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2020/06/16

ナット・キング・コールのラテン・ポップとジェイムズ・ボンドとの関係

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(5 min read)

 

https://open.spotify.com/playlist/7GlR8e592Xomud4vjHrN9h?si=1ex-ke2bQyS6dP8BzcBX1Q

 

ジャズに夢中になる直前に映画のサウンドトラックにはまっていた時期がちょっとだけあるんだという話は以前しましたね。映画音楽に夢中になることで、レコードを買う習慣ができて、音楽、特に器楽演奏音楽を好きになっていったわけですが、高校生のころの話で、いちばんのめり込んでいたのが映画『007』シリーズだったんです。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2019/04/post-e8c0.html

 

このシリーズをたくさん見たあげく、なかでも好きだったのはやっぱりショーン・コネリー時代で、『ロシアより愛をこめて』(1963年英国公開)や『ゴールドフィンガー』(同64年)などですかね。あのころの007映画にはなんともいえない雰囲気があって、本当によく観ていました。レコードを愛聴していた印象的な主題歌のことだってよく憶えています、っていうかいまでは音楽のことがいちばん強い残像です。

 

ちょっと聴いていただきましょう。まず『ロシアより愛をこめて』主題歌。この007シリーズ第二作のテーマ・ソングはインストルメンタルで(この映画シリーズには散見します)、でもマット・モンローがそのメロディを歌ったものがエンディング・クレジットで流れるんですね。メロを書いたのはライオネル・バート。
https://www.youtube.com/watch?v=Lcdmq07u2T8

 

次作『ゴールドフィンガー』では主題歌をシャーリー・バッシーが歌っています。シャーリーは007映画シリーズのトータルで(といってもシリーズもシャーリーも存命ですが)なんと三作品も主題歌を歌い、そんなのはシャーリーだけなんですね。007シンガーとも言えましょう。「ゴールドフィンガー」はジョン・バリー作。
https://www.youtube.com/watch?v=6D1nK7q2i8I

 

今日ぼくが言いたいことは、こういった全盛期の007映画シリーズの主題歌は、その数年前にナット・キング・コールが歌ってレコード・リリースしているラテン・ソングに酷似しているんじゃないかということです。007シリーズ主題歌のことは青春の記憶ですから薄れることはないんですけど、ナットのラテン・ソング集をなんども聴きかえしていて、なにかに似ている、なんだろう?とずっと思っていたんですね。それでこないだ、ハッ!と思い当たったわけです。

 

たとえばナットの『モア・コール・エスパニョール』(1962)に収録されている「トレス・パラブラス」。いちばん上で Spotifyプレイリストにリンクしておきましたが、いちおう YouTube 音源も貼っておきましょう。オズバルド・ファレス作。
https://www.youtube.com/watch?v=RX2lY9Z5LJI

 

あるいは『ア・ミス・アミーゴス』(1959)に収録されている「ナディエ・メ・アマ」もちょっと聴いてみてください。アントニオ・マリア作。
https://www.youtube.com/watch?v=3zcxU-TM6_Q

 

ナット・キング・コールに三枚あるラテン・ソング集アルバムにはこういう雰囲気のものが実に多いんでキリがないから二つだけにしておきます。もちろんこういったことはナットの資質ではありません。もとの曲を書いた作曲家、オーケストラのアレンジをして雰囲気をつくったアレンジャーらの貢献なんですね。

 

ナットは1950年代には世界的大スターだったし、英語圏の歌手であるということでイギリスでもひろく聴かれていたことはいうまでもありません。主にスペイン語で歌った三枚あるラテン・アルバムのレコード発売年は、それぞれ1958年、59年、62年。すぐにイギリスでも流通したでしょう。なんたって日本でもフル・オーケストラ伴奏でナットの歌うラテンは大人気だったんですからね。

 

007映画の第一作『ドクター・ノオ』が本国イギリスで公開されたのは1962年。ですからその前年かその前あたりから制作がはじまっていたでしょう。この第一作はジャマイカが舞台になっているということで、カリプソはじめカリビアン/ラテン・ソングがわりと使われているんですね。主題歌は例のインストルメンタルですが、挿入される劇中歌がいくつかあります。

 

大英帝国植民地主義の反映なんだとは思うんですが、たとえば「キングストン・カリプソ」↓
https://www.youtube.com/watch?v=mJR_yDtuyQs

 

またこれもわざと舌足らずのなまりを出して歌っているあたり、いかにもでクサイですが、「アンダーニース・ザ・マンゴ・トゥリー」↓
https://www.youtube.com/watch?v=XFUlC5fnhws

 

音楽的に007映画シリーズは第一作からこんな調子で、ラテン・フレイヴァー満載だったんですね。それと関係ありやなしや第二作『ロシアより愛をこめて』以後に提供された主題歌は、はっきりしたエキゾティズム(それも英国根性ですけれど)、セクシーな雰囲気、魅惑的な歌手、ドラマティックなオーケストラ・アレンジをともなって、ある種の香りを濃厚に、一時期は、放っていたんです。

 

その魅力をぼくなりにつきつめれば、ラテン音楽、ラテン・ソングで聴けるあのテイストであるということになり、007映画の音楽のそういった部分に特にナット・キング・コールは関係ないかもしれませんが、ナットのああいったアルバムもフル・オーケストラを起用して雰囲気を出しているし、主役歌手はポップ・スターであるといった点も考えあわせれば、そんなには突飛すぎない連想かもな、と思います。

 

(written 2020.4.23)

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コメント

う~~む、目から鱗ですねえ。
私、少しサントラの研究をしていたのですが、思いもよらない切り口です。
リンク先、チェックしましたが確かにエキゾチックなムードやオーケストレーションなど
これらの楽曲のDNAを受け継いでいるという説、納得ですね。

話は変わりますがシャーリーバッシーの没になったテーマ曲がありまして
彼女のCDに入っています。聞いてみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=P9uNZiWLBdI

サントラ音楽って、その時代の流行とか最新ヒット・ポップスとかをとりいれたりするんですよね。だから1960年代前半にはナット・キング・コールのラテンがはやっていたんだと思います。

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