ダイナマイト・ロカビリー・シンガー 〜 タミ・ニールスン
(4 min read)
Tami Neilson / Chickaboom!
https://open.spotify.com/album/1Gke51utVy7IagtyciRGMA?si=2haPg88lQQqslYRb8DFpcw
萩原健太さんのブログで知りました。
https://kenta45rpm.com/2020/02/21/chickaboom-tami-neilson/
なんだよ(笑)、この髪型、この表情、この声。まさしくダイナマイト!っていうようなタミ・ニールスンの2020年作『チカブーン!』が今日の話題です。タミはカナダ生まれとのことで、そこで両親や兄弟とともにニールスンズというカントリー・バンドをやっていて、ジョニー・キャッシュのサポートをやった経験もあるそうです。両親亡きあといまはニュー・ジーランドに居を構えて音楽活動しているみたいですね。
なんだかテンション高いですねっていうか、すごい迫力ですよねえ。これはタミみずからウリにしているものみたいで、見た目のことはおいておくとしても、声の張りや歌いかたにも独特のポーズというか姿勢が感じられます。音楽的にはカントリー・ロカビリーっていうか、そんな雰囲気ですかね。タミはまだ40代半ばだから世代じゃないはずですけど、生まれ育った家庭環境が彼女をそんな音楽へと向かわせたのでしょう。
日本で言えばむかしの日活映画を観て劇中歌でも聴いているような、そんな楽しみかたもできるタミの『チカブーン!』、なかには鮮明なラテン調が二曲あるのが個人的には耳を惹きます。4曲目の「クイーニー、クイーニー」と8曲目の「エニイ・フール・ウィズ・ア・ハート」。前者では打楽器伴奏だけで歌い(バック・コーラスもタミの多重録音?)、その跳ねる独自のリズムも心地いいですね。
後者8曲目の「エニイ・フール・ウィズ・ア・ハート」のほうはラテンっていうより直接的にはロイ・オービスン・スタイルのロカビリー・チューンなんですけど、そもそもそのロイ・オービスン・スタイルっていうのがカリビアン・テイストをともなっていましたからね。タミのこれでもアクースティック・ギターかきならしとパーカッションで表現しているリズムのシンコペイションが快感です。メロディはさわやかで、このアクの強い歌手のキャラとは相容れないように一瞬思えて、実はちょうどいい感じに響きます。
だからタミは決して虚勢を張っているとかいうんじゃなく、音楽家、歌手としてしっかりした下地を持っているんだと思いますね。このロイ・オービスン的なロカビリー・チューンの8曲目「エニイ・フール・ウィズ・ア・ハート」(やラスト10曲目の「スリープ」)で聴ける、なんというかストレートな誠実さ、歌手としてのオネスティみたいなことが、個人的にはこのアルバムのクライマックスで、収穫です。
そのほか、グッド・オールド・デイズを彷彿とさせるソウルフルなカントリー系のロカビリー・チューンばかり並んでいて、タミは威勢よく歌っています。9曲目の「シスター・メイヴィス」はどうやらストレートなメイヴィス・ステイプルズへのオマージュ・ソングみたいです。でもこの曲はこのアルバムのなかではイマイチかな。全体的はやはりタミのこの迫力に圧倒されつつのけぞるような楽しみかたをするのがふさわしいアルバムかなと思います。
(written 2020.3.17)
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