ギリシアのペニー・バルタッツィ、ソロ作ではバルカンふうながらも、ラテン・テイストがいい
(3 min read)
Penny Baltatzi / Ena Fili
https://open.spotify.com/album/5kxTXI8L6LlnEN1k1VXACu?si=O404Ov4nRmqIXhnFqmSBag
ペニー・バルタッツィという読みでいいんでしょうか、Penny Baltatzi、ギリシアの歌手です。そのソロ・デビュー作『Ena Fili』(2019)がなかなかいいですよね。ペニーはペニー&スウィンギン・キャッツのリード・ヴォーカルとして活躍していた(いる?)歌手です。
ソロ作『Ena Fili』では、やっぱりオールド・タイミーなジャジー・ポップスを踏まえながらも、もっとグッとギリシア〜バルカン色をただよわせる音楽をやっているかなと思います。1曲目からそれはあきらかじゃないでしょうか。エレキ・ギターも使うものの、アクースティックな楽器を中心に、バルカン・ブラスふうなホーン・セクションも交えながら、独特の哀感をペニーがつづります。
それでもバルカン的情緒がさほど濃厚に出ているわけではなく、もっとポップな方向性のなかでそれはそこはかとなくただよっているっていうのがペニーらしいところなんでしょう。そんなところ、2〜6曲目でもわりとはっきり出ていると思います。3、5曲目あたりはホーン陣、特に低音の、これはチューバかスーザフォンか、を中心に進むアンサンブルがいかにもなバルカンふう。
しかしそんな雰囲気が7曲目のアルバム・タイトル・チューン「Ena Fili」で一変します。ここからラストまでの三曲にギリシア/バルカンふうなところはまったくなく、陽気でポップなラテン・ミュージックを展開しているんですよね。まるでアルバムがぷっつりと二分されていますけど、このラスト三曲のラテン音楽(いや、7曲目だけかもだけど)は、ぼく、大好きですね。
7曲目はチャチャチャ。ここでアンサンブルを聴かせているホーン・セクションはたぶん6曲目までと同じメンバーなんじゃないかと思いますけど、しかし雰囲気がもうぜんぜん違っていますよね。7曲目ではトランペット・ソロもキューバ音楽スタイルで、楽しいったら楽しいな。このチャチャチャのリズムがいいですよね。ペニーのヴォーカルも軽快。
8、9曲目にラテン・テイストはあまりありませんが、バルカンふうなところだってちっともなく、どっちかというとユニヴァーサルなポップスになっているかなと思います。ペニー&スウィンギン・キャッツでのああいった雰囲気を出しているのはこれら7〜9曲目で、6曲目までのバルカン路線と齟齬がある感じすらしますが、どっちもペニーの味なんでしょう。
(written 2020.12.2)
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