マルシオ・アラッキの新作がなかなか悪くない
(3 min read)
Márcio Hallack / Desse Modo
https://open.spotify.com/album/1GQ8t2nwIZmRS27kdlljl3?si=VhYc2NDhQIeRM_djFfdbkQ
ブラジルのジャズ・ピアニスト、マルシオ・アラッキ(Márcio Hallack)の新作『Desse Modo』(2020)の印象がいいので、自分としてもちょっと意外に感じているところなんですけども、だいたいこれジャケットがいいので、それでちょっと聴いてみようかなと思ったんですよね。
マルシオのこの新作は一曲ごとに参加ミュージシャンを代えてどんどんいろんなタイプの曲を並べていますから、アルバム全体ではやや印象がぼやけてしまうかもしれないんですが、一曲づつ抜き出して聴けばレベルの高い完成された演奏ばかりです。曲は基本マルシオのオリジナルですが、1曲目はロー&マルシオ・ボルジェス、7曲目はミルトン・ナシメント&マルシオ・ボルジェスの書いたものですね。
ピアノ・トリオものもいいんですが、2曲目以後ホーン奏者がくわわってからのほうがもっと好きですね。ブラジリアン・ジャズと言えるだけのブラジル色はなく or 薄く、アメリカ合衆国のジャズとさほど違わない内容かなと思います。ちょっぴりハード・バップを、特に作曲面ではセロニアス・モンクを、連想させるメロディだったりするのもいいですね。
変拍子を使ってある、ややちょっとショーロふうな3曲目でオッ!と思っていると、4、5曲目はビッグ・ホーン・アンサンブルがフィーチャーされていて、これ、けっこう好みです。いまふうのラージ・アンサンブルと言えるかどうかはわかりませんが、それっぽい感じです。どっちもアンサンブルはマルシオが譜面書いているんでしょうね。ソロはマルシオのピアノだけ。5曲目のリズムはややボッサ・テイスト。
これら二曲が個人的にはこのアルバムのクライマックスですが、これもちょっぴりショーロ・バラードふうな6曲目を経て終盤に来ると、8「Samba do Brecker」、10「Brecker No Rio」と、いずれもテナー・サックスが大きくフィーチャーされているこれら二曲は、曲題からするにひょっとしてマイケル・ブレッカーへのトリビュートみたいなことなんでしょうか。ブレッカーはもう亡くなっているので、だれがこのテナーを吹いているのかはわかりませんが、マルシオもベテランなのでブレッカーとの共演歴くらいはあったんでしょう。
それらブレッカー・トリビュート(?)の二曲はどっちもストレート・ジャズですが、それでもちょっぴりボッサっぽいリズムを使ってあったりしますから、それなりにブラジリアン・カラーはあります。これらは二曲ともワン・ホーン・カルテットでの演奏で、マルシオのピアノ・プレイも冴えていますし、10曲目ではテナーも熱くブロウします。
(written 2020.12.10)
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