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2020/06/03

わさみんにこれを歌ってほしい(3/3)〜 ヌエボ演歌へ向けて

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(9 min read)

 

https://open.spotify.com/playlist/4S7XAEg40aIYaI8tiIZdyp?si=LS7-k_llQEOPO5Q6Mi0N5w

 

わさみんリクエスト・シリーズの最終回は演歌篇です。わさみんこと岩佐美咲はいちおう演歌歌手という看板を背負っているし、いままでもたくさん演歌を歌ってきていますので、そのフィールドにある過去の名曲の数々からカヴァーしてみてほしいと思うものをちょちょっと選んでみました。もちろんいままで CD や DVD で歌っていないもの限定です。

 

それでおとといもきのうもそうなんですが、なにもないところから素手で過去の名曲を思い出して書いていくということはぼくにはむずかしいことですので、参考にした曲集、アルバム、プレイリストがあるわけです。今日の演歌篇は Spotify で見つけた『昭和演歌ベストヒット100』というプレイリスト↓を下敷きにしながら書きました。
https://open.spotify.com/playlist/7aA2H0o8H37cJeyXu9GUI1?si=XHuFydW2QdO_aP8orZ77kQ

 

しかしこういった演歌の名曲群をつぶさに聴いていくのは、なかなかつらいばあいもあります。どうしてかといいますと、恋愛観、家族観、男女観など、ジェンダー問題関連でどうにも古すぎるというか、あまりにも旧態依然とした時代錯誤の考えに立脚した歌詞が多く、聴いていて腹が立ったりするんですね。耐えて忍ぶ女、世のなかは男性主導で女は従順にそれにつき従っていればいい、娘は結婚させたくないと思う父親、などなど、耳をふさぎたくなる時間もありました。「女子供」なんていうことばを疑問なしに使うかたには理解できないでしょうけど。

 

ですから、この曲はわさみん向けに推薦できない、とうてい歌ってほしくないと思うものがけっこうありました。演歌の世界だからしかたがない面もあるとはいえ、慎重に熟慮して、ジェンダー問題、人権関係でひっかからないもの、歌詞の世界が時代錯誤すぎないものというリミットをかけて選曲しました。ある程度古色ただよう恋愛模様や心理がつづられているのにはちょっと目をつぶったとしてもですね。

 

今日のプレイリストもオリジナルの発売順に並べました。

 

・アカシアの雨がやむとき(西田佐知子、1960、水木かおる&藤原秀行)
https://www.youtube.com/watch?v=ttyL7DcfcJM

 

・骨まで愛して(城卓矢、1966、川内康範&北原じゅん)
https://www.youtube.com/watch?v=wLtwSGTAkxg

 

・ラブユー東京 (黒沢明とロス・プリモス、1966、上原尚&中川博之)
https://www.youtube.com/watch?v=QV78dQsYSvo

 

・君こそわが命(水原弘、1967、川内康範&猪俣公章)
https://www.youtube.com/watch?v=BJr5KRC0ztE

 

・星降る街角(敏いとうとハッピー&ブルー、1972、日高仁)
https://www.youtube.com/watch?v=QPi5Q5x0jCw

 

・釜山港に帰れ(チョー・ヨンピル、1972、ファン・ソヌ)
https://www.youtube.com/watch?v=mXIue9a20bg

 

・喝采(ちあきなおみ、1972、吉田旺&中村泰士)
https://www.youtube.com/watch?v=hg34c1TBao8

 

・雨(三善英史、1972、千家和也&浜圭介)
https://www.youtube.com/watch?v=3mIbWMIGkMM

 

・夜空(五木ひろし、1973、山口洋子&平尾昌晃)
https://www.youtube.com/watch?v=oqJ4xKKQdek

 

・うそ(中条きよし、1974、山口洋子&平尾昌晃)
https://www.youtube.com/watch?v=qBWn48tOaTw

 

・東京砂漠(内山田洋とクール・ファイブ、1976、吉田旺&内山田洋)
https://www.youtube.com/watch?v=q_q6INQnEYs

 

・氷雨(佳山明生、1977、とまりれん)
https://www.youtube.com/watch?v=3VMVxDQW1zY

 

・舟唄(八代亜紀、1979、阿久悠&浜圭介)
https://www.youtube.com/watch?v=fp5XK18sRco

 

