アンゴラのキゾンバ
(4 min read)
v.a. / Kizomba de Angola, vol. 2
https://open.spotify.com/album/3KnrpXu7M8KDNUwdUVzowI?si=TfDk6TeWTqSrZ__mPJzbDA
いいジャケットですね。キゾンバのアンソロジーということなんでしょう、『キゾンバ・ジ・アンゴラ、vol. 2』(2012)。見かけたのはつい最近で、日本で CD なりが買えるようになったのは昨年あたりからじゃないでしょうか。ポルトガル産の編集盤ということみたいです。「Vol. 1」もあるんでしょう、そっちはチラ見したらジャケットがイマイチでした。
キゾンバといってもぼくはいまだよくわかっていないんですけど、それでも三年くらい前までに比べたらちょっとだけは聴いてきていて、ある程度特徴をつかみつつあるつもりです。同じアンゴラのダンス・ミュージックということで、歴史の長いセンバと比較してどうか?といったこともちょっとだけですね、わかりかけてくるようになりました。
ぼくがアンゴラのそういったダンス・ミュージックになんだかこだわっているようにみえるのは、ひとえにパウロ・フローレスのおかげというかせいです。Astral さんのブログで知りエル・スールで CD を買ったパウロの『O País Que Nasceu Meu Pai』(2013)がすばらしすぎる大ショックで、2017年は一年間この大傑作ばっかり聴いていたと言ってもいいくらい。
パウロはセンバの音楽家ということになっていて、しかし作品を聴くとかなりモダンな感じもするから、最初ぼくはセンバというのをモダン・ミュージック、アンゴラの最新流行だみたいに考えていました。その後キゾンバということばも知り、そう、ヨラ・セメードとかで、でしょうか、しかし聴いてみて、パウロとどっちが新感覚?とか音楽としてどっちが歴史が古い?みたいなこともわからなかったんですね。
そのへんの解説がどこにもないような気がしますからね(実はちょっとだけあるけど)。だから五里霧中なままセンバとされるものやキゾンバとされるものを自己流に聴いてきました。実際、あんまり差がないなあと思えることだってあり、でもちょっとづつ耳と知識が増えるにつれ、どうやらセンバのほうが歴史が長い、キゾンバは新しめの流行だとわかってきたんですね。どっちもアンゴラのダンス・ミュージックですが、センバは土着的、キゾンバはクラブ発祥みたいなところもあるでしょうか。
センバのほうが個人的にはややハードな感じがしていて、キゾンバはもっとこう軽いフィーリングをぼくは感じます。それからアンゴラ産リズムであるとはいえキゾンバにはズークの影響がかなり濃いですよね。曲によったらズークそのものじゃんと思えるものすらあるように感じます。ズークはフレンチ・カリブの音楽ですが、主に1980年代以後かな、大流行しました。
だからそれをとりいれたキゾンバも1980年代というか、もっとあと、80年代末や90年代に入ってからかな、アンゴラでかたちを整えるようになったんでしょう。ズークだけでなく、同国の伝統音楽であるセンバも吸収、それを簡易な打ち込み系打楽器中心でトラックを組み立てるみたいなことになったんじゃないですかね。
センバのほうがハードに思えると書きましたが、それは辛口ということで、対してぼくがキゾンバに感じる大きな要素はメロウネスです。センティメンタルな感じもするし、そのフィーリングはブラジルだったらサウダージと呼ばれるものかもしれないですけど、甘く切なく哀しい美しさ、その感覚をぼくはキゾンバに強く感じます。
デジタル・パーカッションでバック・トラックを組み立てるというのもキゾンバの大きな特色でしょうね。時代の古い音楽だったら不可能だった手法ですけれど、キゾンバのころにはコンピューターが出てきていた、しかもクラブなどを中心に展開した、ということで打ち込み系の打楽器音がメインなんでしょう。そのチープでスカスカなトラック感覚は、たしかにキゾンバを活かしたディーノ・ディサンティアーゴ(カーボ・ヴェルデ/ポルトガル)の最新作にも活かされているものです。
そう、ディーノ・サンティアーゴはアンゴラの音楽家じゃありませんが、パウロ・フローレスとも共演しているし、アンゴラ産の(センバや)キゾンバは汎ポルトガル語圏でひろく参照されるダンス・ミュージック、その構築手法となっているんでしょう。
(written 2020.5.5)
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