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2020/11/26

ジャズのアルテミス登場

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(6 min read)

 

Artemis / Artemis

https://open.spotify.com/album/2NHS9RKnUaFqVU13hHgDAP?si=8ZYWX2jeTLCW2tSAG5jq9w

 

今年9月11日にブルー・ノートからアルバム・デビューしたばかりのスーパー・グループ、アルテミス。Artemisは古代ギリシア神話に登場する狩猟の女神の名。アメリカを拠点に活動するグループですからアーティミスと書くべきか、ちょっと迷いました。

 

女神名からグループ名もとっているように、アルテミスは全員女性の七人メンバーで構成されています。アルバム・デビューしたばかりといっても新人ではなく、全員がしっかりしたキャリアを積んできている評価の高い実力者ばかりで、だからスーパー・グループなんですね。

 

以下にグループ・メンバーを書いておきます。

・リニー・ロスネス(ピアノ)
・メリッサ・アルダナ(テナー・サックス)
・アナット・コーエン(クラリネット)
・イングリッド・ジェンセン(トランペット)
・ノリコ・ウエダ(ベース)
・アリスン・ミラー(ドラムス)
・セシル・マクローリン・サルヴァント(ヴォーカル)

 

女性ばかりというだけでなく、アメリカ合衆国、カナダ、フランス、チリ、イスラエル、日本、と多様に異なった文化背景を持つ多国籍集団であることもアルテミスの特徴。リーダーで音楽監督役リニー・ロスネスの呼びかけで、2017年にヨーロッパのフェスティヴァル・ツアーをまわるために集められたのがグループ結成のきっかけだったそう。

 

2018年8月のニュー・ポート・ジャズ・フェスティヴァルでこのアルテミスのステージに接したブルー・ノートの社長ドン・ウォズが、その充実した内容に感動したようで、それが今年のデビュー・アルバム・リリースにつながったのでしょうね。

 

アルバム『アルテミス』収録曲は、カヴァー四曲以外すべてメンバーが持ち寄った自作の数々。以下にその作者名を記しておきましょう。

1)ガッデス・オヴ・ザ・ハント(アリスン・ミラー)
2)フリーダ(メリッサ・アルダナ)
3)ザ・フール・オン・ザ・ヒル(レノン・マッカートニー、イングリッド・ジェンセン編曲)
4)ビッグ・トップ(リニー・ロスネス)
5)イフ・イッツ・マジック(スティーヴィ・ワンダー、リニー・ロスネス編曲)
6)ノクターノ(アナット・コーエン)
7)ステップ・フォワード(ノリコ・ウエダ)
8)クライ・バターカップ・クライ(ロッコ・アクセッタ、編曲だれ?)
9)ザ・サイドワインダー(リー・モーガン、リニー・ロスネス編曲)

 

アルバム収録曲は、どれもかなりしっかりと細かく(特にリズムが)アレンジされています。新世代ジャズというわけじゃない、従来的なメインストリーム・ジャズの範囲内にある音楽でしょうから、演奏フォーマットもテーマ合奏〜ソロまわし〜テーマ合奏という従来的なものを踏襲していますけれども、それでも細かな、特にリズム・アレンジをソロのあいだも綿密に行き渡らせていて、決して一発勝負的なものにしていないあたりには現代性を感じますね。

 

しかもその(テーマ演奏部ではもちろん)各人のソロ・パートでもていねいにアレンジされたリズムがかなり柔軟で、伸び縮みしたり変化したりはしませんけれど、しなやかなやわらかさを感じる演奏なんですね。従来的なハード・バップってそのへんリズムが硬いっていうか、一方向的だったと思うんですが、アルテミスのリズムにはのびやかな双方向性を感じます。

 

ソロ内容だって充実していますが、しかしソロで聴かせる音楽でもないような気がします。もっと総合的にっていうか、イントロ〜最初のテーマ合奏から演奏全体をトータルでみたときに魅力を感じられるグループじゃないでしょうか。

 

メンバーのオリジナル・チューンでは、もちろん幕開けの「ガッデス・オヴ・ザ・ハント」からみごとなんですけど、ぼくが特に感心するのはたとえば2曲目「フリーダ」の清新さ、みずみずしさとか、4「ビッグ・トップ」の迫真の迫力とパワーとかですかね。そのほかの曲もふくめ、ソロはコンポーザーが中心にとっているみたいです。

 

全四曲のカヴァー・ソングのほうが、実はもっと内容がいいように聴こえるんですが、なかでも圧巻はラストに入っているリー・モーガンの「ザ・サイドワインダー」。リーのオリジナルや種々のカヴァーと比較しても、このアルテミス・ヴァージョンは特筆すべきできばえですよ。

 

グッとテンポを落としヘヴィに重心をおいて、低域を強調したダークで不穏でロー・ダウンなフィーリングに(リズムもハーモニーも)アレンジされたアルテミス・ヴァージョンの「ザ・サイドワインダー」は、不気味で落ち着かないフィーリングを聴き手のなかに巻き起こします。このダウン&ブルーな感触こそ、いまの、2020年の、時代の音だなという感じがしますね。近年のコンテンポラリーR&Bなんかにも通じる空気感で、実にみごとな再解釈です。カァ〜ッコイイ!

 

(written 2020.10.15)

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