・大阪しぐれ(都はるみ、1980、吉岡治&市川昭介)
https://www.youtube.com/watch?v=VguFePgXLYw

 

・もしかして Part II(小林幸子&美樹克彦、1984、榊みちこ&美樹克彦)
https://www.youtube.com/watch?v=3avS6__451c

 

・居酒屋 (五木ひろし&木の実ナナ、1982、阿久悠&大野克夫)
https://www.youtube.com/watch?v=f6xKFm97YGE

 

・ふりむけば横浜(マルシア、1989、たきのえいじ&猪俣公章)
https://www.youtube.com/watch?v=Q60SZyvwpec

 

けっこう古い曲も混じっていますが、現代に再演されているものばかりです。そういう現代再演を聴くと、いい曲は時代を超える、たとえ流行歌でも、と痛感しますね。そうでありながらいっぽうでオリジナルをまた聴けばあらたな発見もあったりして、再解釈の余地と可能性を見出すというのも事実です。わさみんにはそういった観点からもとりくんでほしいですね。

 

ラテンなリズムをとりいれた曲が多いっていうのも(歌謡曲フィールドよりもいっそう)演歌界の特色を強く打ち出している部分かもしれません。今日のプレイリストを聴いていただければ、鮮明なラテン歌謡(「ラブユー東京」「星降る街角」など)ばかりでなく、ほぼどの曲にも跳ねるリズム・フィールがあって、演歌界は骨の髄までラテン色に染まっているんだなとの印象を強くします。わさみんだってテレサ・テン楽曲や「恋の終わり三軒茶屋」「右手と左手のブルース」でラテン・リズムをうまく歌いこなしていますから、そのへん問題ないと思いますね。

 

このことと関係あるかどうかわかりませんが、演歌/歌謡曲という線引きもかなり曖昧で、明確に区別できるものじゃないんだなというのもおととい来実感しています。わさみんだってどっちも分けへだてなくいっしょに歌ってきていますし、そもそも演歌も歌謡曲も実態は同じものですね。おとといの歌謡曲リストにもきょうの演歌リストにも、演歌・歌謡曲どっちも入っています。

 

たとえばおととい入れておいた欧陽菲菲(「雨の御堂筋」)やテレサ・テン(「愛人」)なんかは演歌でもいいし、きょうのちあきなおみ(「喝采」)を演歌に入れるのであればいっそう、との思いが強くなってきますよね。「アカシアの雨がやむとき」とか「夜空」とかだって歌謡曲でもいけると思いますし。おととい・きょうといちおう分けてはいますが、演歌と歌謡曲の線引きは実はできないものです。マルシアの「ふりむけば横浜」も歌謡曲っぽいかな。

 

アレンジ次第、歌いかた次第で古い演歌も現代的なやわらかい(歌謡曲的な)感じに響くということもありますしね。その点着目すべきは近年の坂本冬美です。以前もしっかり書いたつもりですが、冬美のここ数年の『ENKA』シリーズは、聴きやすいソフトでマイルドなサウンド・アレンジを施され、歌手も過剰な表現を抑えてふわっと歌い、演歌スタンダードの世界に斬新な相貌をもたらしています。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2019/06/post-0cb23c.html

 

このへんの冬美歌唱については、ずいぶん前にベスト・ソング・プレイリストを作成してありますので、ぜひご参考になさってください。いちばん上でリンクを書いたきょうの Spotify セレクションにもこの冬美 ENKA シリーズから三曲選んであります。
https://open.spotify.com/playlist/4QQsmZVXDK2HtrgVJpfKuy?si=V1eNFZ9dRkqh6k1SKR8y5Q

 

大切なことは、わさみんってそういったヌエボ演歌の申し子みたいなもんだということです。サウンド・アレンジこそ従来的な演歌のそれをそのまま採用してあっても、発声法、歌いこなしかたなんかは完璧に新世代のさわやかフィーリングでこなしていますからね。誇張したり持ってまわった声の出しかたをせず、すっとナイーヴに発音し、コブシもガナリもヴィブラートもなし、感情移入だってなしで、ナチュラル&ストレートに歌うさまは、冬美が最近ようやく身につけたネオ演歌唱法を生まれながらにして獲得しているといえ、わさみん=天才との感を強くします。

 

(written 2020.6.1)

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