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2020/06/07

ストーンズの近作でキースが歌うもの

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(6 min read)

 

https://open.spotify.com/playlist/6sy6EEBWZ5QZOzYKW7eqOE?si=sxbE8UgVRouc64cPCLJD3Q

 

ローリング・ストーンズでキース・リチャーズが歌うものの話は、以前一度したことがあります。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-0452.html

 

しかしこのときの文章はキースがストーンズを離れてソロ活動で歌ったものの話から入り、その後ストーンズでのキース・ヴォーカル・ナンバーへと移っていったのでした。しかもなんだか「スリッピング・アウェイ」(『スティール・ウィールズ』)で実質的にしめくくってしまっていますよね。いちおうアルバム『ヴードゥー・ラウンジ』からの曲もとりあげていますけど、オマケみたいな扱いでしかありません。

 

実は最近なんとなく聴きたくなって、ストーンズの『ヴードゥー・ラウンジ』(1995)『ブリッジズ・トゥ・バビロン(97)『ア・ビガー・バン』(2005)と、近作三つをじっくり聴きなおしたのでした。ストーンズにはこのあともう一個『ブルー・アンド・ロンサム』(2016)がありますが、ブルーズ・カヴァー集ということで、しかもキースは歌っていませんから、除外します。

 

それでストーンズでキースが歌った曲だけぜんぶまとめて、プレイリストをつくっておきました。それがいちばん上の Spotify リンクです。

 

というわけで、それら『ヴードゥー・ラウンジ』『ブリッジズ・トゥ・バビロン』『ア・ビガー・バン』に収録されているキース・ヴォーカル曲の話を今日はしたいのです。計七曲。本当はもう一曲、2002年リリースのベスト盤『フォーティ・リックス』にもキースの歌う新曲があるのですが、Spotify だと聴けません。だいたいベスト盤で99%は必要ないもののなかにちょっとだけ新曲を混ぜるとかそんなあこぎなフィジカル商売はやめてほしいです。

 

『ヴードゥー・ラウンジ』にある「ザ・ワースト」「スルー・アンド・スルー」の話は上でリンクした過去記事でもしていますが、そのときは断然「ザ・ワースト」がいいぞということでした。この感想はいまでも同じなんですけれども(「おれは最低」みたいな歌詞にはまったく共感できませんが)、聴きなおすと「スルー・アンド・スルー」もかなり聴けますよね。しかも「ザ・ワースト」のほうがキースお得意のヨレヨレ・バラード系であるのに対し、「スルー・アンド・スルー」はもっとしっかりしています。

 

アクースティック・ギターも混ぜながらサウンドをナチュラルかつカントリー・テイストな雰囲気でまとめるというのは二曲に共通する部分ですね。「スルー・アンド・スルー」のほうではドラマティックな展開も聴け、チャーリーのドラミングも強力、ロック・ナンバーっぽい曲調ですし、次作『ブリッジズ・トゥ・バビロン』以降につながっていくのは、むしろこっちのほうかもしれません。

 

その『ブリッジズ・トゥ・バビロン』はやや異例な作品。一作のなかになんとキースの歌うものが三曲もあるという、これはストーンズ史上初でいまでも唯一です。うち一曲「ユー・ドント・ハフ・トゥ・ミーン・イット」はレゲエ、というよりダブ・ナンバーで、以前もキースには「トゥー・ルード」というレゲエ・ナンバーがありましたから(『ダーティ・ワーク』1986)、得意なのかもしれないです。

 

ダブ・ナンバーでありかつヨレヨレ系じゃないちゃんとしたヴォーカルをキースも聴かせていますし、曲のサウンドもリズムもしっかりしています。もうこの1997年時期になると、どっちかというとキースにとっては例外的な曲想だったかもしれないですけどね。アルバムにあるほかの二曲「シーフ・イン・ザ・ナイト」「ハウ・キャン・アイ・ストップ」はやっぱりおなじみのユルユルなロッカバラード。

 

しかもそれら二曲はこのアルバムをしめくくるメドレーになっているんですね。メドレーといってもバラバラに録音されたものでしょうけど、ポスト・プロダクションで曲間なしにしてくっつけたんだと思います。それがもう絶妙な、えも言われぬいい感じを演出していますよね。本当に大好きな瞬間です、この二曲のあいだの移行の瞬間が。

 

「シーフ・イン・ザ・ナイト」は、サウンドもとても印象に残る一曲で、これはいったいなんでしょうか曲を通じてずっと聴こえるザラ〜ッとした音、スネアをブラシでなでているような、あるいはなにかの金属音か、ずーっとシャ〜〜ッッて鳴っているでしょう、それもまるで垂れ込める幕のように聴こえ、曲の歌詞や調子などを効果的に響かせるいいサウンド・エフェクトになっていますよね。ちょっと心がざわつきますけど。

 

「ハウ・キャン・アイ・ストップ」もなかなかおもしろい一曲で、典型的なキース節のヨレヨレ系ですけど、ヴォーカルが終了したあとの曲終盤の展開に耳をそば立ててしまいます。だれがアレンジとプロデュースをやったのか、ジャジーなソプラノ・サックスが出ます。それがなんとウェイン・ショーターなんですね。過去にソニー・ロリンズを起用したこともあるストーンズですけど(『タトゥー・ユー』1981)、なかなかやりますね。

 

しかも演奏終了後だってなかなか音が消えず、たぶんこれはガムラン(青銅)の音ですよね、パーカッシヴなサウンドが残り、余韻を演出します。そのガムラン・エピローグのパートは、特にこれといった必然性が本演唱から感じられないものですけど、なかなかおもしろいですよ。だれの発案だったんでしょう?演奏しているのはパーカッションとなっているジム・ケルトナーでしょうね、おそらく。

 

そんな感じで、キース・ヴォーカル曲が三つもあって、アルバム全体としてもなかなかおもしろい『ブリッジズ・トゥ・バビロン』の七年後の次作『ア・ビガー・バン』には、「ディス・プレイス・イズ・エンプティ」「インファミー」と二曲、キースの歌う曲があります。前者はやっぱりバラードですけど、後者はミドル・テンポで進むブルージーな一曲。ライヴでもよく歌っています。

 

こう見てくると、ストーンズでキースが歌うものに調子のいいロックンロールがなくなっているのがわかります。かつては「ハッピー」(『エクサイル・オン・メイン・ストリート』)「ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン」(『サム・ガールズ』)と、ある意味キースを象徴するものだっただけに、ちょっぴりさびしい気がしないでもないですね。

 

(written 2020.4.10)

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