っています。「真室川音頭」のこの熱狂的なグルーヴはアルバム前半のハイライトですよね。

 

民謡クルセイダーズのサウンドのキモは、パーカッション陣と、それからホーンズのリフかなと思いますが(田中克海の弾くエレキ・ギターかもしれないけど)、たとえば1曲目の「串本節」でも4曲目の「真室川音頭」でもそれが痛快にわかります。ラテン・リズムをベースとしながらも、ジャズやファンクの要素もふんだんにとりいれています。にぎやかで楽しいし、「真室川音頭」のこのグルーヴなんか、抵抗できませんよね。フレディ塚本の喉も聴かせます。リズムやホーンズなどのアレンジはだれがやっているんでしょう?合いの手のヴォーカルもいいですね。

 

民謡ですから歌詞の世界観がいかにも古色蒼然たるものなのはしかたがないです。日本語だから聴いてわかっちゃうのが難点ですけれども、なるべく無視して聴き込まないようにしています。それよりもこのリズムの躍動感やアンサンブルのカラーリングの多彩さ、主役ヴォーカリストの声の艶などに主に耳を傾けているんですね。間奏に入る楽器ソロ(主にギターかホーン)もなかなか聴かせる内容でグッド。

 

Meg が歌う明るい調子の5「安木節」を経て(リズムのゆるいこれは全体のなかではチェンジアップかも)、アルバム中盤の6「秋田荷方節」7「といちん節」の低くたなびくダークで不穏な感じもいいです。ちょっぴり『暴動』のスライ&ザ・ファミリー・ストーンを思わせたりもしますね。その後はアッパーな8「炭坑節」9「会津磐梯山」で激しく大きく盛り上がります。ここがこのアルバムのクライマックスに違いありません。

 

「炭坑節」は(ティト・プエンテの、というより)サンタナの「オイェ・コモ・バ」と合体しているし、「会津磐梯山」はデューク・エリントンの「キャラヴァン」と融合しながら3・2クラーベを大胆活用しています。いずれも激しいラテンなダンス・グルーヴをうまく表現できているし、民謡だって元来からこういったダンス・ミュージックだったわけですから、そんなエッセンス(本質)をうまく煮詰めて抽出・拡大できているんじゃないかと思いますね。

 

最後の「相撲甚句」はフレディ塚本の無伴奏独唱で極上の喉を聴かせてくれますが、とにかくなにはともあれにぎやかに楽しくやろう、踊ろうっていうエンターテイメント精神が横溢しているバンド&アルバムで、痛快なグルーヴに満ちていて、好感度は高いですね。

 

(written 2020.3.22)

2020/05/06

これがストーンズのベスト・ライヴかも 〜『ザ・ブリュッセル・アフェア』

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The Rolling Stones / The Brussels Affair

 

昨日書いた『ライト・ザ・フューズ』きっかけで思い出し(どうして?)聴きかえしてみた、ローリング・ストーンズ1973年10月17日、ブリュッセルでの二回のショウから編纂・収録した『ザ・ブリュッセル・アフェア』。ダウンロードでのリリースは2011年だったみたいです。いまではフィジカルもあるんですって。当時バンド公式からダウンロードしたもので聴き、CD-R にも焼いていますから気分が向けばそちらでも聴きますが、このアルバムは80分弱で一枚におさまる長さであるにもかかわらず、商品 CD は二枚組だそうで、どうして?

 

ともかく『ザ・ブリュッセル・アフェア』はミック・テイラー在籍時のライヴ記録で、たぶんいままでにリリースされているストーンズの全公式ライヴ・アルバム中の最高傑作じゃないんでしょうか。それは出だし1曲目の「ブラウン・シュガー」を聴くだけで納得できると思うんですね。ひとことにしてミック・テイラー(左チャンネル)の極上のうまあじ。ほかの曲でもそうだし、それこそがこのライヴ・アルバムでいちばんの聴きものです。

 

「ブラウン・シュガー」だとミック・テイラーはずっとスライドで弾いていて、その音色もまろやかでコクがあり、とてもおいしい感じに聴こえます。スライドですからあまり速いフレーズはムリですが、テイラーは大きなフレーズでゆったりと乗って、バンド全体の急速調とのグルーヴの対比で絶妙なニュアンスを出していますよね。ほかの曲ではバンドのノリがゆったりめになると細かく速く弾いたりして、テイラーはいつでも全体のコントラストやバランスに気を配っているのがわかります。

