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2020/10/19

オーガニックなラヴ・ソング 〜 原田知世

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(8 min read)

 

原田知世 / 恋愛小説3〜You & Me

https://open.spotify.com/album/1EZy3C9uNNtucsPLo1lP63?si=6pw7r8qETOqHBrCM3-IKsg

 

原田知世の新作アルバム『恋愛小説3〜You & Me』が2020年10月14日に出ました。昨年も『Candle Lights』があったんですけれども、それはベスト盤みたいなもので、新曲もふくまれていたとはいえ、あくまで企画ものみたいな感じでした。

 

だから知世の新作としては2018年の『ルール・ブルー』以来ということになりますね。『恋愛小説3』というアルバム題でおわかりのように、いままでに二作出ているラヴ・ソング・カヴァー集の三作目。

 

一作目『恋愛小説』(2015)が洋楽ポップスのカヴァー集、二作目『恋愛小説2〜若葉のころ』(2016)が日本の歌謡曲のカヴァー集だったわけですが、今作『恋愛小説3』も日本のポップスばかりとりあげて、そして『2』との違いは曲の年代ですね。

 

『2』が山口百恵とか太田裕美とかの1970年代の歌謡曲ヒットをカヴァーしていたのに対し、今年の『恋愛小説3』ではもっとあたらしい、1980〜90年代の日本のポップ・ソングを中心に歌っています。知世の世代だったということでしょうか。

 

さらに今作『3』ではゲスト歌手が四名迎えられているのも大きな特色です。大貫妙子、小山田圭吾、細野晴臣、土岐麻子。細野さん以外は、個人的に実はイマイチなじみの薄い歌手たちなんですよね。

 

曲も、『恋愛小説2』収録のものはぜんぶよく知っているおなじみのものばかりだったのに対し、今回の『3』では、実を言うと知らなかった曲ばかり。だから、体内にしみついている曲を伊藤ゴロー(プロデュース)&知世がどう料理するか?という楽しみかたはできませんでした。

 

そんなわけで、自分のために、『恋愛小説3』の収録曲のオリジナル歌手たちを、以下に一覧にしておきます。

 

1)A面で恋をして(ナイアガラ・トライアングル)
2)ベジタブル (大貫妙子)デュオ with 大貫妙子
3)小麦色のマーメイド(松田聖子)
4)二人の果て(坂本龍一)デュオ with 小山田圭吾
5)新しいシャツ(大貫妙子)
6)A Doodlin’ Song(ジャッキー・クーパー)デュオ with 細野晴臣
7)花咲く旅路(原由子)
8)ping-pong(原田知世)デュオ with 土岐麻子
9)ユー・メイ・ドリーム(シーナ&ザ・ロケッツ)
10)あなたから遠くへ(金延幸子)

 

1曲目の「A面で恋をして」からしてかなりいいですよねえ。伊藤ゴローがつくったサウンドも極上だけど、知世の声がイキイキとしていて、曲が生き返っています。伊藤ゴローはもうずっと知世のプロデュースを続けてきていますけど、今作でもその腕前が光っています。ゴローの世界を最もよく表現できる歌手が知世だということなのかもしれません。

 

それは知世との仕事じゃないゴローのふだんの音楽活動からしてもなんとなく想像できることです。ゴロー・ファンがどれだけこういったアルバムを聴くのか?買ったり聴いたりする中心はやっぱりあくまで知世ファンだろうという気もしますが、こういった日本のポップスを素材に活かされるゴロー・サウンドの清新さはなかなかのものです。

 

知世の声もいいし、さわやかですっきりしていて、まわりくどいところがまったくありません。凝っているのはゴロー・アレンジのほうで、知世はそれに乗っかってすーっとすんなり歌っているなという印象です。2曲目「ベジタブル」もいいけど、もっといいと思うのが(今回ぼくが唯一知っていた曲の)3「小麦色のマーメイド」ですね。ストリングスの活用がみごとな伴奏に乗って、知世がつづることばがじんわりと心に沁みます。

 

ところで、今回ゲスト歌手が四名、女性二名、男性二名といるわけですけど、特に女性歌手二名、大貫妙子と土岐麻子はほとんど目立っていませんよね。男性ゲスト歌手のほうは、やっぱり声に男女差があるということもあって、参加しているというのがよくわかりますが、女性二名のほうは、うっかりしていると知世一人で歌っているように思ってしまうほど。やっぱりあくまで主役をきわだたせる役目に徹したということでしょうね。一体化しているというか。

 

5曲目「新しいシャツ」の伴奏はアクースティック・ピアノ一台だけ。これは実にいい歌ですよねえ。伴奏がこういった感じだからこそ、知世の声のチャーミングさがきわだちます。これはある意味今回のアルバムのハイライトかもしれません。はじめて聴いた大貫妙子の曲ですけど、いい曲ですよねえ。それがわかるっていうことは、伴奏と歌がすばらしいっていうことです。

 

7曲目「花咲く旅路」は原由子が歌った沖縄音階ソング。原はこういうのをつくって(といってもこれは桑田佳祐の作詞作曲だけど)歌うのが得意ですよね。サザンオールスターズ内でもときどき歌っています。知世も、鈴木慶一プロデュース時代からこの手の曲は歌うことがあり、慣れたもんです。実にいいですね。オーガニックなサウンドの質感もすばらしい。

 

そう、オーガニック・サウンドというのは、今回の新作アルバム『恋愛小説3』で一つの大きな聴きものになっているなと感じます。混じりものなしのコットン100%のシャツをまとっているかのような肌触りの心地よさ、それがオーガニックっていうことなんですけど、伊藤ゴローのサウンド・メイクって前からそうなんですよね。またそんなオーガニックな音の質感に、知世の声質が実によく似合っているなと感じます。知世ってそんな歌手じゃないですか。

 

そして、今作でぼくがいちばん大好きになったのが9曲目「ユー・メイ・ドリーム」。シーナ&ロケッツがやったポップなロック・ソングですけど、曲そのものがいいですよね。ちょっとビートルズが書きそうな曲でしょ、特にリフレインの大サビ部分(「それが私の素敵な夢〜〜」ではじまる部分)でビートルズっぽさが炸裂しています。

 

ゴローはしかしエレキ・ギターやシンセサイザーを使わず、あくまでアクースティックなサウンド・メイクに徹しているのが耳を惹きます。曲がいいので、それをとことん活かすように素直に歌った知世のナチュラル&ナイーヴ・ヴォーカルもすばらしいし、これ、この「ユー・メイ・ドリーム」はほんとうに楽しいなあ。

 

(written 2020.10.18)

 

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