これもブラジリアン新世代ジャズ・シンガー? 〜 ジュリー・ウェイン
(3 min read)
Julie Wein / Infinitos Encontros
https://open.spotify.com/album/7f3vC3MT1rUJ4a4TJUOTXu?si=i5-rndCDR7eOclnnNsqNyA
ブラジルのシンガー・ソングライター、ジュリー・ウェイン(Julie Wein)の『Infinitos Encontros』(2020)はこの歌手のデビュー・アルバムらしく、収録時間がたったの27分間ですからあっという間に終わってしまうEPサイズですけど、中身は充実していて、印象いいですね。
ジュリーはピアノも弾くそうで、このアルバムでもたぶんピアノは本人なんでしょう。八曲トータルでみたらイマイチ焦点がしぼりきれていないかもとの印象もあって、ジャズ、MPB、サンバ、ボサ・ノーヴァ、ちょっぴりのモダン・タンゴ、ショーロ・スタイル、クラシカル風味とさまざまな曲が並んでいます。
でも焦点がしぼりきれていない…、というのは実は批判にならないっていうか、ちょっと違うかも。いまやストリーミング聴きの時代。ファビオ・ペロンの2015年作なんかでもそうなんですけど、あっちを聴きこっちを聴きと一曲単位でおもしろそうなものをピック・アップするのが楽しみかたで、アルバムのトータリティ、一貫性みたいなものを重視するのはもう時代遅れかもしれないんですよね。
ジュリー・ウェインのこのアルバムは、それでもまだアルバムを通しての一貫したムードは感じられるので、まだまだオールド・ファンだって親しめるんじゃないでしょうか。ジュリー本人のピアノはなかなか端正なタッチでクラシカル。そこにストレートでひねらないおとなしいヴォーカルが乗っかっているという感じです。伴奏楽器やアレンジが曲ごとに変わるだけで。
基本的にはやっぱり新世代ジャズ・シンガーのひとりかなとも思え、1曲目、2曲目とジャジーですが、2曲目にはボサ・ノーヴァのフィーリングもあります。かと思えば3曲目はいきなりタンゴ。それもアストール・ピアソーラふうのモダン・タンゴなんですね。でも聴こえるのはたぶんこれアコーディオンでしょう。そのフレイジングは完璧にピアソーラふうのバンドネオン・スタイルですけどね。
続く4曲目は完璧なるサンバで、途中ちょっとジャジーなインタールードが入ったりもします。その後、5曲目以後はボサ・ノーヴァ、クラシカルなショーロふう、やっぱりMPB的ジャズかなと思えるものなど、さまざまなタイプの曲が並んでいます。陰気で仄暗いアトモスフィアがアルバム全体を貫いていますけどね。
(written 2020.9.14)
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