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2020/12/16

あのころのニュー・オーリンズ音楽のように 〜 スクィーレル・ナット・ジッパーズ

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(7 min read)

 

Squirrel Nut Zippers / Lost Songs of Doc Souchon

https://open.spotify.com/album/2FIbpWkYB3X5lGjLQuoiLq?si=oTLWT8B1S9uDG1KN8wS87A

 

きのうジンボ・マサスの名前を出しましたが、このひとが中心人物であるバンド、スクィーレル・ナット・ジッパーズ(Squirrel Nut Zippers)。だから、もちろんきのう書いたニュー・ムーン・ジェリー・ロール・フリーダム・ロッカーズからひもをたぐって辿り着いたわけです。もう1990年代から活動しているバンドなんだそうで、知らなかった…。最新作『ロスト・ソングズ・オヴ・ドク・スーション』(2020)のことをきょうはちょっと書いておきます。

 

スクィーレル・ナット・ジッパーズはいわゆるグッド・タイム・ミュージックをやるバンドで、だから20世紀初頭から前半ごろのヴィンテージなジャズ〜スウィングを現代に再現しているバンドです。あれですかね、いままでにこのブログでも話題にしたことのあるジャネット・クラインとかダヴィーナ&ザ・ヴァガボンズなどと同系列なんでしょうか。

 

そんなスクィーレル・ナット・ジッパーズの2020年新作はドク・スーションことドクター・エドモンド・スーションにフォーカスしたもの。ドク・スーションは1897年生まれのアメリカはニュー・オーリンズのギターリスト&シンガーで、古いニュー・オーリンズ音楽の保存に力を入れた人物みたいですよ。だから、スクィーレル・ナット・ジッパーズみたいな音楽性のバンドにとってはもってこいの題材ですよね。

 

ドク・スーションのレパートリーだったものを中心に、スクィーレル・ナット・ジッパーズならではの曲やアレンジも交えて、楽しく愉快にオールド・ジャズ・ミュージックをこれまたやっているアルバムっていうことになるんでしょう。1曲目がジェリー・ロール・モートンもやった「アニミュール・ボール」で、もうここですでにレトロ趣味全開のスウィンギーさ。

 

耳を惹くのは、次の2曲目「キャント・テイク・マイ・アイズ・オフ・ユー」。フランキー・ヴァリでおなじみ「君の瞳に恋してる」ですから、みなさん聴きおぼえがあるはず。このスタンダード曲をスクィーレル・ナット・ジッパーズはタンゴっぽいアレンジで、いや、タンゴというよりぼくの耳にはアバネーラ寄りのフィーリングで料理しているように聴こえます。アバネーラとタンゴの中間あたりでしょうかね。アバネーラはタンゴの前身にもなった音楽です。

 

途中で突如ヨーロッパふうのワルツになったりもするおもしろいアレンジのこの「キャント・テイク・マイ・アイズ・オフ・ユー」。タンゴというよりもアバネーラふうだと考えれば、ニュー・オーリンズとの関係もよくわかります。アバネーラはキューバの音楽ですからね、カリブ音楽はニュー・オーリンズ音楽に多大なる影響を与えております。実際このヴァージョンはザクザクっていうタンゴの歯切れじゃないなとぼくは感じるんですよね。もっとカリブ寄りのリズム・シンコペイションでしょう。

 

3曲目以後はしばらくジンボ・マサスのオリジナルが続きますが、それもドク・スーションが蒐集した古いニュー・オーリンズ・ミュージックの意匠にのっとってつくられたものです。完璧な20世期頭ごろのニュー・オーリンズ・ジャズのスタイルじゃないですか。こういうのはも〜うほんと〜に大好きなんですよね。4曲目「トレイン・オン・ファイア」は伝承フォークっぽい感じ、トーチ・ソングの5「ミスター・ワンダフル」もいいですね。

 

その後はふたたびカヴァー曲セクションに入り、レトロなヴィンテージ・ジャズに仕上がっているフレッド・レインの6「アイ・トーク・トゥ・マイ・ヘアカット」と、ニューオーリンズ・ウィリー・ジャクソンの8「クッキー」なんか、最高に大好きです。特に「クッキー」かなあ、完璧にあのころのニュー・オーリンズ・ジャズが持っていた雰囲気を再現できていますよね。

 

アルバム前半のハイライトが「キャント・テイク・マイ・アイズ・オフ・ユー」なら、後半のそれは7曲目の「プーリーム・ナイグラム」でしょう。これは歌なしのインストルメンタル。クレズマー・ジャムみたいなもんでしょうね。ご存知のとおり東欧のクレズマー・ミュージックは初期のジャズにとても大きな影響を与えていて、その痕跡は1930年代後半のベニー・グッドマン楽団あたりにまで及んでいるわけなんです。

 

19世紀後半〜20世紀頭ごろのニュー・オーリンズ・カルチャーにはもちろんヨーロッパ由来の要素も大きくて、それが主にクリオールたちを中心にして誕生期のジャズのなかに活かされたわけなんですね。そんなありよう、空気感を、ドク・スーションを媒介にして、スクィーレル・ナット・ジッパーズも嗅ぎとって再現しているというわけでしょうね。ジャズ界初のレコーディングを1917年にやったオリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンド(ODJB)のレパートリーにもクレズマーはあったんですよ。

 

アルバム・ラストの10「サマー・ロンギングズ」は、最初聴いたとき、なんだかスティーヴン・フォスターが書いた曲そっくりじゃないかと感じたんですけど、実はやっぱりフォスターの曲みたいです。そっかぁ。19世紀なかごろのものですかね。この曲だけはニュー・オーリンズ音楽やドク・スーションとの関係がわかりにくいです。

 

(written 2020.10.23)

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