 

「ブラウン・シュガー」では間奏ソロ(前半サックス、後半テイラー)のあと、演唱後半部でテイラーは指での押弦に切り替えて細かいフレーズをよどみなくオブリガートで入れているのもうまあじですね。そう、この『ザ・ブリュッセル・アフェア』でのテイラーはオブリでおいしいというのが大きな特長。ソロもたくさん弾いてそれもいいんですけど、オブリガートが実にいい感じで入っているんですよね。コード・カッティング役のキース・リチャーズとみごとなコンビネイションで、バンド全体での絶妙なグルーヴを生み出しています。

 

こういったことが2曲目以後についても言えます。「タンブリング・ダイス」までやって、その後5曲目からは1973年当時の最新作『ゴーツ・ヘッド・スープ』からの新曲コーナーに突入し、「アンジー」まで。このパートは個人的にそうでもない感じがします。アルバム『ゴーツ・ヘッド・スープ』があまり好きじゃないせいもあると思いますが、それ以上にまだライヴでこなれていないかもなあって感じるんですね。あ、そうそう、聴こえるキーボードはツアーにゲスト参加のビリー・プレストン。

 

そしてそれに続く「ユー・キャント・オールウィズ・ゲット・ワット・ユー・ウォント」「ミッドナイト・ランブラー」の二曲が、このライヴ・アルバムのハイライトに違いないでしょう。前者ではキースの弾くコード・ワークもさわやか。キースはミック・ジャガーのヴォーカルに(より高音で)ハモリもつけているんですね。この曲でのこのさわやかフィーリング、これがぼくは大好きなんです。そして、出ました、ミック・テイラーの必殺長尺ソロ!こ〜れが、このアルバムでの最大の聴きものでしょう!

 

「ミッドナイト・ランブラー」でも変幻自在なキースのカッティングとなまめかしくなめらかなテイラーのシングル・トーン弾きがからみあって、バンド全体のサウンドが生きているしセクシーだし、いやあ、聴きごたえありますよねえ。その後は黄金のヒット・パレードに入ってラストまで行きますが、現在のストーンズでは考えられない、っていうかほかのどの時期のストーンズでも聴けないのが、最終盤「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」「ストリート・ファイティング・マン」のメドレー。こんなにもタイトでシャープな演奏をしていたんですね。後者での、ミックが歌い終わってからのフリー・インプロ・パートでのモーダルな展開なども壮絶で妖艶、生唾ものです。

 

(written 2020.3.21)

2020/05/05

大音量で鳴らそうストーンズの『ライト・ザ・フューズ』

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The Rolling Stones / Light The Fuse: A Bigger Bang In Toronto 2005

 

近年のローリング・ストーンズのライヴ・アルバムではいちばん好きな『ライト・ザ・フューズ:ア・ビガー・バン・イン・トロント 2005』。2012年にデジタル・ダウンロード販売されたもので、あのころストーンズはバンド公式でどんどん未発表ライヴ音源をダウンロード販売していましたよね。廉価だったし、ぼくはぜんぶ買ったんじゃなかったかと思います。公式化した1973年ライヴの『ザ・ブリュッセル・アフェア』もあのころだったはず。

 

『ライト・ザ・フューズ」は2005年8月10日のトロント・ライヴ。久々のスタジオ・アルバム『ア・ビガー・バン』(2005)の発売にともなうツアーからの一幕ですね。あのスタジオ作のことをぼくは当時イマイチに感じていて、実はいまでもそうなんですけど、ダウンロードして聴いてみた『ライト・ザ・フューズ』はとってもよくて、はっきり言って感動しちゃったというほどだったので驚きました。

 

だって、『ア・ビガー・バン』の1曲目が「ラフ・ジャスティス」なんですけれども、ライヴ・アルバム『ライト・ザ・フューズ』の幕開けも「ラフ・ジャスティス」なんですよ。それがもうぜんぜん様子が違うわけです。だんぜんライヴのほうがいいんです。そもそも『ライト・ザ・フューズ』の特長は、若々しくナマナマしい、勢いがあるっていうことなんですけど、この「ラフ・ジャスティス」はいったいどうしちゃったんですか、すごいじゃないですか。

