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2021/02/10

オルガンの目立つルー・ドナルドスン『ザ・ナチュラル・ソウル』

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(4 min read)

 

Lou Donaldson / The Natural Soul

https://open.spotify.com/album/4L5BnNOFyRefwj2BO0uoTY?si=mmP92NRgQWqS6El5DR0eSw

 

きのう書いた『ドロッピン・サイエンス』にも収録されているルー・ドナルドスン。特に1960年代以後ものにはファンキーでグルーヴィなものが多いですからね、納得です。それで、またちょっと一個聴いておこうと思って選んだのが1962年録音63年発売の『ザ・ナチュラル・ソウル』。

 

ジャケットを一瞥しただけで、あぁ、このアルバムはファンキーでソウルフルなジャズなんだろうなと想像できますよね。編成はボスのアルト・サックスのほか、トランペット、ギター、オルガン、ドラムスで、つまりスタンダードな二管にオルガン・トリオが伴奏をつけるといったぐあいです。

 

注目すべきはこれが初レコーディングだったオルガンのビッグ・ジョン・パットン。大好きなファンキー・オルガニストなんですけど、このアルバム『ザ・ナチュラル・ソウル』のソウルフルなサウンドは、ビッグ・ジョンの貢献によるところが大きいです。グラント・グリーンもいつものアーシーなプレイでもりあげていますね。

 

ビッグ・ジョンはこれが初レコーディングだったというにしては実力フル発揮の演奏ぶりで、緊張とかしないひとだったんですかね。ぼくの聴くところ、このアルバムでもっとも目立っているのがオルガンで、ある意味主役。ギターとオルガンを聴くべき作品なんじゃないかという気がするほどです。実際、ルーはさほど吹きまくっていないですよね。サイド・メンバー、特にリズム・セクションにかなり任せている感じで。

 

「ラヴ・ウォークト・イン」「ザッツ・オール」「ピープル・ウィル・セイ・ウィア・イン・ラヴ」(最後のはボーナス・トラック)みたいなスタンダードもありますが、それ以外は基本ボスか参加メンバーのオリジナル。しかもどれもぜんぶブルーズ楽曲であるっていう、これだっていかにも1960年代ファンキー・ジャズらしいところですね。

 

それらブルーズでは、リズムが8ビート・シャッフルになっているものが多く、これもゴスペル・ベースのアーシーなファンキー・ジャズらしいところです。1曲目の「ファンキー・ママ」なんか曲題だけでじゅうぶん魅力的だと思うくらいですけど、演奏の中身もぼくら好みのブルージー&ファンキーさ。これのリズムはマーチ調ですね。

 

「ファンキー・ママ」ではまずオルガン・リフから入ってテーマ・メロディをギターが演奏し、ホーン二管はその伴奏役に徹するという、まるでリズム&ブルーズ楽曲みたいなつくりになっているのも楽しいところです。ソロ・リレーもギターから出ますしね。その後トランペット(トミー・タレンタイン、ルーと組むのはめずらしい)、アルト・サックスと出ますけど、ずっとそのあいだサウンド・カラーリングを担っているのはビッグ・ジョンのオルガンです。ソロだってオルガンがけっこう聴かせますよね。

 

2曲目以後もビッグ・ジョンのオルガン・サウンドがアルバムのテイストを支配していて、これ、ほんとうに初レコーディングだったの?と疑いたくなるほどの主役級の活躍ぶり。スタンダード曲ですらそうで、このアルバムはビッグ・ジョン(とグラント・グリーン)に耳を傾けるべき作品かもしれないですね。その意味でもファンキー・マナーです。

 

(written 2020.11.15)

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