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2020/10/15

愛しの「オー・プリヴァーヴ」〜 チャーリー・パーカー『スウェディッシュ・シュナップス』

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(6 min read)

 

Charlie Parker / Swedish Schnapps

https://open.spotify.com/album/1mQ11XRLltORPc1bAJv9tt?si=WxG2yMWxSdykHr70oub6Ag

 

今2020年はチャーリー・パーカー生誕100周年にあたるそうです。1920年生まれだったんですねえ。パーカーみたいな大物でも生没年月日をほとんど憶えない人間なんで、ついこないだ言及しているかたのツイートを見るまで気づいていませんでした。

 

それで100周年ということで、パーカー関連のフィジカル商品がいくつかリイシューされているようです。といってもパーカーですからね、いままでもくりかえし発売されてきたものばかりで、どうってことありませんが、せっかくのワン・センチュリー、ぼくもなにか聴きなおして感想を書いておこうと思い立ち、選んだのがヴァーヴ盤『スウェディッシュ・シュナップス』(1958)。

 

どうして『スウェディッシュ・シュナップス』か?というと、これ、ほかの何枚かとあわせ、ボーナス・トラックもつけて、今年の100周年記念でCDリイシューされたそうですよ。その情報だけいただいて、ぼくはCD買えない人間になったので、オリジナル・アルバムのままのSpotifyので聴きなおしました。

 

それで、『スウェディッシュ・シュナップス』、1958年といってもですね、それはヴァーヴがLPフォーマットにまとめてリイシューした年であって、すべて最初はSP盤で発売されたものです。中身はA面が1949年、B面が51年の録音セッション。上掲リンク先のSpotifyアルバムでいえば、8曲目の「オー・プリヴァーヴ」からがB面です。

 

その「オー・プリヴァーヴ」、楽曲形式としてはただの12小節定型ブルーズなんですけども、大学生のころに初めてこのレコードを買って針をおろしたころから、もう大好きで大好きで、溺愛してきた一曲なんですよね。パーカーの書いたテーマ・メロディがですね、あまりにもチャーミング!

 

たぶんパーカーの曲のなかで個人的にいちばん好きなのがこの「オー・プリヴァーヴ」ですね。後続の多くのジャズ演奏家たちも魅力的だとの感想を持つのか、実にカヴァーの多い曲であって、あ、いや、もちろんパーカーの曲はいろんなのがどんどんカヴァーされてきましたが、ぼくにとってどのカヴァー・ヴァージョンでも聴けば胸がワクワクするのが「オー・プリヴァーヴ」のメロディであるというだけのことかもしれません。

 

そんなに溺愛する「オー・プリヴァーヴ」があるせいで、そのおかげで、アルバム『スウェディッシュ・シュナップス』全体が愛聴盤となってしまいました。B面の1951年セッションはトランペットがマイルズ・デイヴィスであるのもぼく的には愛好ポイントです。A面はレッド・ロドニー。

 

「オー・プリヴァーヴ」だけでなく、実にブルーズ・ナンバーが多いアルバムでもありますね。もちろん以前からパーカーはブルーズをたくさんやるんですけど(カンザス・シティ育ち、ジェイ・マクシャン楽団出身ですしね)、このアルバムで聴けるブルーズはあまりブルージーじゃないっていうのがひとつの特色かも。

 

パーカー自身のアルト・サックス演奏は、サヴォイやダイアルに録音していた1940年代中期と比べたらヴァーヴ時代は腕前が落ちたというのが一般的評価かもしれませんが、なかなかどうして聴けるんじゃないでしょうか。ほかにはヴァーヴらしい特色が出たアルバムもあるかもしれませんが、『スウェディッシュ・シュナップス』は全盛期同様のビ・バップ・セッションの寄せ集めですからね。

 

もう一点。バックのサイド・メンバーたちのビ・バップ理解や演奏技巧が、1940年代中期と比較すれば大きく向上しているせいで、『スウェディッシュ・シュナップス』は聴きやすい、スムースだ、全体的にクォリティが高いように思えるというのがメリットですね。

 

パーカー自身の演奏内容が全盛期よりやや落ちて、とんがっていたのがちょっとカドが取れて丸くなったのとあわせ、サイド・メンバーの力量向上もあいまって、アルバム全体としてはなかなかみごとな一枚となっているようにぼくには思えます。

 

パーカー自身だって、たとえば12曲目の「K.C. ブルーズ」なんかで聴かせるうま味はまったく変わっていないし、なにがヴァーヴ時代は衰えただ?!とかって、むかしからぼくは思っておりますね。『スウェディッシュ・シュナップス』は特にそうです。

 

ヴァーヴのパーカーにはほかにもラテン集やウィズ・ストリングスものなど、楽しい愛好作品があるんで、それらもできうれば今年のうちに書けたらなあと。それらはすでにいままでの過去記事で言及してきているんで、書かないかもしれませんけど。

 

(written 2020.9.7)

 

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