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2021/02/24

最近アルバムが短くなった 〜 ストリーミング時代の変化

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(7 min read)

 

いつごろからだったかぼくも気がついています、最近、音楽新作アルバムの時間尺が短くなってきていることに。いちばん最初にこのことを文章にしたのは、2019年1月8日付のイマルハンにかんする記事。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2019/01/post-33b2.html

 

このなかで、2018年暮れのマライア・キャリーの最新作あたりから「新作が短くなった」という感想を持つようになったと書いてありますね。そのマライアの『コーション』は約38分間でした。そのほか近年は多くが似たり寄ったりで、30分台という長さのアルバムもかなり増えてきていますよね。

 

オリジナル新作では、っていうことであって、コンピレイションなどはこのかぎりじゃないんですけど、ここ数年で音楽新作アルバムがすっかり短くなった、もちろん長いものだってあるけれど、多くが30〜45分程度になった、というのは間違いないことじゃないかと思います。

 

この事実は、ちょっと前までCDメディアにどっぷりつかって音楽ライフを何十年間も送ってきたぼくのような世代にとっては、最初ちょっとエッ?!と驚くようなことでした。だってCD全盛期は70分越えもあたりまえでしたもん。オリジナル新作でも、ですよ。音楽家の多くがそんな長尺の新作をリリースしていたでしょう。

 

短くなった、30〜40分台が多くなった原因は、間違いなくストリーミング聴きが主流になったからであって、アナログ・リリースを前提として、ということじゃないようにぼくには思えます。たしかにアナログ復権といいますか、音楽フィジカル 商品はCDだけじゃなくてレコードも、ばあいによってはレコードしかリリースしないという現状になってきてはいますが、そのことは近年のアルバムの短尺化とかならずしも関係ないような。

 

やっぱりサブスクが主流になったので、それでサイズが短くなったということだろうと思うんですね。ひとつにはネットで流すだけなので、フィジカル・メディアにある物理的容量の制約がなくなったということがあると思います。アナログだと片面約20分前後、CDだと一枚最大で79分程度という、そういった枠、考えかたがストリーミングにはないわけです。

 

だからいくらでも長くできるというのもある面での真実で、実際プレイリストなんかは7時間とか12時間とか、そういったものも頻繁に目にしますよね。いっぽうでオリジナル新作だと、尺にこだわる必要がなくなったことでかえって、音楽家や制作サイドが言いたいことを言い切ったら余計なものは付属させなくていい、短くてOKと、そう考えるようになったかもしれません。

 

レコードやCDといった物理メディアには物体じたいに絶対価格があるし、CD新作をたとえば25分とかで終わらせるというのは、余った時間がちょっともったいない、それを2000円なりで売るのはちょっとどうか?みたいな発想があったんじゃないでしょうか。レコードだってたとえば片面10分では商売にならないでしょう、最低でも15分くらいは収録しないと。

 

そんなことで、物理メディア時代には、間に合わせというか埋め合わせの、すなわち時間調節のための(本来だったら入れなくてもいいような)トラックが収録されていたように思います。世間でいう捨て曲、捨てトラックみたいなことがですね、ありました。その意味でも寸分も隙のないアルバムが絶賛されたりもしたわけです。

 

ネットで流すサブスクのストリーミング・サービスでは、もはやそんな物理的な考えをしなくてよくなりました。入れ物がなくなったわけですからね、もうこれで充分と音楽家が考えれば短尺でも一個の新作としてそのままリリースしていいわけです。19分でも24分でも「物語」があってしっかりしたトータル・アルバムというものが出てくるようになりましたよね。

 

このことは、人間の集中力が持続する限界時間とも連動しています。若くて元気なかたでも(CDサイズの)70分越えとかをずっと真剣に対峙するように集中してひとつづきで聴き込むというのはなかなかむずかしいんじゃないでしょうか。CDは、たとえば古いSP盤時代の一曲三分とかのものを寄せ集めてたくさん詰め込むには向いているんですけど、79分はポピュラー音楽新作には大きすぎる容器なんですよね。

 

また、物理メディアをとっかえるのは面倒だけど、ストリーミングだと、ちょっと聴いたらパッと(テレビのリモコンでチャンネルをザッピングするように)別のものをクリック or タップして移動しちゃうなんてこともカンタンです。70分以上も同じ一個のアルバムを集中して聴き続けるなんて不可能ですから、途中で替えたくなっちゃうんですね。

 

ストリーミング・サービスを運営している会社は、そんなデータも蓄積して音楽家サイドに提供しているらしく、音楽家、レコード会社側としても再生してもらえなくちゃ意味がない、お金にもならないわけですから、その結果、最後まで聴き続けてもらえる長さにまでアルバムをサイズ・ダウンしているんじゃないかという事情もあるでしょうね。

 

フィジカル・メディアが廃れサブスク聴きが標準になって以後の音楽の変化って、ほかにもたとえばイントロが短くなったとか、曲じたいも短いとか、テンポが速くなったとか、いろいろあると思いますが、また機会をあらためて考えてみたいと思います。

 

ぼくがこういったことをふだんさほど強く意識しないのは、流行ものや最新ヒットよりも、過去の名作を中心に聴いているからでしょう。

 

(written 2020.11.24)

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