 

それにギターの音がとても raw なんですよね。キースにしろロニーのスライドにしろ。「ラフ・ジャスティス」でもスタジオ録音の『ア・ビガー・バン』で聴けるギターの音とぜんぜん違っていて、ここまでライヴの音のほうがいい、ナマナマしく迫力があるというふうに録れているのは奇跡的とも思えます。それはこの曲だけでなく2曲目以後も全曲について言えることなんです。現場の音響もよかったんでしょうね。

 

そう、『ライト・ザ・フューズ』の舞台となったトロントのフェニックス・コンサート・シアターはキャパ約1000人ぽっちだそうで、ストーンズほどのビッグ・スターが21世紀にそんな小さな会場でライヴできることにもビックリですが、でもストーンズはライヴ・ツアーの最初はいつも、特にカナダで、そういった小規模会場でやりますよね。現場の空気感とともに会場の音響のことも念頭にあったかもしれないです。つまり録音することがあらかじめ決まっていたかも。

 

ナマナマしくサウンドが肉感的、セクシーで、あまりの迫力(特にギターのそれ)にのけぞりそうになる1曲目の「ラフ・ジャスティス」に続き、2曲目「リヴ・ウィズ・ミー」もセクシー。そのまま5曲目の「デッド・フラワーズ」まで行き、続くオリジナルのスロー・ブルーズ6曲目「バック・オヴ・マイ・ヘッド」でいったん休憩みたいな感じでしょうか。

 

そこまでのバンド・サウンドのあまりの迫力にはマジ降参です。ラフなんだけど、だからこその勢いも感じる演奏で、これぞロック・バンドの理想型みたいなサウンドですよね。ボビー・キーズのサックスだって、演奏開始の合図の「ワン、トゥー、スリー、フォー!」の掛け声だって(たぶんチャック?)、あまりに肉感的。こりゃいったいどうなってんの?

 

1974年のアルバム『イッツ・オンリー・ロックンロール』でやっていたテンプテイションズ・ナンバーの「エイント・トゥー・プラウド・トゥ・ベッグ」をはさんで、バンド・メンバー紹介へ。それがストーンズのライヴではいつもキース・ヴォーカル・パートへのきっかけですね。

 

キースは当時の最新作から「インファミー」を歌いますが、これはスタジオ・ヴァージョンのほうがいいかも。ところでミックのメンバー紹介の声を聞くと、キーボードの Chuck Leavell はチャック・レヴェルですよね、リーヴェルじゃなくて。

 

後半はボブ・マーリーやオーティス・レディングのカヴァーを織り交ぜてやっていますが、おもしろいのはオーティスの「ミスター・ピティフル」では管楽器隊がまるでメンフィス・ホーンズみたいに響くというところ。だれがアレンジしているのかわかりませんが、考えてみたらストーンズのアメリカ南部テイストはむかしからの伝統芸能で間違いないところですよねえ。そのままの米南部色を保ったまま、続く「タンブリング・ダイス」に突入。ホーンズの響きもやはりいいですね。

 

そして怒涛のラスト二連発「ブラウン・シュガー」「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」でエクスタシー。ド迫力のライヴが終わります。いやあ、なんど聴いてもこの『ライト・ザ・フューズ』の肉感サウンドの前には全面降参です。こんなにナマナマしい、特にエレキ・ギターの音がこんなに色っぽいストーンズって、近年ほかで聴けないんじゃないですか。このアルバム、CD になっていないはずですけど、いまでもダウンロードできるんでしたっけ?

