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2020/09/21

野茂英雄というピッチャーそのものが最高にロックンロールだった

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(6 min read)

 

というセリフをこないだネットで見かけて、だいぶ前にも同じようなことを書きましたが、こういった言説にはもう心底ウンザリなんですね。ロック、ロックンロールとはなんなのか?音楽のことじゃないのか?ロックとは生きかたのことなんでしょうか?う〜ん…。民謡クルセイダーズのやる「会津磐梯山」について、「朝寝、朝酒、朝湯が大好きで身上潰すんですよ!めっちゃRockですよ!!」っていうツイートも見かけましたよ。

 

こういったことが言われるのはロックだけだと思うんですね。破天荒な、型破りな、生きかたをして、それがジャズだった、シャアビだった、演歌だった、なんてだれも言わないですからね。破滅的だったり挑戦的だったりする生きかたがロックになるんだったら、チャーリー・パーカーこそ最高のロックでしょう。チャーリー・パーカーはロックンロールだったとか、言ってみたらどうなんでしょうか。

 

考えかたというかロックということばのとらえかたが根本的に違っているということなんですけど、ぼくにとってロックとは完璧100%音楽のジャンル名でしかありません。生きかたのことじゃないです。ふつうはみんなそう考えているんじゃないかと思っていたのに、最近は野茂英雄と「会津磐梯山」について立て続けに上記のような発言を見て、ちょっと気分が萎え気味というか、ひょっとしてぼくのほうが少数派だったりおかしかったりするのかと疑ったりしはじめました。

 

ロックとは音楽名なのか、それともはたしてロックとは(音楽とは関係ない部分での)生きかたのことなのか、もうわかりません。だってみんな(じゃないとは思うんだけど)が生きかた、イヤな言いかたをすれば生きざまがロックだったとか言うんですもんねえ。そのばあいのロック(な生きざま)とは、たぶんチャーリー・パーカーみたいなセックスとドラッグと酒とタバコにまみれたムチャクチャな人生のことなんでしょうね、たぶん。

 

でもって、ロックが生きかたのことを指すことばだとして、そういうイメージはいままでにみんなが見てきたロック・シンガーやギターリストの人生から類推して言っているんですよね、おそらく。でも、音楽としてのロックとはなんらの新冒険やアンチテーゼ、アンチ体制的、革新的なものじゃないんですよね。ロック・ミュージックはアメリカン・ポピュラー・ミュージックの王道、保守本道からそのまま流れ出たものなんですよね。

 

このことを詳細に論じはじめるとこりゃまたたいへんなことになってしまいますのできょうはやりませんが、ロックは(直接的には)黒人リズム&ブルーズや白人カントリー・ミュージックなど種々の要素が流入合体して誕生したものです。カントリーなんかアメリカ白人保守層の愛好する音楽だし、黒人リズム&ブルーズは、ルーツが1940年代のジャンプ・ミュージックで、ジャンプとは黒人スウィング・ジャズのことにほかならないんですからね。

 

スウィング・ジャズは、アメリカの大衆音楽の王道中の王道を歩んだ保守音楽なんですから。それが(関係はやや遠いとはいえ)ロックのルーツなんですからね。カウンターだアンチだということをもし言うのであれば、1920年代くらいまでのジャズだってカウンター・ミュージック、不良の音楽だったんですよ。徐々に世間に受け入れられ、1935年くらいからのビッグ・バンド・スウィング・ジャズは完璧にアメリカのお茶の間の健全な音楽になりましたけどね。

 

日本でも、かつてロックは、エレキ(・ギター)は、不良であると、そう言われたりみなされた時代がありましたよね。しかし時代を経て、いまやそんなことを言う中高年、親、教師もいなくなったではありませんか。日本のお茶の間でテレビの歌番組を家族で聴いていて、そこにどんだけのロック(要素)があるか。もはや生活に欠かせない音楽に、つまり主流の、すなわちある意味保守の、大人の、音楽になっているんですよね、ロックは。

 

そういうことじゃない、ロックとは若者の青春衝動みたいなものの象徴なんである、ということかもしれませんが、もしそれを言うのであれば、どんな音楽だって夢中になって必死で取り組んでいる人間にとっては爆発であり反骨であり青春衝動なんですよね。音楽活動というものじたいがそういったパワーを内在していることはたしかなことなんで、それがたまたま「ロック」ということばの衣をまとうことが多いというか、ロックだと言えばなんだかカッコよく思える、っていうことなんでしょうか。

 

そういった用語として「ロック」を持ってくる、それでカッコよく決めたと思うのは、昭和の発想じゃないかと、ぼくなんかはそう思うんですけどねえ。

 

(written 2020.8.7)

 

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