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2020/10/04

脱力系ジャジー・フレンチー 〜 トマ・デュトロン

Thomasdutroncfrenchy

(6 min read)

 

Thomas Dutronc / Frenchy

https://open.spotify.com/album/33aacw53MZVyxjzjqxcs9o?si=a9lAVgPLSQeIyGOZ3CsZzQ

 

萩原健太さんにご紹介いただきました。
https://kenta45rpm.com/2020/06/24/frenchy-thomas-dutronc/

 

トマ・デュトロン(Thomas Dutronc)。母がフランソワーズ・アルディで父がジャック・デュトロンという歌手&ギターリストなんだそうですが、知りませんでした。はや数枚アルバムを出しているみたいです。今2020年作『フレンチー』(Frenchy)ではじめて聴いてみたら、これがなかなか楽しいのでリピートしています。

 

フランス人のトマがふだんどこを拠点に音楽活動をしているのかわからないんですけど、『フレンチー』はアルバム題どおりフランスの曲にフォーカスをあてて選曲した一枚。しかしその扱いはというと、フランスふうというよりアメリカのレトロ・ジャズな解釈で料理しているのがなんともいえずぼく好み。ゲストも一曲ごとに違えてどんどん招いてやっていて、なかにはオッ!とびっくりするような斬新な組み合わせもあります。よく知られたスタンダードを多くやっているのがぼく好みですね。

 

斬新といっても、このアルバムは基本脱力系の音楽なんでアレなんですけれども、まず1曲目「セ・シ・ボン」なんていう大スタンダードを持ってくるあたり、なにを考えているんだろうと思いきや、ゲストがなんとイギー・ポップ(!)とダイアナ・クラール。音楽的にはコントラバスのウォーキング・ベース中心のジャジーな解釈ですが、その2/4拍子に乗ってイギーがあの低音で「せ、し、ぼん!」って歌うなんてねえ、だれが想像できたでしょうか。これだけで笑えて、全身の力が抜けていきますよ。イギー、トマ、ダイアナの三つ巴で、しかも明るく、軽妙にこなしていますよね。

 

2曲目もスタンダード中のスタンダード「ラ・ヴィ・アン・ローズ」ですが、ここでのゲストも超意外。なんと Z.Z.トップのビリー・ギボンズが乱入しています。ブルーズ・ロックなフレーズをファズの効いたエレキ・ギターで混ぜ込んであって、こんな「バラ色の人生」なんて聴いたことないです。ある意味オソロシイ。どの曲でもそうですが、トマのヴォーカルはちょっとチェット・ベイカーに似たムードですね。

 

ゲストはいないもののストレートにスウィング・ジャズな解釈を聴かせる3曲目「プリュ・ジュ・タンブラス」(ブロッサム・ディアリー・ヴァージョンがおなじみかも)は軽妙でウキウキします。ここでのギターはトマ本人かな。この3曲目は1940年代のナット・キング・コール・トリオにちょっと似た仕上がり。アルバム全体ではトマはギターをあまりたくさん弾いていないみたいですけれども。

 

5曲目は日本でもザ・ピーナッツが歌ったシドニー・ベシェの「可愛い花」(Petite Fleur)。これをエキゾ風味満点でトマは聴かせます。ラテン・フレイヴァーを効かせたリズム・アレンジもいい感じですし、アコーディオンも雰囲気ありますね。ギター・ソロはやはりトマ本人でしょう。ここではフランス語でしか歌っていませんが、アルバム全編ではトマは英語/フランス語ちゃんぽんでやっています。

 

おなじく日本でも人気のある6曲目「男と女」はステイシー・ケントとのデュオ歌唱で雰囲気たっぷりに。7曲目「ラ・メール」でも英語/フランス語まぜこぜで。これと8曲目「ゲット・ラッキー」(ダフト・パンク)は軽快なスウィング・ジャズ・ナンバーに仕上がっていますよね。トマのギター・ソロも聴かせます。なかなかの腕前ですよ。

 

アルバムのちょっとしたハイライトはそのあとに来る二曲のジャンゴ・ラインハルト・ナンバーでしょうか。9「マイナー・スウィング」、10曲目は英語題で「オール・フォー・ユー」となっていますが、これは「ヌアージュ」にトニー・ベネットが英語詞をつけたもの。前者ではトマもヴォーカル抜きでギター・プレイに専心しています。ステファン・グラッペリ役をエレピがやり、なんとウクレレ・ソロまで続いて出るというおもしろさ。後者のほうではアンニュイに歌っているだけですね。

 

11曲目の「イフ・ユー・ゴー・アウェイ」はジャック・ブレルの「ヌ・ム・キ・ト・パ」(行かないで)。トマもゲストのヘイリー・ラインハートもフランス語と英語ちゃんぽんで。続く12「枯葉」にゲストはいませんが、やはりトマが二国語まぜこぜで歌います。チェット・ベイカーみたいな脱力系ヴォーカルがこういった切な系の曲にはちょっと似合っていて、なかなか悪くない雰囲気をかもしだしています。

 

13「マイ・ウェイ」は、英語曲として(たぶんフランク・シナトラ・ヴァージョンで)あまりにも有名になりすぎてしまいましたが、もともとはフランスの曲「コム・ダビチュード」。そういえば何年か前にいまのところの最新作でフェイルーズ(レバノン)も歌っていましたね。大きく歌い上げてしまいがちな曲ですが、そこは脱力系ヴォーカリストのトマのことですから。こんなふわっと感じになっていて、こういうのもなかなかおもしろいですね。英語詞部分はおなじみのそのまま(ポール・アンカ作)です。

 

(written 2020.8.12)

 

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