 

(written 2020.3.20)

2020/05/04

ダイナマイト・ロカビリー・シンガー 〜 タミ・ニールスン

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(4 min read)

 

Tami Neilson / Chickaboom!

https://open.spotify.com/album/1Gke51utVy7IagtyciRGMA?si=2haPg88lQQqslYRb8DFpcw

 

萩原健太さんのブログで知りました。
https://kenta45rpm.com/2020/02/21/chickaboom-tami-neilson/

 

なんだよ(笑)、この髪型、この表情、この声。まさしくダイナマイト!っていうようなタミ・ニールスンの2020年作『チカブーン!』が今日の話題です。タミはカナダ生まれとのことで、そこで両親や兄弟とともにニールスンズというカントリー・バンドをやっていて、ジョニー・キャッシュのサポートをやった経験もあるそうです。両親亡きあといまはニュー・ジーランドに居を構えて音楽活動しているみたいですね。

 

なんだかテンション高いですねっていうか、すごい迫力ですよねえ。これはタミみずからウリにしているものみたいで、見た目のことはおいておくとしても、声の張りや歌いかたにも独特のポーズというか姿勢が感じられます。音楽的にはカントリー・ロカビリーっていうか、そんな雰囲気ですかね。タミはまだ40代半ばだから世代じゃないはずですけど、生まれ育った家庭環境が彼女をそんな音楽へと向かわせたのでしょう。

 

日本で言えばむかしの日活映画を観て劇中歌でも聴いているような、そんな楽しみかたもできるタミの『チカブーン!』、なかには鮮明なラテン調が二曲あるのが個人的には耳を惹きます。4曲目の「クイーニー、クイーニー」と8曲目の「エニイ・フール・ウィズ・ア・ハート」。前者では打楽器伴奏だけで歌い(バック・コーラスもタミの多重録音?)、その跳ねる独自のリズムも心地いいですね。

 

後者8曲目の「エニイ・フール・ウィズ・ア・ハート」のほうはラテンっていうより直接的にはロイ・オービスン・スタイルのロカビリー・チューンなんですけど、そもそもそのロイ・オービスン・スタイルっていうのがカリビアン・テイストをともなっていましたからね。タミのこれでもアクースティック・ギターかきならしとパーカッションで表現しているリズムのシンコペイションが快感です。メロディはさわやかで、このアクの強い歌手のキャラとは相容れないように一瞬思えて、実はちょうどいい感じに響きます。

 

だからタミは決して虚勢を張っているとかいうんじゃなく、音楽家、歌手としてしっかりした下地を持っているんだと思いますね。このロイ・オービスン的なロカビリー・チューンの8曲目「エニイ・フール・ウィズ・ア・ハート」(やラスト10曲目の「スリープ」)で聴ける、なんというかストレートな誠実さ、歌手としてのオネスティみたいなことが、個人的にはこのアルバムのクライマックスで、収穫です。

 

そのほか、グッド・オールド・デイズを彷彿とさせるソウルフルなカントリー系のロカビリー・チューンばかり並んでいて、タミは威勢よく歌っています。9曲目の「シスター・メイヴィス」はどうやらストレートなメイヴィス・ステイプルズへのオマージュ・ソングみたいです。でもこの曲はこのアルバムのなかではイマイチかな。全体的はやはりタミのこの迫力に圧倒されつつのけぞるような楽しみかたをするのがふさわしいアルバムかなと思います。

 

(written 2020.3.17)

2020/05/03

ルデーリの魅力(1)

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(4 min read)

 

Ludere / Ludere

https://open.spotify.com/album/5y4KYWbLE7tiRQZ3txUy8Q?si=65VNwbmVTJi7cNN3JsSzAw

 

ブラジルはサン・パウロのジャズ・グループ、ルデーリ(Ludere)。21世紀のコンテンポラリー・ジャズに興味があるみなさんのあいだではわりと目にする「ルデーリ」ということばなんですけど、そこからちょっとでも外れたらまったく聞かない見ない名前ですよねえ。ジャズ聴きのかたがたですら話題になさっていない気がするし、ネットで検索してもほとんど解説など文章が出てこないし、ホンマどないなってるんや〜?

