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2021/02/02

初期デューク・エリントンのブラック・ミュージック志向 〜 ジャングル・サウンドとはなにか

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(6 min read)

 

Duke Ellington and His Orchestra / Early Ellington (1927-1934)

https://open.spotify.com/album/7JCXqt12TxcDy3Y8iUk7jl?si=TURF2u4bRPKfvV9eI6QTpg

 

Spotifyにあるんですねえ、デューク・エリントン楽団の初期ヴィクター録音集(CDなら一枚もの)の『アーリー・エリントン(1927-1934)』。CDは1989年発売でした。もちろんこれでぜんぶではありません。名曲・名演だけをピック・アップしたセレクションですが、特別なファン、マニア以外にはこれで十分でしょう。

 

CDでもSpotifyのでも、第二次大戦前のエリントン楽団ヴィクター録音は、この初期録音集と、1940年過ぎ音源集の(CDなら三枚組の)『ザ・ブラントン・ウェブスター・バンド』と、この二つがあればほぼすべてわかるということで、デュークのことを知りたいというファンには大推薦ですよ。

 

きょうは『アーリー・エリントン(1927-1934)』の話をします。『ザ・ブラントン・ウェブスター・バンド』時代のことはくわしく書いたことがあるのに、この初期ヴィクター録音のことはまだ書いていなかったみたいですからね。『ザ・ブラントン・ウェブスター・バンド』関係の記事はこちら↓
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/19401942-95e7.html

 

さて、『アーリー・エリントン(1927-1934)』に収録されているそれぞれの曲の録音年月、パーソネルなど、データ面での詳細はDiscogsが載せてくれているので、そちらをご参照くださいね。
https://www.discogs.com/Duke-Ellington-And-His-Orchestra-Early-Ellington-1927-1934/release/3528836

 

この初期エリントン楽団の特徴をひとことで言えば、ブルージーであるということになるでしょうか。1939年に楽団に加入し大黒柱となったビリー・ストレイホーンがまだいないということで、デュークひとりで作編曲をこなしています。だから、どこまでがデュークでどこからがストレイホーンかわからないといったあの世界はまだありません。デュークひとりで曲を書けばこうなる、という格好のサンプルでしょう。

 

実際、定型12小節ブルーズの楽曲やその変型も多く、曲調もサウンド・カラーもブルージーです。ブルージーというのを言い換えれば濁りみアンサンブルということでもあるんですが、たとえば1曲目の代表曲「ブラック・アンド・タン・ファンタシー」を聴いてみてください。このホーン・アンサンブルのグロウル・サウンドこそデューク・カラー。プランジャー・ミュートをつけたトランペットが吹くこういったジャングル・サウンドは、デューク楽団のトレードマークでした。

 

ブラス(金管)のグロウルに象徴されるブルージーなジャングル・サウンドというのは2曲目以後も多くの曲で聴かれます。デュークの楽団がニュー・ヨークはハーレムのコットン・クラブに出演するようになったのは1927年の12月から(キング・オリヴァー楽団と入れ替わり)。そのころから、同クラブでのショウのスタイルにあわせたようなジャングル・サウンドが確立されるようになり、ずっと続きました。

 

コットン・クラブ出演が終了してもデュークはジャングル・サウンドをやめず、むしろその独自カラーを強化するようなアンサンブルを書いていましたよね。「ブラック・アンド・タン・ファンタシー」「イースト・セント・ルイス・トゥードゥル・オー」「ザ・ムーチ」「コットン・クラブ・ストンプ」「エコーズ・オヴ・ザ・ジャングル」といった、このアルバムでも聴ける一連の楽曲は、この初期エリントンの代名詞だったと言えましょう。

 

セクシーさ、色気が強く出ていて、必ずすも後年のような芸術色中心ではないあたりも初期エリントンの特徴です。このアルバムだとたとえば3曲目「クリオール・ラヴ・コール」、4「ザ・ブルーズ・アイ・ラヴ・トゥ・シング」などでも鮮明です。アデレイド・ホールのヴォーカルが聴けるからというだけじゃなく、このリード・セクション、特にクラリネットのアンサンブル・サウンドにデューク・アレンジならではのセクシーさが聴けるなと思うんです。

 

リズムというかビート感が独特なのもこの初期エリントン楽団の特徴です。ドラマーであるソニー・グリーアのスタイルと、それからこの時期はフレッド・ガイがギターじゃなくバンジョーを主に弾いているせいもあってか、えもいわれぬ粘り気、ぬた〜っとした一種のもたったビート感が聴けるでしょう。好みが分かれるところだと思うんですけど、(後年の)リズム&ブルーズ、ファンク・ミュージックなどとも共通するフィーリングじゃないかなと思うんですね。

 

ぼくの考えるデュークのジャングル・サウンドとは、そういったビート感もあわせた意味でのもので、プランジャー・ミュートをつけたブラス・アンサンブルのグロウル・サウンドだけのことじゃないんですね。アンサンブルの濁りみとビートの粘り気、この二つがあいまってこそ、デュークにとってのブラック・ミュージックがあったんだと、ぼくはそう考えています。

 

「ムード・インディゴ」「ソリチュード」といった、このアルバムでも聴けるやや印象派ふうのバラード調スロー・ナンバーも、こういったデュークのブラック・ミュージック志向を踏まえた上で聴けば、また違ったとらえかたができるのではないでしょうか。

 

(written 2020.11.3)

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