« 灼熱の炎天下で 〜 アル・ビラリ・スーダン | トップページ | ビートにこもるメロウネス 〜 ケム »

2020/11/04

さほど中南米ふうでもないデュークの『ラテン・アメリカ組曲』

C84403476ba744a0982bf3707a37e29b

(6 min read)

 

Duke Ellington / Latin American Suite

https://open.spotify.com/album/7Cmz36VEKJas9IPP2aQuHM?si=-0Tw0jo2TPCIJ4TkZcaCSA

 

デューク・エリントン楽団に「〜〜組曲」というタイトルの作品がいくつもあることはみなさんご存知のとおり。でも『ラテン・アメリカ組曲』(1968&70年録音72年発売)というアルバムがあることは、つい最近まで知りませんでした。

 

ちょっと興味がわいた&ヒマなので、デュークの作品に「〜〜組曲」がぜんぶでいったいどれだけあるか、ディスコグラフィを検索して拾って列挙してみたのが以下。数字は初録音の年です。

 

・香水組曲(Perfume Suite、1944)
・深南部組曲(Deep South Suite、1946)
・リベリア組曲(Liberian Suite、1947)
・コントロヴァーシャル組曲(Controversial Suite、1951)
・ニューポート・ジャズ・フェスティヴァル組曲(Newpot Jazz Festival Suite、1956)
・トゥート組曲(Toot Suite、1958)
・女王組曲(The Queens Suite、1959)
・チュルカレ組曲(Turcaret Suite、1961)
・秋組曲(Autumnal Suite、1961)
・女性組曲(The Girls Suite、1961)
・ヴァージン島組曲(Virgin Island Suite、1965、未発表)
・極東組曲(Far East Suite、1966)
・ラテン・アメリカ組曲(Latin American Suite、1968)
・ドガ組曲(The Degas Suite、1968、未発表)
・ニュー・オーリンズ組曲(New Orleans Suite、1970)
・グーテラス組曲(The Goutelas Suite、1971、未発表)
・トーゴ・ブラヴァ組曲(Togo Brava Suite、1971、未発表)

 

けっこうたくさんありますね。曲単位だったりアルバム単位だったり、アルバムのなかの一部だったり、いろいろなフォーマットで作曲・演奏されたようです。ホントまだまだ知らないことだらけですよ。

 

きょうは『ラテン・アメリカ組曲』の話です。

 

読みかじった情報によれば、1968年9月、デューク・エリントン楽団はブラジル、ウルグアイ、アルゼンチン、チリ、メキシコをまわる中南米ツアーを行ったんだそうで、これが、結成から約40年におよぶこの老舗ビッグ・バンド初の赤道以南楽旅だったみたいです。ちょっと意外ですよね。

 

それでその中南米楽旅から得られたイマジネイションをもとにジャズ組曲に昇華した作品がきょう話題にしたい『ラテン・アメリカ組曲』であるとのこと。そうはいっても、19世紀末のジャンル勃興当時からずっとこのかたジャズと中南米音楽とのえにしは深く、デュークだって第二次大戦前からラテン・リズムをとりいれた曲をやっています。

 

けれども、中南米現地を演奏旅行でまわり直接得られたものをベースにしてあらためてそれをテーマにしたアルバムを制作するというのは、また違った格別のフィーリングがあったということなんでしょうね。でも正直な話、アルバム『ラテン・アメリカ組曲』を聴いて、そんなに強い中南米風味は感じないんですけどもね。

 

中南米というよりも、いつものデュークらしい濁りみアンサンブルだなというのが最大の印象で、それは特にブラスとリードあわせたホーン群合奏の不協和なというか豊穣でブワっとひろがりのあるサウンドに感じます。デュークのピアノだっていつもどおりの調子。この音楽家のばあい、ピアノ・コードとアンサンブル・トーンが完璧に軌を一にしているというか、ピアノで出す和音をそのままビッグ・バンド化したのがデュークのオーケストラ・サウンドですよね。

 

どっちかというとホーン・アンサンブルのほうが先で、それを左右の手に移植したのがデュークのピアノ・スタイルだっていうことかもしれません。いや、どっちが先?さらに『ラテン・アメリカ組曲』ではメンバーのソロ時間があまりなく、ホーン・アンサンブル中心に曲が進行しますので、その意味でもこのオーケストラの持ち味を理解するにはもってこいのアルバムかもしれないです。

 

ラテンというか中南米風味という部分は、もっぱらドラマー(&ときどきベーシスト)の演奏するリズムにそれが反映されていますが、1968/70年の録音で、現地もまわったにしては、1930年代の「キャラヴァン」のころのあのフィーリングから大きな変化がないように聴こえてしまいます。それでもドラマーのルーファス・ジョーンズが叩きだす、特にシンバル・ワーク中心のリズムは躍動的で、曲を活かすことにつながっているなと思います。

 

だいたいの曲のリズムが、往年の「キャラヴァン」のそれであるという意味では、個人的にちょっと拍子抜けというか、正直言ってややガッカリでしたが、ホーン・アンサンブルに横溢するデューク・カラーは聴きごたえがあって、とくにラテンだ中南米だと言わなければなかなか聴ける作品じゃないでしょうか。

 

4曲目の「ティナ」だけはオーケストラ抜き、デュークのピアノ演奏だけをフィーチャーしたトリオ演奏。実はこれがこのアルバム中いちばん聴ける上質な一曲になっていて、意外でした。また、正規なバンド・メンバーにいないので使わなかったというのはしかたなかったかもしれませんが、ラテン・リズム強化のためアルバム全体でせめてコンガ奏者などパーカッショニストをゲスト起用したらおもしろかったんじゃないかという思いは残ります。

 

(written 2020.9.3)

« 灼熱の炎天下で 〜 アル・ビラリ・スーダン | トップページ | ビートにこもるメロウネス 〜 ケム »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 灼熱の炎天下で 〜 アル・ビラリ・スーダン | トップページ | ビートにこもるメロウネス 〜 ケム »

フォト
2021年1月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
無料ブログはココログ