 

ともかくルデーリはブラジルの新世代ジャズ・グループで、その音楽性にブラジルらしさは皆無と言えます。四人組で、トランペット(ルビーニョ・アントネス)+ピアノ(フィリップ・バーデン・パウエル)+ベース(ブルーノ・バルボーザ)+ドラムス(ダニエル・ジ・パウラ)。牽引役はピアノのフィリップみたいですね。ぼくはドラムスのダニエルのセッション・ワークからルデーリに行き着きました。

 

ルデーリはいままでに三枚のアルバムを出していますが、その第一作目『ルデーリ』は2016年の作品。このグループはわりとカッチリしたアレンジ・ワークと統率のとれたアンサンブルで魅せるのが大きな特色であるようにぼくには聴こえます。ソロ時間もそこそこ長いんですけど、それよりアンサンブル・ワークでピシッと決めているのが気持ちいいっていう、そういった音楽じゃないですかね。

 

ソロやインプロに寄りかかっているんじゃなく、均整と統率のとれたアンサンブルの展開を中心に音楽を組み立てていく、盛り上がりもアンサンブルで、っていうのが21世紀的コンテンポラリー・ジャズの大きな特徴であるとぼくはみていますが、ルデーリはそういった傾向をはっきり表現している代表格かもしれません。ぼくの考えではブラジルの(ブラジル色を持たない)ジャズ・グループに特にこの傾向が強いような気がしています。

 

そのいっぽうルデーリでぼくがいちばん気に入っているのがダニエルのドラミング。細かくビートを割っていくその手法は本当に心地よく、ルデーリのアルバムではいつもダニエルを聴いているんですね。それはトランペット(やフリューゲルホーン)とかピアノとかのソロ時間でもそうです。背後で叩くダニエルの細かなビートがいいな〜と感じて耳を傾けているんですよね。

 

ダニエルのビートはちょっとマシンっぽくもありますよね。打ち込み的っていうか、これ、もちろんダニエルの人力ドラミングなんですけど、たとえばアルバム『ルデーリ』2曲目の「ルデーリ」を聴いてみてください。ハイ・ハットの使いかたといいスネア・ワークといい、まるで計算され尽くしたコンピューター・ビートを聴いているみたいな気持ちがしませんか。それを人力演奏でやっているというのがダニエルのドラミング。

 

ドラミングにしろ四人のアンサンブルにしろ、本当に細部まで綿密に計算されたトータル・ワークで攻めているルデーリですが、ルビーニョのトランペット・サウンドにはヒューマンでファジーなあたたかみがあります。シャープに突き刺さるような音ではなく、ふっくら丸い音色が聴こえるでしょう、それで大きくてゆったりした豊かな歌心のあるフレーズを展開していて、なめらかさもあいまって、このグループの大きな魅力になっているなと思います。

 

全体的にメカニカルというか細かく綿密に組み立てられた音楽をやっているように思えるルデーリですから、聴感上の印象もとても落ち着いている、クールであるということになるでしょうが、それでもたとえばアルバム3曲目の「ガーフィールド」や、なにより6曲目の「サルセイロ」ではかなり熱く激情的に燃え上がります。ソロ内容もそうだし、ダニエルのドラミングも躍動的に昂まって、個人的にはこういったあたりにもグッときますね。

 

(written 2020.3.16)

2020/05/02

『マイルズ・スマイルズ』がこのクインテット最高傑作かも

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(5 min read)

 

Miles Davis / Miles Smiles

https://open.spotify.com/album/7buEUXT132AA4FPswvh9tV?si=lkiCXnRpRNuCjjiVdy_wOQ

 

今日の文章は以前書いたこの記事の続編です。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2020/02/post-a46f35.html

 

オレンジ色にベタ塗りされたジャケット・デザインがきらいで、たぶんそのせいだけで、長年遠ざけてきたマイルズ・デイヴィスのアルバム『マイルズ・スマイルズ』(1966年録音67年発売)。やっぱりジャケットは大切ですよ、ちゃんとていねいにつくらなくっちゃ、聴かず嫌いを生み出す一因にもなります。ぼくのばあい『マイルズ・スマイルズ』のことを気持ちを入れてしっかり聴いてみたのがわりと最近のことなんですから。

 

聴いてみたらこ〜れがなんと!すんばらしいじゃないですか、…ってわざとらしいですね、本当はいきなり理解したわけじゃなくて、最近1960年代マイルズ・クインテットの諸作をなんども聴きかえしているでしょ、それでちょっとづつ気付くようになったというのが実態です、『マイルズ・スマイルズ』が傑作であるということに。驚きですらありました、長年毛嫌いしてきたのがまるでウソみたい。

