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2021/02/27

Spotifyで生田恵子を聴こう

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(5 min read)

 

生田恵子 / 東京バイヨン娘

https://open.spotify.com/album/0rO6V19kHI5arQKubcPjsC?si=YMwPnf4xRQmF67hFSXVSxA

 

生田恵子についてはずっと前一度記事にしたことがありました。1950年代に活躍した日本の歌手です。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-41a8.html

 

きょう話題にするのも同じアルバム『東京バイヨン娘』(1999)ですが、今回どうしてまたもう一回書こうと思ったかというと、生田のこのアルバム、なんとそのままそっくりSpotifyにあるのを発見したからなんですね。すばらしい!いつ入ったんだろう?

 

音楽的なことは上でリンクを貼った2016年の文章につけくわえることなどないので、ぜひご参照いただきたいと思います。1950年代初頭の日本で、これだけリズミカルに歯切れよくブラジル/ラテン調を歌いこなせた歌手はほぼいなかったのではないでしょうか。

 

東京バイヨン娘というくらいで、バイヨン(ブラジル音楽)をとりいれた歌謡曲をやったのが生田ですが、このアルバムでは、なかでもすばらしいのが冒頭三曲。1951年のブラジル録音で、現地ブラジルのバンドを起用して、バイヨンの第一人者ルイス・ゴンザーガ監修のもと、ゴンザーガの曲も歌い、実にみごとな成果をあげておりますね。

 

なお、Spotifyアプリでは冒頭三曲の伴奏者名を「リオ・デ・ジャネイロ・ビクター管弦楽団」と記していますが、これはちょっとどうでしょう?CD付属の解説文によれば、これら三曲の伴奏はレジオナール・ド・カニョートというショーロ・バンドで、聴いた感じでも少人数編成のコンボに間違いありませんよね。

 

ともあれ、1曲目「バイヨン踊り」の猛烈なグルーヴ感なんか、いくらブラジル現地での録音とはいえ、1951年にここまで歌いこなせた生田の驚異的なリズム感のよさには驚愕のひとことです。バンドの演奏もみごととしかいいようがありません。セッションが終わってルイス・ゴンザーガが生田のことを誉めたというのも納得ですよねえ。ほんとうに唖然とするしかないグルーヴィな演奏とヴォーカルです。

 

ちょっと興味深いのはこの曲「バイヨン踊り」は、4曲目にも同じものが収録されていること。これは日本に帰国して1952年に日本のバンド(ビクターの専属オーケストラ)を起用しての再演。1曲目のブラジル録音との大きな差は隠すまでもないでしょう。ノリのシャープさがまったく違います。歌詞も大きく書き換えていますよね。

 

この後ずっと日本で録音した生田は、アルバム『東京バイヨン娘』を聴きすすんでもおわかりのように、ブラジル/ラテンっぽい感じの歌謡曲をどんどん歌いました。それで、2020年になってぼくがハタと気づいたのは、以前書いた民謡クルセイダーズ、日本民謡をラテンに解釈して演奏している21世紀の日本のバンドですが、1950年代の生田の歌の数々は、もうすでに民謡クルセイダーズの世界を先取りしているじゃないかということです。

 

『東京バイヨン娘』のなかには日本民謡を題材にしたものも数曲あって、そうじゃない歌謡曲もふくめ、どれもこれも完璧なるラテン調。バイヨンでデビューした生田ですが、その後はアフロ・キューバンな路線のほうが多かったでしょうね。アフロ・キューバンはタンゴとならび日本で最も古くから親しまれているおなじみのラテン音楽ですからね。

 

たとえば、6曲目「リオから来た女」、15「ちゃっきりマンボ」、16「東京八木節マンボ」、20「会津磐梯サンバ」などなど、2010年代後半以後の民謡クルセイダーズの世界がほぼ完璧にできあがっているじゃないですか。しかも生田のそれらは1950年代の録音だったんですからねえ。民謡クルセイダーズの世界が新しくもなんともないっていうひとつのレッキとした証拠です。

 

べつに民謡クルセイダーズを評価しないとか言いたいわけじゃなく、むしろ逆です。ぼくは民謡クルセイダーズのことが大好きで、楽しくてよく聴きます。でも彼らの音楽が斬新だとか、いままでにない試みだとか、そんなふうに受け止める必要はないんじゃないかと思うんですね。むしろ民謡クルセイダーズの楽しさは、古くからラテン・ミュージックと合体してきた日本歌謡の世界のその伝統に則っているからこそなんじゃないかと、こう考える次第でありますよ。

 

そんなことを、つい最近Spotifyにあることを発見しうれしくなって聴きなおした生田恵子『東京バイヨン娘』でも再確認しました。

 

(written 2020.12.19)

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