新感覚ファドの若手歌手 〜 サラ・コレイア
(3 min read)
Sara Correia / Do Coração
https://open.spotify.com/album/73BFWOB4vxPVyaMU8bvVDP?si=zJEu1j9mQJulDHwxCH8nXQ
サラ・コレイア。ポルトガルにおけるファドの新世代若手歌手だとのこと。新作『ド・コラソン』(2020)ではじめて出会いましたが、こりゃなかなか魅力的な音楽ですよ。みずみずしくて、新しい感覚にあふれたニュー・ファドだと言っていいんじゃないでしょうか。
新鮮なのはなんといってもリズムですね、いままでファドでこんなリズムを聴けたことはなかったんじゃないかと思うような曲が並んでいます。出だし1曲目のギターの弾きかたからしてすでにフォーキーな雰囲気がただよっていますが、それ以上にビックリするのは2曲目です。ラテン/カリブ調じゃないですか。
こんな快活で陽気で跳ねるリズム・シンコペイションに乗ったファドって、いままでありましたっけ?ぼくは初体験です。リズムを表現するためにドラム・セットとエレキ・ベースが使われているのだって軽い驚き。ディオーゴ・クレメンテがアルバム全編でプロデュースをやっているそうで、その仕事なんでしょうね。
こんなリズム・フィールと曲調の明るさは、3曲目以後もアルバムを支配していて、軽快さをファドに持ち込むことに成功しています。サラ・コレイアの発声や歌いまわしは、それでもやっぱりファド歌手だなというのを感じる濃ゆいアイデンディティがありますが、新世代らしい軽妙さをも身につけていると言えましょう。
4曲目でアコーディオンを使って打楽器も入りややアバネーラ〜タンゴっぽいリズム・フィールを表現していたり(ベースはコントラバス)、スネアの硬いリム・ショット音とギターのフレーズが地中海〜カリビアンな明るさを表現する5曲目(ゲスト歌手としてアントニオ・ザンブージョが参加してサラとデュオで歌う)とか、ピアノを効果的に使った7曲目もいい。
さらに8曲目ではやはりふたたびドラムスとエレベを用いて軽快で強い跳ねるリズムを表現するポップな曲調。サラもさらっとやわらかく歌っているのが耳を惹きますね。これもポップでフォーキーなバラードみたいな9曲目とか、その後も従来的でない新感覚のファドを披露するサラとディオーゴ・クレメンテの試みが楽しいアルバムです。
(written 2020.10.25)
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