 

『マイルズ・スマイルズ』は、いまの気分では、続く『ソーサラー』『ネフェルティティ』などを超えてはるか上空にあるように思えます。このクインテットの最高傑作じゃないんですかね。どこがそんなにかというと、快活なグルーヴ・チューンにおけるポリリズム活用のおもしろさがすばらしいと感じているわけなんです。1「オービッツ」3「フットプリンツ」5「フリーダム・ジャズ・ダンス」6「ジンジャーブレッド・ボーイ」。静謐ナンバーだとこのクインテットの標準レベルかなと思います。

 

1曲目「オービッツ」で、まずホーン二管のイントロに続きテーマが出ると同時に叩きはじめるトニー・ウィリアムズがもうとんでもなくすごいとほれぼれしちゃいます。もうこの出だしだけでこのアルバムはすごいんじゃないかと予感で身震いするような思いですよ(じゃあいままでのぼくはなんだったんだ?)。マイルズ、ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコックとソロが続くあいだもトニーの爆発は止まりません。

 

しかもトニーの叩いているのは(4ビート感覚を維持しながらの)変形ラテン8ビートですよね。つまりひとりポリリズムを体現しているわけですが、ロン・カーターの弾くベース・ラインはずっと4/4拍子のラニング・ベースをかたくなに維持し続けています。そのロンの4ビートと8ビート・ラテンなトニーのドラミングが重なって、なんとも言えない複雑なレイヤーを形成していますよね。各人のソロ内容よりもバンドの、なかでもトニーの、このグルーヴを聴くべき一曲かと思います。

 

グルーヴ重視型の演奏になっているというのは、3「フットプリンツ」5「フリーダム・ジャズ・ダンス」6「ジンジャーブレッド・ボーイ」についても言えること。聴いていて、バンドの生み出すこのビートの快感に身をひたしているだけでじゅうぶん満足です。和声面でのアプローチのこともいろいろと言われるアルバムなんですが、ぼくに言わせたらリズム面でのエヴォルーションのほうがいっそう重要ですね。「フットプリンツ」の各人のソロ途中でリズム・パターンがパッと変化するところなんか、聴いていて新鮮ですよね。

 

肝心なのは、トニー個人でもバンド全体でも、4ビートと8ビート系ラテン・リズムとの混交表現に至っているという点です。こういったポリリズミックなスタイルはそれまでのマイルズ・ミュージックにまったく聴けないし、この後もここまで鮮明なかたちになっては表れていません。だからこそ『マイルズ・スマイルズ』が異様なというか特異な光をもって輝いているように思えるわけなんですね。バンド・リーダーであるマイルズの意図だったことは言うまでもありませんが、実はトニー個人の資質によるところも大きかったのではないでしょうか。

 

メインストリーム・ジャズの4ビート感覚もしっかり維持しつつの8ビート・ラテン・ポリリズムという重層表現であるというところに、この時期のマイルズらしさ、保守派らしさが出ているなとも思います。この後はもっと明快なロック/ファンク・ビート方向に両足とも乗せることになっていきますが、1966年『マイルズ・スマイルズ』だとまだジャズ・ファンにも理解・支持されやすいし、なおかつ革新的でもあってロック、ファンク・リスナーにもアピールできうる柔軟さを持っていますよね。

 

(written 2020.3.19)

2020/05/01

ぼくがどういうところで新着アルバムを知るかというと(ある種の謝辞)

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(5 min read)

 

http://elsurrecords.com


https://diskunion.net/latin/

 

個人のブログやツイートなどを参考にこのアルバムを自分もとりあげようと思ったときは、感謝と敬意を込めていつも記事冒頭にその旨いつも記していますよね。多くは bunboni さん、Astral さん、萩原健太さんのブログで、それにくわえいろんな音楽友人のツイートなどです。けれどもそうじゃないかなりの数、ぼくは音楽ショップのツイートやホームページを参照しています。ほとんどエル・スールとディスクユニオンですけどね。

 

