ナターリア・ラフォルカデのメキシコ古謡集
(3 min read)
Natalia Lafourcade / Un Canto por México, vol. 1
https://open.spotify.com/album/6yDcHjoEqNkkl9UC6KSlFE?si=vCJvte8ERuO_Yx0FZmV3gw
メキシコのナターリア・ラフォルカデ(Natalia Lafourcade)。いままでに二作出しているラテン・アメリカン古謡シリーズのことはこのブログでもとりあげました。今2020年の新作は、汎ラテン・アメリカというわけではなく、出身地のメキシコに限定しての、やはりルーツ探訪シリーズなんですね。メキシコに焦点を絞ったのには理由があったそう。
実はこれ、2017年にメキシコ中央部で起きたプエブラ地震で大きな被害をこうむったソン・ハローチョ・ドキュメンテーション・センターを再建するプロジェクトの一環として制作されたアルバムだということなんですね。ナターリアは昨2019年の11月、このドキュメンテーション・センター再建のためのベネフィット・コンサート『ウン・カント・ポル・メヒコ』、英語でいえば “A Song for Mexico” を多数のゲストを迎えながらロス・アンジェルスで行なったようで、そのコンサートのタイトルをそのまま流用して制作されたのが今回の新作アルバムというわけです。
アルバムはやはりメキシコの古い歌の数々に焦点が当てられた作品ということで、実際聴いてみてもわりとストレートにメキシカン・フォークロアをとりあげているなという印象です。いかにもなフォークロアから、それでもモダンなアレンジをほどこしたものまで様相はさまざま。だれがプロデューサー/アレンジャーなのかわかりませんが、ナターリアのばあい、多少はみずから手がけていそうな気もしますよね。ゲスト参加も多彩で豪華で、ナターリアのヴォーカルはかなり落ち着いたムードで、アルバムの音楽に深みを与えています。
ドキュメンテーション・センターの創設者でもあるソン・ハローチョ・グループ、ロス・コホリーテスをはじめ、カルロス・リヴェラ、レオネル・ガルシア、ホルヘ・ドレクスレル、エマニュエル・デル・レアル、パンテオン・ロココらが曲ごとに入れ替わりながらゲスト参加。「パラ・ケ・スフリール」とか「ヌンカ・エス・スフィシエンテ」とか過去のレパートリーをゲストたちと新鮮に再演したり、いきいきと聴かせてくれるのもいいですね。
なかでも特にウルグアイのホルヘ・ドレクスレルをゲストに迎えた8曲目「パラ・ケ・スフリール」なんか、本当にキラキラしていてみごとです。ブラスのアレンジも曲想もまるでバート・バカラックを彷彿させる洗練された内容で、ブラジル音楽っぽさもあって、魅力的ですよね。カエターノ・ヴェローゾも歌ったラスト14曲目の大スタンダード「ククルクク・パローマ」(トマス・メンデス作)はアルバム・エピローグで、ナターリアひとりでのギター弾き語りです。
(written 2020.7.16)
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