そういったいわばお店の商売ページ、商売ツイート、それから音楽雑誌など、で知った新着アルバムのばあいは、ぼくは記事冒頭に謝辞を書いておりません。たぶんそんな必要はないと思うんですよね。そう、だからたとえばバンドキャンプなどで出会った作品についてもいちいちバンドキャンプで教えてもらったなどと書いていないです。あくまで一個人が(仕事でなく)趣味でやっているばあいについてだけ謝辞を書くことにしているというわけです。このへんはやっぱりぼくのなかで一つの線引きがされているんですね。

 

それで音楽ショップのページやツイートでという意味では、もうなんといってもディスクユニオンの情報発信が圧倒的です。質も量もいい。Twitter アカウントがお店やジャンルごとにいくつもあるんですが、ぼくはぜんぶフォローして読んでいます。特に参考にしたり頼りにしているのが「ディスクユニオン・ラテンブラジルワールドミュージック」(@diskunion_Latin)で、オンライン・ショップのアカウントです。

 

このディスクユニオンのラテンブラジルワールドミュージックさんは、発信がすごいんですよね。端的にいって一日のツイート数が多いということなんですけど、こんな新作が入荷した、発売されたのがいついつ入荷予定であるとか、しかもそのとりあげる CD やレコードもおもしろい興味深い良質のものが多いし、なかにはブラジルのミナス派など個人的にはピンとこないものもありますが、多くはたいへんそそられる上等なものなんですね。

 

もちろんオンライン・ショップのアカウントですから、実店舗のアカウントじゃないので、だからネットでの情報発信に力が入っているということなんでしょう。これがも〜う本当に、助かるんですよね。ぼくみたいに田舎住まいでレコード(CD)ショップなんか、もちろんディスクユニオンだって、一軒もないっていう、すべてはオンラインでまかなうしかないっていう人間にとっては、ネットの情報がある意味「すべて」ですから。

 

この点、同じように参考にしているエル・スールさんのばあいはやっぱり実店舗に足を運んで…、ということが大前提になっているのは間違いないですね。だからホームページにしろ Twitter、Facebook にせよ、ネットでの情報発信にイマイチ熱心じゃないように見えています。だいたいページに載せたりツイートしたりするその前に店頭には出ていて、それがわりとすぐに売り切れているみたいじゃないですか。そうなったらネット情報がすべてのぼくなんか手も足も出ません。

 

それはしょうがないとして、エル・スールは原田さん個人がやっている、ディスクユニオンはチームであるという大きな違いがありますから、だからお店単位で比較することはむずかしいわけですけれども、しかしエル・スールはもっと相当がんばらないとディスクユニオンに負けちゃってるような気がしないでもありません。もちろんエル・スールにしか入荷しない CD も多いので一概にどうこうは言えませんけどね。

 

それでもってぼくがエル・スール HP やディスクユニオンの Twitter を参考にしていると言っても、それはネットでそれを読んで、あっ、こういう新作が入荷したんだなという情報だけゲットしているという意味であって、CD で買うかどうかはまた別問題なんですね。情報だけゲットしておいてそれを Spotify でさがして、あればそのまま聴き、文章を書き、CD は買わずじまいということが増えています。というかそればっかり。

 

だからなんだか申し訳ない気分になったりもしています。エル・スールもディスクユニオンもフィジカルを売るお店で、だからその入荷情報をネットで流しているだけなのに、ぼくはそこから新作リリース情報だけかすめとって、同じものを Spotify で探して聴いて CD 買わないんですもんねえ。経済的な理由だからしょうがないんですけれども、それでもたまにこれはフィジカルがほしい Spotify で聴けるけれども買っておきたいと感じるばあいもちょっとはあります。

 

もちろんストリーミング・サービスにはないアルバムで CD がリリースされているというものがあれば買ってみることはいまだに多いんですけれども。

 

そんなことで、とりあげて文章化するアルバムや音楽家など、特に新着リリース作品についてぼくはどこで情報を得ているかというと、だいたい今日書いたことですべてです。信頼している個人のブログやツイート、エル・スールの HP、ディスクユニオンの各 Twitter アカウントからの発信、その他ネット情報(だいたい Twitter)、音楽雑誌と、これらでぜんぶ。ごくごくたまに自力で見つけたとかいうこともあるんですけど、1%くらいじゃないですかね。

 

(written 2020.3.6)

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